話すということ
Ⅰ 13月27日 -話すということ-
母が夕食を作る、その手伝いをしながらつい口にでてしまった。
今日あった色んなこと。
ちょっとしたグチだ。
噂になっている事や身近な友達とのこと。
体育の先生が一人をとても贔屓にしていて噂になっている。
ちょっと気持ち悪い中年男性で、体を触ってくるのでその子も迷惑そうだ。
それと友達が兄弟とけんかしたとか、家族で旅行に行ったとか、そんなこと。
母は夕食を作りながら、後ろ向きに静かに返事をする。
「ふーん」「へー・・・」
聞いてくれている雰囲気だったのでつい話してしまった。
すると、まな板をシンクに叩きつけて包丁をダンダンとその上に叩きつけ叫んだ。
「おまえなんかに、先生が考えていることが解るかあ!!」
「おまえなんかが!」
私は黙り、下を向き申し訳なさそうに手伝いを続けた。
又怒らせてしまった。
余計なことを言ってしまった。
私の全てが母を怒らせる。
そんな毎日が続くと、10歳の私でも、やがて、”憎まれている”ことに気がつく。
いや、それ以上だ。
”憎まれるほど醜悪なお前”であることを自覚させて責任を取らせるために、
正義の鉄槌でもって”思い知らせてやる”毎日が続く。
母は私に正義の鉄槌でもって残酷な制裁を課す。
その正義でもって私は気が狂っていく。