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RED NAIL  作者: 空蝉ゆあん
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甘く優しい微笑み


 あたしはいつも通りに皆の中心にいると思っている。いや、自分こそが中心にいないと意味がない。本当は自分でも分かっている、それが『自己満足』だって事は。だけど自分の心の隙間を埋める為には必要な現実だった。そんなあたしを彼は嘲りながら否定するんだ。


 『ミオリ、君は可哀そう(・・・・)な子だね。ユウの方が君よりも輝いているのに、そんな人間を蹴落とそうとするなんて、本当に哀れな子供だ』

 『煩いわね。あたしはもう27よ。子供じゃないわ』

 『クスクス。私からすればまだまだ子供だ』


 実年齢を隠している彼がどんな存在なのかは分からない。ただユウに異様な固執をしている事は分かる。ユウには別に両親がいるのに、自分の事を彼女の親だと言い切る。はっきり言ってストーカーと変わらない。


 あたしはこの男のようにだけはなりたくない。あんな女に固執もしたくないし興味も抱きたくない。あいつが吐く言葉に反応するのも嫌悪してしまう程。それなのに彼は言い切る。


 『君は彼女を認めたくないんだろう? 本当は自分より優れている現実を受け止める事が出来ないだけだ。正直、君が気づいていないだけで固執しているよ。私とミオリ、君は同等の立場なのだからね』

 『違う、あたしは……』


 彼は眠っているユウを愛しくキスをする。その光景を見せつけるようにゆっくりとねっとりと。あたしは何も感じないはずなのに、どうしてだろうか胸がザワザワしていく。


 『ほら……ね。動揺しているね』

 『してないわよ。あんた達が何をしようがあたしには関係がない。そいつは私達を裏切った『裏切り者』なのだから。そんな感情なんてないわ』


 自分では気づけなかった。自分が失言をしている事を。裏切り者を言い訳にして、自分の本当の感情に蓋をしようとしている無意識な自分がいたの。


 『そんな感情ってどんな感情(・・・・・)だい?』


 試すように、あたしの心を弄ぼうとする彼。いつもそうだ。ユウの事になるとあたしの心の動きをデーター化し、自分の研究の資料の一部にしてしまう男。人間の心理を理解する為に、何人もに希望を与えて、最後は壊していく。それが彼の趣味(・・)だ。


 あたしはこいつと同じ立場なんかじゃない。なりたくもない。こんな変人に。そう思うのに、自由に生きている彼の事が羨ましい。自分の感情とは別の行動をしているあたしと彼は違う世界で生きているようにも見えるから。


 これでも抑えている方だ。あたしは一番にはなれない、そんな事分かっている、分かっているはずなのに、やめれない。


 この征服感を支配欲を止める事なんて今のあたしには出来ない。そう言い切る事は出来るのに、感情を認める事は出来なかった。



 完璧な人間なんてこの世にいない。


 あたしの心の声を読んだように、彼は微笑む。

 残酷な笑い声と共に甘く優しい微笑みを……

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