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RED NAIL  作者: 空蝉ゆあん
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操り人形になる階段


 大切な感情ってどんなものなのだろうか。

 現在(いま)の僕には到底理解出来ない形のないものだ。

 それでも唯一の光を見ようとしているのは『人間としての性』か。


 『あんたはいつまでたってもそこ(・・)から逃げれる訳ないじゃないの』


 そうやってミオリは僕の心を体を言葉の鎖で絡みつかせていく。いつの間にか淡い希望も黒い絶望に色を変え、そして本当の意味の大人になっていく。果たしてそれが正義なのか悪なのかは分からない。きっとその答えは僕自身が決める事ではないだろうから。


 昔の事が脳裏に過ぎながらも、体は抵抗する事を拒絶している。担がれた体を動かそうと思えば、動かせるだろう。抵抗する事も出来るのに、精神的に無理だと決めつけている。少しのヒビは隙間から闇を吸っていた。元の形とは別のものになっていた心の形は、もう僕のものとは思えない程、歪んでいる。


 『私の可愛い子供、ユウ。やっと私の手の中に戻ってきたのだな』

 

 男性はそう呟くと、不敵な笑みを零し、僕の背中をゆっくりと撫でる。ゾクッと悪寒が走るが、恐怖よりも深い感情の波間に揺られて、男性の空間に閉じ込められそうだ。意識までもっていかれそうになる。


 まるで毒花──


 『本当貴方も物好きね。そんな使い物にならないガラクタなんて捨て置きゃいいのに……』

 『ミオリ、君は何も見えていない。この子が……ユウが使える時は必ず来る。私達にとって彼女は幸福の女神なのだよ』

 『……悪魔じゃなくて?』

 『君達からすればそう言いたくもなるかもしれない。私を信じなくてもいいが、今の自分達の才で状況を好転させる事が出来ると確証はあるのかな?』

 『──ッ』

 

 痛い所をつかれたミオリは唇を噛みしめ、言葉を飲み込む。この男の言う通りだろう。彼女達は決して頭が回るほうではない。カリスマ的な存在が中心として今の環境がなりたっているのが現実だ。才を振るうのはこの男と言った所だろうか。


 しかし何故僕を『子供』と呟いたのか理解が出来ない。僕の父親は別にいるはずなのに、見た事もない男性からそんな目で見られると気持ち悪さを感じる。


 そう感じるのに、そう思うのに、この声を何処かで聞いた事がある。気のせいかもしれないけれど、そんな気がするんだ。


 ドクン──


 心臓の鼓動は少しずつ早くなっていく。僕の見えない所で知らない所で何か異変が起きている。ただの『裏切り者』としでではなくて『駒』のように扱われている感覚がするんだ。


 この不安感を言葉にするのならばきっとこの言葉が相応しいだろう。


 『操り人形』


 彼からしたら僕はその存在になりうるのかもしれないね。



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