その3 魔王、稼ぐ
邪神も金が必要です。
勇の家にやってきて3日。魔王は邪神に怒られた。
「ぐぬぬ、邪神め、まさか生命維持に金を要求してくるとは」
「いいじゃないか。大魔王って言う肩書だけの無職なんだからちょっとは稼いで来ればいいじゃん」
勇はニヤニヤしながら魔王を挑発する。
「ふん! その気になれば簡単に億万長者になれるわ! 見ておれ!!」
そう言って家を飛び出した。
飛び出したのはいいが、稼ぐ手段が無いことに気付き途方に暮れていた。
「さて、どうしたものか……」
近所の商店街に入り、何か稼げないか探し始める。
すると、電気屋さんでパソコンを見つける。
「むむ、これは文明機器パソコン! これがあれば稼ぎようがあるのだが……」
「何だい兄ちゃん。パソコンが欲しいのかい?」
「む? 向かいの青果店の店主が何用だ?」
「兄ちゃんガタイ良さそうだな。もしアルバイトしたいならうちで働くと良い。俺も家内も腰を悪くしてて人手が欲しかったんだ」
「ほう、良かろう! 今は魔王として威張っても仕方が無いからな、存分に働いてやろう!!」
それから数時間後。何故か馴染んで店番をしていた。
「合計600円である」
「はい、ありがとうね」
「兄ちゃん今日のオススメは何だい?」
「今日はトマトがオススメだと聞いているぞ」
「お兄さん、これ下さい」
「良かろう」
独特な口調はそのままだが、丁寧かつ素早く切り盛りしていく。
さらに数時間後、閉店の時間になった。
「お疲れさん。今日の給料だ」
「うむ、いただこう」
中身を確認し、パソコンの値段を確認する。
「買うのはまだ当分先だな」
「兄ちゃんは何でそこまでパソコンが欲しいんだい?」
「株とFXで儲けるためだ。資金が集まったらマンションを買って不労取得で更に儲ける」
「何という夢の無い夢じゃ……」
・・・・・
夜
大見え切って出て行って帰るのも癪なので公園のベンチにいた。
「しばらく野宿か。それもまた一興」
木の傍でくるまり寒さをしのごうとする。そのまま目を閉じ、寝る態勢に入ろうとした。
「何してるんだよ」
顔を上げると、そこには勇とアニエスがいた。
「何しに来た?」
「邪神が連れて帰って来いって言うからさ、迎えに来た」
「大魔王の貴方の事ですから、稼ぐまで返って来ないだろうと思いまして」
勇は頭を掻く。
「その、悪かったな。意地の悪い言い方して」
「ふん」
ガンダーは立ち上がって2人の前を通り、そのまま公園を出る。
「あ、おい! どこ行くんだよ?!」
「帰るのだろう? 先に戻っているぞ」
ガンダーは一人で家へと向かう。
2人もその後を追って帰宅するのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は『勇の昼飯』
お楽しみに。
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