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愛されない子は生きられるのか
Ⅰ 13月26日 -愛されない子は生きられるのか-
いつからこの冷たい視線の中に居たのか。
いつから憎しみの標的になっていたのか。
残酷にも丸腰で放り込まれたこの”家”は、誰の目も届くことなく密やかにその子を痛めつける。
当たり前に過ぎていく時間は、そのすべてが過酷で冷淡であった。
自分でいることを殺された子は腹にレイジを飼う。
そして一生レイジを飼い馴らすことに苦心する。
愛されない子は愛を知らないが、生きていける。
しかしレイジを飼う子は、生きるのが難しい。
狂おしい程の憤怒と攻撃性は近くに居る者を標的とし、微かな人並みの幸せを破壊する。
両眼を潰された野生の狼のように、周囲のすべてを噛み殺す。
何度泣きながら神様助けてくださいと祈ったか。
何度泣きながら神様殺してくださいと頼んだか。
やがて苦しみに負けてレイジとシンクロした自分は人の姿をしていない。
そもそもドブの中を這うように生きていた本当の”自分”は誰の目にも映らない。