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その2 聖女のご飯


聖女アニエスの簡単ご飯



 勇は仕事でクタクタになって帰宅した。


「ただいま……」


「お帰りなさい、勇様」


 アニエスが笑顔で出迎えてくれた。マジ天使。


「ただいまアニエスさん」


「ご飯ができていますよ。どうぞこちらに」


 中に入ると、小さなテーブルの上にパンとスープが置いてあった。


「私、これくらいしかできませんが……」


「いえ、これだけでも大満足です!」


 合掌してアニエスを拝む。


「そんな、当然の事をしたまでです」


「いやあ、用意してくれるだけありがたいですよ。それに比べて……」


 勇の目線の先に、ガンダーが横になってテレビを見ていた。魔王の威厳はどこにやら。


「なんだ? 我が何かすると思ったか?」


「へいへい、期待した俺が馬鹿でした」


「言ってろ」


 ガンダーを無視して座り、アニエスが用意してくれた料理と対面する。


「それじゃあいただきます」


 パンを頬張りスープで流し込んだ。


「……うん?」


 食べた直後、胃が猛烈に拒絶反応を起こし始めた。吐き気だ。


「む、ぐぐぐぐぐ?!?!?」


「どうされましたか?」


 アニエスが真っ直ぐな瞳で勇を見つめる。綺麗で可愛い眼だ。


(こ、ここで吐き出す訳にはいかない……!!)


 漢勇、ここでやらねば誰がやる。


 無理矢理拒絶反応を突破しゴクンと飲み込んだ。


「どうですか?」


「お、美味しいDEATH!!」


 やっぱり無理だった。


 勢いよく吐き出しその場でダウンした。


「きゃあああ!? 勇様?! しっかり!!」


 ガンダーが騒いでいる2人をチラッと見る。


「おい聖女。スープとパン、どこから調達した?」


「何で今聞くのですか?!!」


「いいから答えろ」


 アニエスはむくれながら答える。


「パンは勇様の冷所から! スープは元の世界で見た似た様な植物を集めて来て煮て作ったんです!!」


 衝撃発言に瀕死の勇も反応する。


「せ、せめてスーパーで売っている物で、お願い……」


 そう言い残し勇は気絶した。


「勇様!! しっかりい!!」


 半泣きのアニエスを見ながらガンダーは呆れ果てていた。


「毒見せんかったのか貴様」


「しました!! 問題ありませんでした!!」


「マジか……。どうなってるんだ貴様の腹」


「知りません!! 勇様あああああ!!!」


 アニエスの叫びは外まで響き渡るのだった。




お読みいただきありがとうございました。


次回は『魔王、稼ぐ』

お楽しみに。


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