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RED NAIL  作者: 空蝉ゆあん
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順繰り返る


 画面が真っ黒の中に『ミツケタ』とだけ表示されている。ミオリはヒィッと小さく叫びをあげ、スマホを落としてしまう。条件反射だろう。まさか自分宛に向けられた動画だと思いもしなかったからだ。額から冷や汗が溢れる。両手が震えていて、どうすればいいのか分からなかった。


 数分間そのままの状態が経過していく──


 確認なんてしたくないだろうが、自分のスマホなのだから壊す訳にもいかない。中には裏の連絡先が入っているから余計に。裏ルートで何重にも人を使って契約してものだからだ。中には携帯ショップ店員も仲間にする為に沢山の甘い蜜を与えてまで構築していた連絡先がある。


 ミオリの仕事の一つに『情報を売る』仕事がある。それには一つのルートとしてショップ店員が欲しかった。彼はお金に困っていて横領をする一歩手前だったのだ。


 『横領なんてすぐバレる。そんな面倒な事するくらいの勇気(・・)があるのなら、あたしに契約者の情報を売りなさいよ、金になる。他の組織が出す三倍を出してあげる。奥さんと子供がいるのでしょう? 横領はすぐ足がつくわよ、それよりまだ長生きできると思わない?』

 『君は……』

 『あたしの名前は『ミオリ』あんたの救世主とでも呼んでほしいぐらいよ。で、どーすんの? するの、しないの?』

 

 答えを出すように急かすミオリに背中を押され、つい頷いてしまった男がいる。トドメの最後の言葉が効いたのだろう。


 あたしが横領をしようと操作した証拠を持っている、とここ数か月のPCデーターを叩きつけたのだ。してはいないが、足はついている。まだ犯罪になっていないだけ。手をつけてないんだから。しかし不正アクセスがある限り、ここで今まで通りの生活をしていくのは難しいと判断したのだろう。


 『大丈夫よ、あんたは味方だもの。痕跡はあたしが消しとくから安心しなよ。もうこんなヘマすんじゃねーぞ?』

 『は……い』

 『あ。もうあたしの支配下になるんだから。裏切りや逃げは無駄だかんね? その時は分かっているよね』


 そういうと、男の家族の写真を手渡した。


 『まだ(・・)幸せでいたいでしょう?』


 その言葉が順繰りがえって自分に戻ってくるのだ。呼吸を整えるとスマホを拾い確認する。いつの間にかあのメッセージは消えていた。あの公式アイコンも最初からなかったように、狐に摘ままれたような感覚の中で脱力し、床に座り込んだ。


 『ハハッ、あたし疲れてるのかな?』


 ピロン──


 安心したのを確認するように文面が画面に浮き出てくる。



 まだ幸せ(・・)でいたいでしょう?──



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