あなたの夢の続き
今のが夢だったのか
現実だったのか
もう一度、
目を閉じてみれば分かるだろう
あなたがそう言って、目を閉じた理由はほかでもありません。
あなたの親友がうさ耳をつけて走っていくのが見えたからです。
何事かと思わずにいる人なんていないことでしょう。
ただ、見えてしまった事に変わりはありません。
あなたは追いかけることにします。
親友はある森の階段を登り、小さい神社に入っていきます。
入口の所にいたのは2匹の犬?
いえ、犬の格好をしたお隣さんです。
なぜそんな恰好をしているのかと尋ねようとした矢先、二人がしゃべりだします。
細かいことは気にするな
今日も焚き火が燃えている
それでいい
確かに神社の中をのぞくと焚き火が燃えています。
目を向けるとチリチリとした感覚が体を焦がして、
細かいことを忘れさせてくれるようです。
すんでのところで当初の目的を思い出します。
辺りを見渡すと小さくなった親友が灯籠の下に入っていきます。
こんな事態にさすがのあなたも困惑していることでしょう。
すると、今度は灯籠の下から商人の格好をした小さい、あの人が。
あのー、最近知り合った、あの人です。
あの人は、あなたを見るや否や、
あの小さなトンネルが通れないって?
それは通りたいと
思っていないからだろう
あなたが何も言えずにいると、あの人はため息をついて
何か呪文を唱えているような変な動きをします。
なんということでしょう。
あなたの体はみるみる小さくなっていきます。
これで灯籠の下に入ることができます。
お礼を言おうとあの人の顔を見ると、にやりと笑っていました。
嫌な予感に気づいたころには体が元の大きさに戻りかけていました。
あなたは急いで出口に向かいます。
外に出たと思ったあなたの体はすでに大きくなってしまって、
出口につっかえてしまいました。
身動きが取れません。
どうやって抜け出そうか考えていると、
ぼろぼろの小さな人影を見つけました。
その人は何度も何度も葉っぱの上に登ろうとしますが落ちてしまいます。
あなたは心の中で応援します。
やっとの思いでたどり着いたその人は、蛍のように光り、飛び立っていきます。
ふらふらな
一粒の小さな光でも
誰かの心の
大きな支えになれるんだ
その声、その姿は、まさしくあなたの推し、その人でした。
遠ざかる推しを見つめ、
あなたは、なぜ一度、自分が小さくなれたのか考えることでしょう。
答えはすぐに分かるはずです。
あの人の呪文なんかではなく、あなた自身が望んだからです。
そう気づいたあなたは前に進むことができました。
森の中を歩いていると分かれ道がありました。
右に行くか左に行くか悩んでいると、猫のような親。
いや、親のような猫が現れました。
あっちは壊れてるけど通れる橋
こっちは壊れてないけど通れない橋
私はここに居ることを推奨するね
何を言っているのか分かりません。
あなたは悩みます。
右に行ってはダメ、左に行ってもダメ。
とどまるわけにもいかない、あなたは中央へ行くことにしました。
道なき道を進んでいきます。
しばらくすると、少し開けた場所にうさ耳の人がいました。
それは親友ではなく、あなたの近所の人でした。
近所の人は何人かいましたが、全員うさ耳でした。
よいよいと
歌えや笑え
月が降る
ヤグラは落ちねぇ
今宵も踊ろ
近所の人たちは歌って踊っています。
とても楽しそうな雰囲気にあなたは混ざりたくなるに決まっています。
今夜も輝く月のスポットライトは新入りのあなたを盛大に照らします。
あなたがヤグラに登って歌いだした時、
近所の人に混じって踊っていた親友が何かを思い出したように走っていきます。
あなたはやっと見つけた親友を、マイクを放り出して追いかけます。
親友に追いつく、あと一歩のところで、目の前の信号が赤に変わってしまいました。
しかし、いくら待っても信号は青になりません。
よく見ると向かいの歩道に作業服を着た、あのクラスメイトが数人立っています。
彼らはあなたの視線に気が付くと
青から赤に変えているのさ
そういうルールだからね
ただ、いつの間にか青に戻ってる
面倒ったら、ありゃしないよ
そんなことを言っています。
あなたは困り、青になってくれないかなと思ったはずです。
すると信号は青に変わります。
驚きながらもあなたは親友を追いかけるために渡ります。
その様子を見たクラスメイト達は慌てふためき、あなたを捕まえにかかります。
あなたは逃げようとするも追手の数に勝つことはできませんでした。
捕まったあなたが運び込まれたのはよく見た学校です。
その学校の体育館です。
舞台上から颯爽と現れたのは狐の耳を生やした、あの先生です。
クラスメイトが沸き立ちます。
裁判の始まり、被疑者はあなたです。
騒然とした雰囲気の中、先生がしゃべりだします。
静粛に!
問答無用
気に食わないから
有罪!
そういうことで、あなたは有罪になりました。
残念、なんて言っていられない、あなたは逃げ出すことにします。
堂々と歩いて出口まで向かいます。
こういう時は堂々としていたほうが案外バレないものです。
体育館からちょうど出たところで、中が騒がしくなります。
バレました。
あなたは走って逃げます。
校内を逃げ回り、引き寄せられるように一つの教室に入ります。
なんとも居心地がいい、あの教室に。
騒がしい声たちが消えていきます。
なんとか追手から逃れることができました。
落ち着きを取り戻した、あなたが教室の中に目を向けると
窓際に立っていたのは親友です。
あれ、忘れもの?
大切なモノ、見つかったかな…?
窓からこぼれる光に反射してキラキラ輝く小さなほこり。
本当に自分がここに立っているのか分からなくなるくらいの暖かさ。
鼻に残るが全然嫌じゃない本やチョークの微か匂い。
様々な思い出が頭の中に溢れてくることでしょう。
感傷に浸っているあなたを急かすように教室の外が騒がしくなってきます。
外を見てみると、あの先生に、クラスメイト、近所の人達、親のような猫、
あなたの推し、最近知り合ったあの人、お隣さん
なぜか皆があなたを探して迫ってきます。
でも、もう、あなたに逃げ場はありません。
決断する時が来たようです。
あなたは気づいているはずです。
ここがどういう場所なのか。
これは自分の物語
さあ、目を開けてみれば
きっと道は続いてる