ミツケタ
欲望と執着心二つの形を手に入れる為に『アユ』は存在している。夢と現実を行き来しながら元の『立場』に戻る為に必要な作業の一つのようだ。人間を知る事でカカシをもう一度使い物に出来るし、全てを『支配』する『門番』としての力を取り戻せるのだ。
そんなアユの存在を知るものは夢の中ではカカシと影、現実ではユウだけ。それ以外の者には興味がないからこそ姿を現さない。しかしこれからは少し違った形で歪みを作り出さなくてはいけない。彼女からしたら面倒な作業なのかもしれない。
ピコン──
一人残されたミオリのスマホの通知が鳴った。ミオリは笑うのを止め、スマホの画面を確認する。笑っていたせいか頬が少し痛い。右手でスマホを操りながら、左手で頬を撫でる。
『なんなのよ、こんな時間に夜中の三時よ? 非常識すぎるでしょ』
緑色の通知を確認する。LIMEだ。通話アプリから来ていたのだ。確認するとチャットが一件来ている。まぁ着信じゃないだけマシかと思いながら、開く。
『は……?』
公式マークがついているが、こんな公式追加していた記憶なんてない。それもアイコンが『包丁』の写真になっている。拡大して確認してみると包丁に細かな肉片と血が飛び散っている。遠目では分からないけれど、普通の写真ではないのが分かる。
『フリーじゃないよね、どう見ても』
そう言い切れるのには理由があった。投稿されている内容を見たからだ。数件しか投稿はないけれど、その中に二件の動画が投稿されている。再生したくないのに、好奇心だろうか気になって再生してしまう。
『いたいよぉ……』
『逃げても無駄よ? 今日の食事はアナタなんだから』
『ゆるして、おねがい』
『許すも何も私の朝食の癖に。必要のない言葉を吐く口は黙らせないといけないわね』
包丁が女の首をガリガリと削っていく。鮮明な血を浴びながらスマホが汚れていくのが分かる。画質が落ちている。カメラ部分に血が飛んでしまったのだろう。
『あら、汚れちゃったわ。まだ生きているわよね。汚したスマホを舐めてよ』
『あぐうああああぐ』
『舐めろ』
『ヒイィィ、ヒュー』
もう普通に話す事の出来ない人間は必至に舌を出している。ヒューヒューと音を奏でながら撮影者の言う事を聞こうとしているのだ。正直、ここまでされたら生きれる保証はゼロ。一番割いてはいけない『致命傷』からイッテいるのだから。
『何よ、コレ。気持ち悪い』
ミオリがそう呟くと動画がフリーズする。まるで言葉に反応しているかのように、誰かの意思がそこに埋もれているかのように、ミオリに悪意を向ける。
ミ ツ ケ タ