anemone
ある程度の情報は手に入れる事が出来た。あの出来事から15年が経ち、美作も大人になった。動けなかった立ち回りが出来るようになり、手に入れる事が出来なかった情報を自分の力に変え、欲しい者を取り戻す為に生きてきた。小夜に言うのはまだ早いと判断した彼は、あゆと呼ばれる女と協力関係になり、彼女の作り出した脅迫映像を奴らに送った。その映像は乱雑に血の映像人の倒れる姿、焼き尽くされた炎を組み合わせて、声に洗脳音を取り入れていた。あゆに音声なしを見せられた時は、こんなもの約に立つのかと思っていたが、ミオリと名乗る女がREDと名乗り、情報提供者になっている現状があるから信じる他なかった。
「彼女がREDと名乗っている以上、あたしの足はつかない。そして命令や提案をする立場の貴方は下積みが完了するまで動く必要がない。本当は最後まであたしがしてもいいけど、嫌なんでしょう?」
「……我儘だと思うか?」
「いいえ。貴方はあの人の子供だから特別なのよ。そしてあの子達も──」
「そうか。最初黄泉の世界から来たと言った時は驚いたが、お前のあの姿を見て、賭けてみたくなった。俺の選択は間違いじゃなかったと今なら思えるよ」
「いいのよ。素直な貴方も素敵ね」
BLUEとREDはお茶を楽しみながら、ゆっくり流れる時間を楽しんでいる。これからどんな事が起ころうと、この瞬間だけは幸せでありたいと願った結果だった。小夜が見た夢は二人にとっても重要でこれから起こる事への序章へと繋がっていくのかもしれない。
その事に二人は気づかない振りをする。本当は理解しているのに、決めつけるのは楽しくない。だからこそ、その少ない可能性に賭けたいとも考えているのだろう。
「連絡するくらいで、会うのは最後にしましょう。後はあたしに任せて」
「ああ。また連絡してくれ」
「ええ。じゃあ失礼するわ、永遠のBLUE」
カランコロンと喫茶店を出る音が鳴り響く。そんな二人を見つめながら、仲介人であり、もう一人のBLUEは見守りながら、コーヒーを注いでいる。
「いい店だね。また来るよ」
「いつもありがとうございます」
「そんな堅苦しいのは無しだろ? 同じ立場なんだからさ」
美作がそう言うと、間をおいて「はい」とだけ呟いた。今は店員としての仕事が優先なのだから仕方ないなと想いながら、コクンと飲み干すと手を上げ、満面の笑みでウィンクをする。
この店は仲間同士しか入れない店。一部の存在しかお客になれない特別な店「アネモネ」だ。