キャンプ2日目
キャンプ二日目です。
今回は前回よりも長い文章になっております。
キャンプ二日目。
先生たちがテントを周り起床をよびかる声で私たちは寝袋から起き上がりました。
私たちは寝袋をたたみ、身支度を整え、カバンからキャンプのしおりを取り出して今日の予定を確認しあいました。
前にも書きましたが私は食事係を担当しており、班の人数分の朝食を同じ班にもう一人いる食事係の子と2人で作らないといけなかったため、一人で確認をすませると早々に料理場に急ぎました。
料理場にはもうその子(Cちゃんと書きましょう)が野菜を洗っていました。
Cちゃんは私のかおを見ると何か言いたそうな表情をしましたが、私は気にすることなく、すぐに手を洗い味噌汁を作る手伝いをしました。
Cちゃんは料理が小学生ながらとても手際がよく、調理のほうは彼女に任せ、私は火の調節や洗い物にてっしていました。しかし、なぜか調理の合間にチラチラと私の顔を見てくるのです。
そして、あらかた出来上がり盛り付けていると、Cちゃんが
「…ねぇ、顔に泥がついてるよ。」
と私の顔を指差しました。
たしか右の方だったでしょうか、そこにはカピカピに乾いた泥がベッタリとついていました。
急いでトイレの鏡で確認しようとしたが、昨日のように何か得体の知れないモノがいるのではないかと怖くなり、手洗い場でCちゃんに確認してもらいながら顔を洗いました。
「意地悪されてるの?」
泥が取れたことを確認してもらったあと、Cちゃんが聞いてきました。
「ううん、なんで?」
「あのね、泥の形が手形みたいだったから誰かにつけられたのかなと思ったの」
寒気がしました。
昨日寝るときに聞いたあの[フヒ…フヒヒヒヒヒヒ]、と言う笑い声を思い出したからです。
あのなにかはテントの中に入ってきたかもしれないのです。
テントに鍵なんてかけてません。
入ろうと思えば誰でも簡単に入れます。
だから他の班の子のいたずらかもしれません。きっとそうだ、そうにちがいない。
そういい聞かせながらも、私はもう一度顔を念入りに洗い直しました。
そのあと食べた朝食の味も雑談も、なにも覚えていません。
◆◇◆◇
さて、ここで簡単に二日目の流れを説明します。
朝食を食べ終わると片付けをしてテントの中野荷物を全て持って二日目に泊まる宿泊施設まで行き、そこに大きな荷物を置いて、軽装して班ごとに山へ登る。
途中で広場があり、そこで校長先生に点呼をとってから弁当を受け取り昼食。
食べ終わると山登り後半戦、
頂上に鐘があり、それを鳴らせば目的が達成されます。
そして班ごとに下山し、ついた班から温泉に入り、荷物を部屋に置き、全員集まったらレクリエーション。
夕食を食べたあと、肝試しを行いその後就寝。
たしかこんな流れだったと思います。
◆◇◆◇
私たちは朝食を食べ終え、片付けをして、テントから引き上げました。
テントになにも残ってないのをテント班で確認し会うと、私たちは安堵の表情を浮かべました。
もうあんな夜はこりごりだからです。
皆で笑いあっていると、昨日蜂を掃除してくれたアドバイザーの人がやって来ました。
「やぁ、君たち。昨日はよく眠れたかな?」
私たちは顔を見合わせ沈黙しました。
昨日のあれを言っていいのかわからなかったからです。
少し迷ったあと、誰かが
「…お化けが出た…」
と言いました。
アドバイザーは複雑な表情を見せながらも、悪い夢でもみたんだよ、と言ってどこかへいってしまいました。
皆口々に夢なんかじゃないとそのあと言い合ってましたが私は一人沈黙しました。
去り際に
「…やっぱりか…」
と独り言を言ったのを私だけが聞いたからです。
私の心配と同期したように、その時の空は暗く、不気味でした。
◇◆◇◆
移動後、荷物を指定位置に置いたあと、私は山登り班の子達と合流しました。
メンバーはCちゃん、Dちゃん、Eちゃん、F君 、私、男二人、女三人、計五人班(班①としましょう)です。
山登りは他の班の子とぶつからないように、時間をずらして登山する決まりでした。
私たちのばんがまわってきたので簡単な地図を受け取り出発しました。
道は基本一本道で、分かれ道には矢印と教員が待機していて道を教えてくれます。
最初は見晴らしもよく、コンクリートで舗装されていたので、緩やかな坂といったものなので私たちは歌を歌ったり、雑談をしながらあるいていきました。
しばらく進んでいくと、別のクラスの子達(班②)と遭遇しました。
彼らはなぜか道の真ん中で立ち止まり、何か話し合っていました。
見るとそこは分かれ道でした。
一方は登山用の細道。もう一方は今まで通りコンクリートで舗装された車道のようでした。
おかしなことにそこにはいるはずの教員がおらず、矢印が細道を指すのみ。
話を聞くと、この矢印にしたがっていいのか迷っているというのです。
私たちは矢印の通りに進めばいいのではないかと主張し、彼らもそれに従い進むことを決めました。
本当なら他の班とぶつかったら一方は少し待たなければいけないのですが、そんなこともすっかり忘れて私たちは細道へと足を運びました。
しばらくしばらく進むと、上の方から別の班(班③)が降りてきました。
後戻りしてきたようで、何があったのか聞きました。
すると、なぜか進んだ道か行き止まりだった。別の道を探している。
とのことでした。
私たちは地図を確認し会いました。
しかしなにぶん簡単な線で書かれた地図ですので、今の状況を解決することはできませんでした。そして行き止まりにあったところまで進んでみよう。という話になり、班③の案内のもと進むことにしました。
「…ついたよ。」
そこは確かに行き止まりでした。
周りには簡単な橋がかかった小さな池があるだけで道らしい道はありません。
Dちゃん「…おかしいね、道がないよ。」
F君「えー!?迷子?遭難?」
私「どうする?戻る?」
Cちゃん「地図どおりなら、今ここら辺よだよ。」
Eちゃん「うん、でも道無いよ。」
私達は地図としばらくにらめっこしてました。
一回戻るか、次に来る班の子達を待つか。たしかそんなことを話し合ってたと思います。
時間は朝の10時を少し回ったところ、1時までに中間地点に着かねばいけません。
結局道を探そう、という結果になり辺りを見回しました。
すると班②の男の子が
「あった!!道あったよ!!」
と叫びました。
見ると長く伸びた草をかき分けると、よく山たどで見かける木の杭が打ち込まれて作られた階段のようなものがありました。
Dちゃん「やった!!やっと先に進める。」
Cちゃん「でも地図とは方向が違うよ?」
F君「とりあえずいってみようよ。他に道もないしさ。」
Eちゃん「時間もないし進もうよ。」
私「…」
私達はその道を進むことにしました。見ると他の2班もその道を進むことにしたようで、私達→班②→班③の順で進むことにしました。
◇◆◇◆
私達は男を先陣に草木をわけながら見つけた道を進みました。
他の子達はおのおの談笑に戻りましたが私は嫌な予感が止まりません。
前日のA君の言葉が蘇るのです。
(...おかしいね、この道ずいぶん古い。もう使われてないんじゃないかな?
それにさっきから鳥の鳴き声もしない。さっきまでうるさいくらいに鳴いてたのに、嫌なくらい静かだね。
A君はこれを気にしてたのかな?
なんとなく通りやすいところを通ってるけどこれは完全に獣道じゃないかな?てことは僕たちは迷子、遭難したことになるね。どうしようか、引き換えそうか。)
そんなことを一人で黙々と考えていると、急に視界が開けました。
そこはなぜか木が生えておらず、坂と坂の間に細い人一人が通れるほどの道が続いていました。
その先はまた木が生い茂り、日の光も差し込まないのか暗いトンネルの入り口を思わせました。
下にはコンクリートの道があり、私達はあそこに降りることができれば助かると思いました。
しかし降りるための坂はとても急で、夜のうちににわか雨が降ったらしくとても滑りやすく、危険です。
私「みんな、少し危ないけどあのコンクリートの道にいかない?」
F君「え~?危なくない?このまま進んだ方がいいよ。」
Cちゃん「でもあそこ暗くて気味悪い。」
Dちゃん「でもこの坂を降りるのは大変だよ。」
Eちゃん「…ねぇ皆、あそこの木とその下見てよ。…変なのあるから。」
私達は森の入り口の木を見ました。
するとその木のちょうど私たちの頭くらいの高さでしょうか、真っ赤なお札が何枚も貼られています。しかもその下には、丸い石が積み上げられ、まるで絵本で読んだ賽の河原のよう。
私「これは、ダメだね。」
F君「そうだね、降りるか。」
女子『コクコク(゜ー゜)(。_。)(゜ー゜)(。_。)』
そうして、降りようと考えていると、後ろの方にいた班③の子達が
「…ダメ」
「降りないで」
「このままいくの」
「そうそう」
「いかなくちゃ」
と口々に良い始めました。
班②の子達もその様子を見て困った表情をしましたがやはりしたの方がいいと言いました。
しかし、
「…ダメ」
「大丈夫だから」
「降りなくてもいい」
「前の子達もこことおってるよ」
「ほら、あそこにみんないるじゃん」
木の向こうを指差しました。
...そこにはたしかにリュックを背負った子供が数人、暗闇の向こうで立っていました。
ヤバイ!!
私は隣にいたF君とDちゃんを引っ張って、急な坂を
ズズーーーー
っと滑り降りました。
Cちゃんも同じくヤバイと感じたようでEちゃんを連れて私とほぼ同時に坂を滑り降りました。いや、この場合は降りると言うより落ちるといった方がいいのかもしれません。
班②の子達も私達を見て降りた方がいいと思ったようで、少し遅れはしましたが、全員坂を滑り降りました。
降りたあと、顔についた泥を拭いながら、私とCちゃんはさっきまで私達がいたところを見上げました。(他の子達は落ちるときに叫んでいたので息をととのえてました。)
見上げた先では班③の子達が私達を無表情で見下ろし、何かを口々に呟いていました。
私「…なにいってるんだろう。」
Cちゃん「…さぁ、聞こえない。」
班③「「「「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」」」」
いきなり彼らは笑いだしました。
子供特有の甲高い笑い声が辺りをこだまし、私達は呆然としました。
するといきなりあたりが暗くなりました。
もともとその日は雨が降りそうな厚い雲が一面に張っており、薄暗くはありましたが、まるで夜になったのかと錯覚するするほどに辺りは暗くなりました。
私達はその場で抱き合いながら座り込み、震えました。
暗闇のなかあの笑い声が響き渡ります。
無力な私達はただ無言で震えているしかありません。
◇◆◇◆
何分たったでしょうか。
ピタッと笑い声が止み、辺りが明るくなりました。
恐る恐る彼らのいたところを見上げると、もうだれもいません。
それでもまだ私達は立てず、なにも話せずにいると、
「おーーーい、どうしたのーーー?」
と坂のしたからA君たちの班がやって来ました。
私達は同じクラスの子と会えたのに安心してようやく立ち上がりました。幸いなことに誰も怪我をしておらず、誰も泣いていませんでした。
私「A君!!」
A君「みんなどうしたの?とりあえず登りながら説明してよ。」
私は彼に今起こったことを説明しました。
A君「…それは降りてきて正解だったね、やっぱりこの山変だよ。ほら、あそこ見てよ。」
A君は道の外れの森の方を指差しました。
驚きました。そこにはさっき見たようにいたる木に赤いお札が貼ってあり、その根本に石が3つ積まれていました。
私はA君にあれはなんなのか聞こうとすると、後ろにいたCちゃんが話しかけてきました。
Cちゃん「(私の名前)君、さっきはありがとう。二人を一緒につれてってくれて。」
私「???あ~ぁ、坂を降りるときね。全然大丈夫だよ。Cちゃんもヤバイと思ったんでしょ?」
Cちゃん「うん、あれは怖かったね。ねぇ(私)君、なんであれはヤバイってわかったの?」
私「あの道ね、泥だらけだったでしょ。だから足跡がないとダメなんだよ。でも足跡は一つもないからあの道を通った子はいないはずなんだよ。でも人がいたからおかしいなと思って逃げたんだよね。Cちゃんは?」
Cちゃん「そっかー、よく見てるね。私はね、知ってるこがいなかったからかな。あの先にいる子はどの子も知らないこで、もっと言うなら班③の子達もなんか最初から変だったんだ。だからお化けなんじゃないかって思って近くにいたEちゃんを引っ張って降りたんだ。」
当時、Cちゃんは友達が多い子だったのでそんな彼女が知らない子は私たちの学年にはかなり限られてました。後でみんなに聞いてみると、誰もあの子達を知らないと言っていました。
私たちの班、A君たちの班、班②はそろってコンクリートの道を雑談しながら進んでいきました。
話の内容はほとんどさっきのことと、班③はどこにいったのかという事でした。
途中、なぜA君たちの班はコンクリートの道を進んだのか聞きました。
彼らいわく、彼らの私達と同じく最初の分かれ道で悩んだそうです。ですが、子供の勘というものでしょうか。私たちの進んだ細道は嫌な予感がするというので通らず、代わりにコンクリートの道に進んだとのことでした。
それから30分ほど歩いていくと、目的の中間地点にたどり着きました。
どうやら私達で最後だったらしく、なぜコンクリートの道(すごく遠回り)を通ってきたのかと校長先生に叱られました。
私達は校長先生に迷子になってコンクリートの道を見つけたからそっちに進んだと説明しました。
お化けが出たと話しても、校長先生は不思議そうな顔をするだけでしたし、班③のメンバーは最初の方の子達と正規ルートを通ってちゃんとやって来たと言いました。
訳がわからなくなった私達は、こんな山早く下山して温泉に入ろうと思い、急いで受け取った弁当を食べ終えて山を登り、鐘をならして中間地点に戻ってきました。
途中雨が降ってきましたが、あまり気にすることもなく(すでに私たちの服は泥だらけでした)点呼をとり、下山しようとすると、呼び止められました。
聞くと下山は予定を変更して全員で降りると言うのです。
私達は不満でしたが普段は温厚な校長先生が厳しい顔つきだったので、素直に従うことにしました。
◇◆◇◆
一時間ほど待ってようやく全員が集まったことが確認でき、一組から下山し始めました。
私達も順番どおり、本来通るはずだったルートを使い、下山しました。
途中、例の小池があった場所に出ました。
しかし、どこを探しても私達が進んだあの木の杭が打ち込まれた階段は見つからず、また正規の道も見つけやすい場所にあり、本当にここが元の池なのかわからなくなりました。
疑問を抱えつつも私達は無事下山を、果たし、温泉に入り体の汚れをとることができました。
そこからはあまり覚えていない。
部屋で何をしたか、レクリエーションはどんなものだったか、夕飯は何を食べたのか、肝試しをどんな反応をして楽しんだのかなど、当時のこの部分は布団にはいるところまですっぽり今の私の頭から抜けてしまっている。
◆◇◆◇
夜の10時前後。布団に入り、クラスの男たちとヒソヒソと談笑に夢中になっていると、私を含める男子3人がトイレに行きたくなり3人で薄暗い蛍光灯の点った廊下を進み、突き当たりにあるトイレに向かいました。
用をすませ、先生に見つからないように部屋に戻ろうとすると、女子トイレの前に私達と同じくらいの女の子が立っていました。
しかし、私を含め他の子も、その子を知らず、他の学校の子ではないかということになりそうになりました。
女子は使う階が違うのに変だな、と思いながら、廊下を進むと
バチッ!!、バチバチバチッ!!!
っと蛍光灯が火花を飛ばしながら点滅しました。
すると同時に後ろから
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ねぇ、遊ぼう?」
と女の子の声が。
私達は叫ぶことも忘れ、部屋に向かって全速力で走りました。
後ろは振り返りませんでしたが、追いかけてくる気配と笑い声が聞こえてきます。
廊下が長く見えました。
一秒がすごく長く感じました。
自分がとてもゆっくり走っているように感じました。
だんだん距離を詰めてくる気配と笑い声に焦りを覚え、もう泣きそうでした。いや、泣いてたかもしれません。
気づくと私は三人のなかで一番後ろでした。当時の私は足がとても遅かったのです。
(ヤバイ、捕まっちゃう)
幸いにも部屋は目前。先頭を走ってた子が部屋の引き戸を勢いよく開け放ちました。
私は前二人に続き勢いよく部屋に飛び込みました。
そして男三人で扉を思いっきり抑えました。
ドンッドンッドン!!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
私もいれて~
ドンッドンッドン!!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
開けて開けて~~~~~!!!
その何かはしきりに扉を開けるよう叫んでいました。そして何度も何度も扉を叩いていきます。
部屋にいた他の子達も何事かと起き上がってきました。
私達はただ必死に扉を抑え、何かが入って来ないようにしました。
何かがやって来て数分、ようやく諦めたのか扉の前にあった気配とやかましかった笑い声はどこかへいってしまいました。
しかし安心できなかった私達は音がしなくなっても数分間扉を押さえつけ、なにも起きないことを確認し、誰かが安堵のため息をついたところで三人ともようやく安心しました。
そしてなにも話さず自分の布団に向かい、布団へおのおの倒れこみ、死んだように眠りにつきました。
...遠退く意識のなか、あの笑い声が山であった何かとそっくりだったと思いながら。
キャンプ二日目終了、三日目に続く
この話は私が現実に体験したことを元に製作しております。