長い時間
Ⅰ 13月28日 -長い時間-
中学1年の夏、1学期の期末テストの点数が母の望むモノではなかった。
クラスで1番ではあったが、クラスの数が多いため学年順位は9番位になる。
クラスで1番ではあったものの、そもそも芳しい点数ではない上、学年一位は誰かと聞かれ
「知らない・・・」と答えたものだから母の怒りが爆発した。
そもそもそんな程度の点数で満足しているお前に、お前がいかに馬鹿かを思い知らせてやること、
そもそもそんな程度の点数を取る日常生活の態度に問題があるのだから、それも思い知らせてやること、
学年一位も知らない向上心の無さがいかに愚かか思い知らせやること。
リビングの壁に立ち、下を向いたまま、怒鳴られ続ける。
そこには次への目標も、反省の弁も、こうすれば良かったという改善案も、全てが不要だ。
思い知らせてやるのが目的だから、できるだけ長時間苦痛や辱めを与える。
皆が歯を磨いても、リビングの電気を消しても、私は一人リビングの壁際に立ち下を向く。
時々トイレに起きてきた家族が、まだ許されていないんだという軽蔑の視線を向ける。
私は泣かずただ、下を向いて、灰色の心を抱えている。
真っ暗な部屋も皆の無視も無音の長い時間も、ただただ感情を無くして、過ぎるのを待っている。
やがて朝になり、私は急いで着替えて朝食を作る手伝いをする。
何語も無かったかのように。
灰色の心のままだが、何の問題は無い。
ずっとこうだし、このままの方が辛いことに気がつかずに済む。
本当は気がついているけど、気がつかずに済む。