キャンプ3日目
各部屋に取り付けられたスピーカーから起床のチャイムが鳴り響き、私達は飛び起きました。
昨日の疲れか、気圧の影響か、私の体はとても重く感じました。
眠気眼をこすって周りを見ると、もう何人かはすでに起きており、寝巻きから私服に着替えていました。
昨日の夜のことを誰かに話したいとも思いましたが、おかしなもの当時はお化けのことよりも遅れて先生に怒鳴られることのほうがこわかったのです。ですので私も急いで顔を洗い、身支度をすませて施設内の食堂に当時仲が良かった何人かと一緒に向かいました。
私達が向かったときにはもう半数以上の子達が席についていて、私も周りの子に挨拶しながら自分の席に着き、全員が集まるのをおしゃべりしながら待ちました。
キャンプも最終日だったので、おのおの周りの子達と感想を言い合ってたと思います。
◇◆◇◆
朝食を食べ終わり皿を指定の場所へ戻したあと、私達は部屋に戻りキャンプのしおりを開きました。
最終日は帰る前に施設の掃除をせねばならず、自分の担当場所を確認するためです。
私は大浴場(男湯)担当だったため同じ担当のF君と共に向かいました。
廊下で先生からデッキブラシを受け取り、注意事項(たしか転ばないよう注意することと、残り湯をなるべく使うことと言われたと思います)を聞き、脱衣場の男と書かれたのれんをくぐりました。
中では脱衣場担当の子が微動だもせず全体が曇った大きな鏡を見つめていました。
私 「どうしたの?」
私は彼にたずねました。
しかし彼は返答を返すさず、代わりに彼の視線の先を指しました。
F君「すごい汚れてるな。この鏡。昨日は綺麗だったのに。湯気かなんか?」
彼は無言で首を振り、もっとよく見ろと言いました。
言われた通り鏡に近づいてよく見てみました。
・・・湯気なんかじゃありませんでした。
それは子供サイズの小さな手形でした。
一つ二つなんてものではなく、大きな鏡の上から下まで、一面白い手形で占められていました。
F君「やば!!きんもちわる!!。いたずら?」
F君はいたずらだと思ったようでいつものお道化口調でいいました。
しかし、私はなぜ最初からいた彼がおびえて鏡を見ていたのわかりました。(いや、わかってしまった。わかりたくなっかった)
私「…F君、F君。…多分いたずらじゃぁないと思うよ。」
F君「なんで?こんなの最後に使ったやつらのいたずらだろ?」
私「F君、君は学年でも背の高いほうだよね?」
F君「うん、そうだよ?」
私「…じゃあさ、鏡の一番上まで手が届く?洗面台上ってもいいからさ。」
そこでF君もさすがに気が付いたようで真顔になりました。
そう、いくら身長が高いといっても小学生のっ身長なんてたかが知れています。そしてそれはいくら洗面台によじ登ったとしても鏡の一番上のほうまで届くものではないのです。
もしかしたら教員がふざけてやったんだろう、なんて思う人もいるかもしれません。しかし先ほど書いたようにその手形は間違いなく子供のもので、大人の大きな手形は一つもついていませんでした。
私たちはこれをどうするか話し合い、結局担当の彼が新聞紙で頑張ってみる。といったので彼に任せて大浴場の掃除に取り掛かりました。
◆◇◆◇
大浴場の掃除をこなした私たちは脱衣所にもどって様子を見ました。
ずっと一人でがんばっていたようで、鏡は子供が手の届く範囲まではピカピカに磨かれていました。
しかし上のほうはさすがに届かなかったので三人で先生を呼び手伝ってもらいました。私たちも床の掃除などをてつだわされました。(鏡に触りたくなかったのですぐにほうきを持ったのを覚えています。)
掃除終わりに先生は「なんであんなところに?」と首を傾げましたが結局すぐに他の掃除場所の点検に向かてしまいました。
私たちは点検も終わったので荷物を取りに自分たちの部屋に向かいました。
ここからバスに乗るまでの出来事は一切覚えていない。こうだったかもしれない、というようなものはあれど文字に起こすとどうもつじつまが合わなくなってしまう。なので申し訳ないが場面はいきなり帰りのバスの中にとぶ。
◆◇◆◇
帰りのバスに乗り込み点呼を済ませると、バスは順番に発車していった。
窓から外を見ると、職員の人たちが手を振ってくれており、私たちも手を振り返した。
みんなが元気よく手を振る中、隣に座っていたA君は真顔で足元を見ていた。
私は彼に「どうしたのか、体調でも悪いのか」、と聞くと、彼は「なんでもない、後で話す。あと(職員が)見えなくなったらすぐにカーテンを閉めてくれ」といいました。
私は言われた通りみんなが手を振るのをやめたタイミングでカーテンを閉めました。そしてA君が口を開くのをまちました。
バスが山からおり、普通の公道に出たタイミングでバスが大きくグワンと揺れました。
車内では小さな悲鳴や驚きの声があがりましたが、石に乗り上げでもしたんだろうと言われ、みなもとのおしゃべりに戻りました。
そのタイミングでずっと下を向いていたA君が顔を上げて背もたれにもたれかかり、「…ふぅ」と息を吐きだしました。そして水筒の水を一口飲み、もうカーテンを開けていいと言いました。
カーテンを開けると、A君は後ろを一度振り返った後、さっきまでの行動の訳を話し始めました。
まとめるとこうです。
山に住む何かが私たちをみていた。それは一つではなく数えきれないほどの視線だった。だが全ての視線が悪いものではなく、ほとんどが私たちを見送るような視線だったとゆう。
それに力の強い何か(土地神のようなもの)が悪い何かを山から出さないように見張っていたそうだ。
しかし、その悪い何かの一つがバスの下に張り付き、山から逃げ出そうとしたらしい。それがちょうどA君の足元あたりにいたとゆう。
だが、山から出るとき、山全体を覆っている力(結界みたいなものらしい)に阻まれて失敗。離れまいと抵抗したため、バスが大きく揺れてしまったとゆう。
カーテンを閉めた理由は悪い何かに顔を覚えられ、また山へ来たときにマークされないようにするためだそうです。
一通りの説明を聞き終えた私は、二日日の夜の少女のことと、掃除のときの鏡について話をしようとすると、ちょうど後ろのクラスのバスが横に並んで走行してきました。
するとA君は急に血相を変え、椅子に取り付けられたエチケット袋(鬼太郎袋なんて呼んでました)を広げ、胃の中のものを吐き出しました。
私は驚いて先生を呼びました。運転手は気を利かせて速度を落としてくれました。私はA君の背中をさすっていると、ふと視線を感じ窓を見ました。そこにはさっきから並走していたバスが。中の様子をうかがってみると一人私たちのほうを見ている子がいました。
誰だろうと思い目を凝らすと、それは脱衣所を掃除していた子でした。
私はカーテンを勢いよく閉めました。
その子は顔にゾッとする笑みを張り付けながらこちら側を凝視していたのです。
しばらくするとバスのスピードの違いで並走していたバスが前方にいどうしました。
それに合わせてA君の体調も回復していき最後には元の顔色に戻っていました。
私はA君にさっき見たことを伝えると、A君は彼となにかあったのかと聞いてきました。
私は思いつくことが掃除のことしかなかったためそのことを伝えると、A君は私の顔をじっと見てきました。そして、ほかに私自身に何かなかったかと聞かれたので、さっき言おうと思っていた少女の話をしました。
話し終え、しばらく無言で見つめあった後、「大丈夫だね。」と言われました。
とうぜん説明を求めました。
まとめるとこうです。
どうやら私たちは一日目から山に住む何かから目を付けられていたようです。そして昨日の夜の少女もその一つだと言いました。また、鏡に関しては、人の念のようなものだと言いました。。それがあの手形で、あれに触れると念が憑りつかれてしまうそうです。私は気味悪がって触ろうとしなかったため、その何かは掃除担当の彼に憑りついたといいます。
また、なぜそうしたのかというと、その何かは山から出たがっていたようで、普通にやると結界に阻まれてしまうため人の中に入り、外に出ようとしたのではないか。そしてその目論見は達成されたと二人で結論をだしました。
こうして私たちのキャンプは終わりました。
しかしなぜ私たちは目を付けられてしまったのでしょうか。
これは二人で話し合いましたが結局答えは出ませんでした。もしかしたらここに書いたことの中に元凶となる行動があったのかもしれませんし私の忘れている何かが彼らを怒らせてしまったのかもしれません。
しかし今となっては知るすべも確かめるすべもありません。
A君はそのあといつの間にか転校してしまい連絡がつかづ、掃除の彼はしばらくして学校に来なくなったと聞きました。当時の教員に聞いてみてもはぐらかされて終わりです。
この不思議で不気味な出来事は時間とともに私の記憶から消えていくのでしょう。
…彼らの名前とともに
キャンプ三日目終了
_ 学校行事キャンプ 完 _
◆◇◆◇
謝罪
A君へ
久しぶりですね。私のことは覚えていてくれているでしょうか。
君と連絡が取れなくなってもうずいぶん年月が経ちました。
もしかしたらあなたがこの話に目を通してれるかもしれない、というとても小さな望みをかけ、ここにあなたへの謝罪の文を載せさせていただきます。
あの時あなたは山の何かが目を付けているのは私とA君の二人だという結論を下し、私はそれに肯定の意を示しました。
しかしそれは半分間違いです。
あの時は言い出せませんでしたが、あのとき狙われていたのは私一人でした。私は当時ある子からある物をもらっており、私はそれを山に持ち込みました。それに山の住人は興味を持ち、同時に警戒していたのです。
A君、あなたは私のそばにいたため、私はあなたを巻き込んでしまいました。
結果として二人とも無事に山を下りることはできましたが、一つでも選択を間違えていれば命を落としていたかもしれない危険な状況でした。
今更謝って許してもらえるとは思いませんが謝罪をさせてください。
あの時はあなたを巻き込み危険な目に合わせてしまったこと、ほんとうに申し訳ございませんでした。
時計塔の爺
ここまで読んでくださりました皆様に心より感謝いたします。