順位
Ⅰ 13月33日 -順位-
母親は家族の中で順位を決めている。
大事な順位と好きな順位だ。
父親は生活を支えているので大事な順位1位、息子2人は好きな順位1位だ。
そんな簡単なことが最初は分からなかった。
他愛無い私の発言が、彼女の大事で好きな人の事を言ったということで逆鱗に触れる。
お兄ちゃんは大して食事の準備をしていないとか、弟はとても甘やかされているとか。
シンクに向かっていた母は、くるりと向きを変えると、エプロンで手を拭きながら、物凄い剣幕で近づいてきて「おまえなんかに何が分かる!」と怒鳴りながら私をひっぱたく。
「年子のお兄ちゃんはお前が生まれたことで小さい時可愛がってやれなかったんだから
お兄ちゃんを贔屓にするのは当たり前なんだよ!弟は初めて子供を可愛いと思えた子だから可愛がってる。お前なんかに何がわかる!」
兄の家庭教師が来るために私は学校から帰ったらすぐに玄関から廊下トイレと掃除をする。
四つん這いになって雑巾がけをしている傍を兄は無言で通り過ぎる。
同時にラジオの曲の録音を命じられスイッチを押すはずが、
夕飯の手伝いと廊下の掃除をしていたので気づくのが遅れ3秒遅れてしまった。
曲の頭3秒は大事だ、分かってはいたが忙しくて気づくのが遅れた。
烈火のごとく怒った兄に怒鳴られながらどうにも仕様が無く下を向く。
私にはテレビのチャンネルを押す権利は無いが弟は好きな時にテレビを見る。
夕飯の手伝いをしていると弟がテレビを見ていたので、ついテレビの方を数回見てしまった。
「お前が見るためについてるんじゃないんだよ!」と母に怒鳴られ又手伝いに戻る。
漠然とした絶望が、私の腹に、エイリアンの幼虫のような姿のレイジになって棲むようになっていた。
明らかな”狂気”だ。
この狂気に完全に乗っ取られる前に、”死にたい”と願うようになった。
12歳になっていた。