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[序]星屑の漂流者—水の大賢者—  作者: くろめ
1つ目 水の光玉
17/22

水の光玉

 暗がりを行く一同は、やがて最深部へと到達する。

 ルディミハイムとルイは、違和感やアマノの話を考えてばかりで疲労困憊である。

 片やアマノは変わらず口調や雰囲気が異なったままだが、その理由を語ることはない。

 

「ここで、終わり?」

「そう。ここがこの洞窟の最奥。そしてあれが——」


 電話機という名のライトをある一点に当てる。


「——『天の祭壇』と呼ばれている」

「てんの、さいだん……」

「ちょっとかっこいいかも……いやいや、もしかして、あそこに……?」


 少年少女が求めている光玉がそこにあるのだと察し、声のトーンが上がる。

 アマノはその祭壇へと近づき、手をかざす。


「離れて眺めておれよ……? そして、今後もよろしく頼むぞ……」

「ん……? うん」


 何のことかは分からなかったがとりあえず二人は返事をし、少し離れる。

 アマノは目を閉じて大きく息を吸い、目を開き詠唱を始める。


『天より遣いし大賢者が一人。我、其の残留思念なれば、我が呪い、その子孫によりて解き放ちたまえ』

「(え、なんかかっこいい)」


 少年は心が躍る。

 アマノが呪文のような言葉を口ずさむと、祭壇が光り輝く。

 地面が祭壇を中心にサークルを描くように魔法陣のようなものが形成される。

 

 同時にアマノは脱力し、膝から崩れてしまう。


「アマノ!?」

「大丈夫!?」


 頭が当たる寸前にルディミハイムが支えることで事なきを得る。

 少年は油断しきっており、動くことが出来ず出遅れる。


「アマノ、大丈夫か?」

「……ん、ん……」


 意識はある様子で、心から安堵する二人。

 言葉にならない言葉を紡ぐアマノであったが、そのうちハッと意識を取り戻す。


「え……あ……。うん……? えっ……と?」

「よかった、目が覚めたみたい」

「ここは……洞窟……洞窟だよね?」


 アマノは状況を把握できていなかった。

 なぜ自分がここにいるのかをまるで理解していない様子である。


「そうだよ。アマノさんがあの祭壇を光らせたんだよ」

「覚えてないのか……?」

「ううん。それどころか、洞窟に入ってしばらくからの記憶も……」


 状況を把握できない三人であったが、祭壇の輝きがより増していくことで思考がそちらへと向く。


「ルイ、あれって!」


 ルディミハイムが指す方をじっと見ると、球状に輝く何かが見て取れる。

 視認すると直ぐに少年は言う。


「あれが、光玉……?」

「……文献で見たものと同じ。間違いない」


 アマノは状況が分からないながらも、感覚と記憶を頼りに返答する。

 少年は、ぱあっと笑顔になると光玉に向けて駆ける。


「やった! ベガー!」


 返事をする前に、アマノにアイコンタクトを送るルディミハイム。体調を心配しての行動である。

 対してアマノは気にしていない様子で「行ってあげなさい」と言うと、少女は頷き笑顔を見せる。


「ああ、ルイ!」

 

 少女は少年のもとへ駆け寄る。

 祭壇を二人で囲んで向き合い、台座の中央に位置する光玉に手をかけ、一緒に持ち上げる。


「光玉、ゲットー!」

「ゲットだ!」


 少年の心の中でファンファーレが鳴る。

 今この瞬間、5つの内、1つ目の『水の光玉』を手に入れたのだ。

 その光景を少し離れて見つめるアマノもまた、二人のもとへ近寄り、笑顔を見せる。


「おめでとう、二人とも」

「ありがとう、アマノ。お前が正しい道に案内してくれたからこそだ!」


 二人は一度光玉を祭壇に戻すと、アマノに向き合う。

 最深部に来るまでの過程で、アマノは幾つかの分かれ道を選び、少年らを誘導していた。

 ここに来られたのは、間違いなく彼女の導きがあってこそだろう。

 しかし、彼女にはその記憶は全く無い。

 

「そうそう。雰囲気がいつもと違うから驚いたけど、集中するとあんな感じなの?」


 黙り込んで進み始めたかと思いきや、やがて普段とは異なる口調で話していた。

 本人の調子が戻ったのならば、その話題になるのが必然である。

 だがしかし、彼女にはその記憶は全く無い。


「…………? 何のこと?」

「やっぱり、覚えて無いのか……?」

「ええ。全く。洞窟に入って、ライトを照らした後から、さっき起きるまでのことがね」

「不思議……だね」


 疑問符を浮かべる三人であるが、当然その場で答えが出ることもなく。


「もしかして、大賢者様……?」


 ふと、アマノの脳裏に過った言葉は、少年少女らにも合点が行く。


「さっきの昔話でも、アマノは大賢者についての話をしてた」

「難しかったから大体スルーしてたけどねー」

「スルーじゃと!? 全く失礼なことを言うわい!」

「え。誰!?」


 天の祭壇から声が聞こえたため、全員がそちらを見る。

 すると付近で唯一の光源であった光玉が輝きを増し、ホログラムのように水色で長髪な幼き女の子を映し出す。


「は、はだ、か……!?」


 少年は直ぐに振り返りしゃがみ込みつつ両手で目を塞ぐ。

 ルディミハイムとアマノは平気だったのでそのまま見続ける。

 女の子は体型的に10歳前後で、腰まで伸びた飴のように癖づいた水色の髪が特徴的。目はやや釣り上がっている。


「ルイ、反応するんだな……」

「男の子だもん、仕方ないよ」

「……そういうものなのか」


 ダメになってしまった少年を尻目に、謎の女の子の説教が始まる。

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