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[序]星屑の漂流者—水の大賢者—  作者: くろめ
1つ目 水の光玉
11/22

少年少女はド天然

 少年少女が歩くは川辺。

 樹海に行くも、光玉という大きな収穫はなく、石碑のようなものを見つけるだけにとどまった。

 彷徨う覚悟でいた二人であったが、10分とかからず簡単に見つかった。


「窪みみたいなのが3つあったね」

「杖の先を地面に刺したような造形だったな」


 少年らが今目指しているのは、樹海から天ノ川の洞窟へと変わっている。

 樹海にそれ以上の手掛かりが無いとすると、次に候補となりかつ分かりやすいのが洞窟だろうという判断だ。


 洞窟がどこにあるのかは、ヒカリから借りた地図におおよそ記されている。

 樹海を抜けてから行くとなると、およそ中流から上流まで歩く必要がある。


「僕の予想だと、あの窪みに光玉を3つ埋めたら何かが起こると思う」

「どうしてそう思うんだ?」

「うーん。なんとなく。勘なんだけどね」

「勘か……。私が嫌な気配を感じたのと似たようなものなのか?」

「そうかも? 都市伝説だったり……あとはゲームだったりも、こういうカラクリがあってね」

「そういうものなのかー。ゲームって?」

「ああ、ゲームはね——」


 などと、二人は談笑しながら洞窟に向けて歩みを進める。

 小川のせせらぎと砂利を踏む音が、会話と共に響く。

 ルディミハイムは様々なことに興味を持つため、少年もそれらについて分かる範囲で説明をしようとする。


「そういえば、水ってこんなに綺麗なんだな」

「うん。天ノ峰の水は綺麗だって、帰省してきた人がよく言うみたい」


 そうなのか、と少女は呟きながら川辺に向かう。

 水面を眺めながら、ふと呟く。


「まるで鏡みたいだ。天ノ峰の自然が大切にされてきたからこそ、なのかな」

「父さんが言うには、広大な自然と町の発展。昔の人たちはそこに難儀したんだってさ」


 乾いた砂利へ一緒に座り、川の音色を楽しむ。

 少女が楽しむ様を見ることが、少年にとっての楽しみである。たとえ本命である洞窟に辿り着けなかったとしても、楽しんでくれるならば住民冥利に尽きるということだ。


「そこまで強い流れじゃないんだな。しかも浅い……よし」

「どしたの、ベガ」


 ルディミハイムは答えないまま、靴と靴下を脱ぎ始める。


「え、まさか」

「その、まさかさ」


 そう言いながら、彼女は川に両足を浸けながらその場で駆けてみる。


「ルイ! これすっごく気持ちいい!」

「あー、もう、濡れちゃうじゃない」

「へへっ、もう手遅れだ!」

「…………」

「ルイ?」


 少年は少女に思わず見惚れていた。

 透き通る小川に、色白で赤髪の少女が立っている。

 陽の光と森や自然の木々によって調和が取れている。


 その光景があまりにも似合い過ぎていた。

 吸い込まれるように、意識が遠のいていた。


「綺麗だよね、ベガって」

「へ……!? な、なんだよ突然! たりゃ!!」

「わぁっ!」


 少女に思いっきり川の水をかけられ、少年の衣服は濡れてしまう。

 

「うぅ……濡れちゃったよ……」

「もう! いいからこっち来いよう!!」


 絵の才能でもあれば、その光景を描いていたかもしれない。

 そう思いながら少年も靴下まで脱ぎ、ルディミハイムの下へ駆けていく。


 二人は時間を忘れるほどに、川遊びを楽しむ。

 川遊びがこんなに楽しいものだとは。少年には不思議で仕方がなかった——。



 ——それから、夕暮れ時まで遊びは続いた。

 少年少女のくしゃみが響く。

 

「たははー、遊びすぎちゃったね……」

「そうだなー、おかげでずぶ濡れだ」


 川辺で遊び過ぎたせいか、二人してずぶ濡れになっている。

 夕日に当てられた帰り道で、少年少女は笑い合う。


「帰ったら一緒にお風呂入らないとね」

「そうだな〜。うぅ、寒い」

「体温下がってるね、僕も寒い……」


 当たり障りのない会話が続く。


「そういえば、昨日お風呂について教わったが、まだよく分からないことがある」

「そしたら、後で教えるね」

「ああ、今日も隣で頼むよ」


 使い方を覚えてないしと、ルディミハイムは付け加える。

 あ、そうだ。とルイはポンと手を叩く。


「そういえば、今日はベガのベッドが届いてるかも!」

「ベッド?」

「昨日、父さんが通販で頼んでくれてたんだ。もしかしたら今日届いてるかも!」

「注文して、1日で届くのか?」

「天ノ峰直送だからね」


 そういうものなのかーと、少女は納得する。

 やがて会話をしていればさして気にならないほど直ぐに、ルイの家へ着く。


「会話してると本当にすぐ着くんだなー」


 不思議だよねと少年は応えつつ、はっと思い出す。


「ねえ、洞窟……どうしよっか」

「あ……忘れてた」


 楽しさが興じすぎて、本筋を忘れてしまっていた。


「まあ、いっか!」

「ああ、こういう日があってもいい!」


 そうして二人は家へ入っていく。

 一緒にシャワーを浴びて一緒に暖かいベッドで休むことで、風邪をひくことなく二人は翌日を迎えるのだった。

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