表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RED NAIL  作者: 法蓮
10/52

現実逃避


 自分の求めているものは何だろうか。

 ただ自分らしく生きていきたい、それだけだ。

 普通の暮らしをして

 普通に働いて

 普通に、普通に。



 「僕の『普通』って何だろう」


 頭の中で鳴り響く言葉に意識を奪われたような感覚の中で現実世界へと舞い戻る。


 頭が痛い、クラクラする。変な夢を見たせいなのか、それともクスリを盛られたせいなのか分からない。自分がいとも簡単に落ちるなんて、想像が出来ただろうか。自分の手元には何もない。昨日まであった金もスマホも身分証も何もかもだ。


 「はぁ……」


 巻き込まれたようなものだと自分に納得させようとするが、どうして自分がこんな目に合っているんだとイラついてしまう。もう一度深いため息にも似た『深呼吸』をし、冷静さを取り戻す。今の自分にはこんな事しか出来ない。


 ガタン──


 物音が天井から聞こえた。目線を上に向けると女の人が降ってきた。


 『へぇ。貴女がユウね。可愛いじゃない』

 「……貴女は?」


 ここは一応丁寧に聞いた方がいいだろう。さっきまでいた夢とは違う現実なのだから余計に、だ。


 『私の名前は七子(ななし)よ。よろしくね』

 「ナナシ……」


 夢と現実がリンクしているような気がする。すると頭の中で響く音を感じた。


 ≪ツナガッタ、ツナガッタ≫


 ドクドクと脈が乱れていく。予想もつかない展開に頭が追い付かない。本名なのかコードネームなのかは分からないが、夢で聞いた名前が現実世界で存在する。それも起きてすぐの状況で、何か嫌な予感を感じながらも、とりあえずどいてくれるように伝えた。


 『ごめんなさいね、天井で寝てたんだけどさ、まさか落ちるとは思わなくてね。あ、これ内緒ね。一応、君を監視する為にいただけだから、寝てたなんて知られたらまた(・・)怒られるからさ』

 「はぁ」

 『状況が飲み込めてないみたいだね、それもそうかー仕方ないよね。まぁまだ馴染んで(・・・・)きてないだろうし、もう少し休みなよ、後で起こしてあげるから』

 

 上から人が降ってくる事なんてある訳ないのだが、現実にある。それもその相手は当たり前のように平然としている。七子と名乗る女がどんな立場にいるのか、見当はつかないが……


 きっとあの男(・・・)の部下に違いない──


 『眠れないのなら、私が夢を見せてあげようか? それとも子守唄? どうする?』

 「自分で寝ます」

 『ふふふ、あらいい子。噂には聞いていたけど素直な子じゃないミオリは何が気に入らないのかしら、ね?』


 ミオリの名前を聞いて、体が反応する。彼女のせいでこんな事になったんだ。

 今、訳の分からない部屋に閉じ込められているのも

 七子と名乗る変な女と出会ったのも

 不気味な夢を見たのも


 全て『ミオリ』と繋がっている。


 そう思いたい一心で再び横になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ