キャンプ1日目
※この話は私が実際に体験した不思議な出来事です。
これは私が小学校5年生の頃のお話です。
うちの学校は5年生に学校行事としてキャンプがありました。
県内の山に2拍3日するというものでした。
一日目はクラスで決めたことをする。二日目は班ごとに別れて山登り。三日目は宿泊施設の掃除。たしかこんな流れだったと思います。
1日目、バスから降りた私たちは生い茂る木々に興奮していました。
私の住んでいるところは田んぼはあれど山はなかったからです。
けれど私の明るい表情もすぐに消えました。
バス乗り場からキャンプ場まで重い荷物を背負って歩かなければいけなかったからです。
今ならなんともない距離ですが、小学生が大荷物で歩くには少し辛いものでした。
しばらく歩いたころ。
私に当時仲の良かった友達(仮にA君としましょう)がフラフラ歩いていた私にこう囁きました。
「...僕ここヤダ、...なんかいる。」
私はどこか不安そうなA君の表情を見て、足取りを整え彼と同じように小声で聞き返しました。
「...何がいるの?動物?それともお化け?」
「...たぶんどっちも違う。それよりもっと怖いもの。」
「...えー(´д`|||)」
A君は霊感を持っており、今までも何度か同じようなことを私に教えてくれました。
そして、彼がそう言うと私たちの周りで奇怪な事が起きるのです。
なので今回も私はその言葉を無視することができませんでした。
「...あっ、でも怒らせたりしなければたぶん大丈夫だと思うよ。」
明らかに警戒の色を出した私にA君は追加で付け加えました。
私はあまりはしゃぎすぎないように気を付けようとその言葉を聞いて思いました。
そうこう話していると目的のキャンプ場にたどり着きました。
そこで山での注意等を先生とアドバイザーさんから聞き、そのあと荷物を事前に場所決められたテントに置いてくるよう指示をされました。
テントに向かう前にアドバイザーさんから、テントの中に蜂がいるかもしれないから気を付けろ、と言われました。
なんだか嫌な予感がしました。
今で言うとフラグが立ったとゆうことでしょう。
私たちは入り口のジッパーを開けると
[ブーーン...]
中から一匹の大きな蜂が出てきて、森の中に消えていきました。
やっぱりいた。
そう思いながらも、もう一度テントの中の方へ耳を済ませました。
もしかしたらまだいるかもしれないからです。
羽音は聞こえませんでした。
今度は持ってきていた懐中電灯で中を天井から下へとこのテントを使う男6人で照らしました。
天井に蜂の巣が作られた様子もないので安心していると
「 うわ!!! 」
と床を照らしていた子が叫びました。
驚いて全員懐中電灯を下に向けると全員声をあげました。
そこには蜂の死骸が落ちていました。
それも一匹ではありません。
十ぴき、いやもっと多かったと思います。
急いでアドバイザーさんを呼びに行きテントの中を見せました。
アドバイザーさんは顔を一瞬曇らせましたが、すぐにホウキとチリチリを持ってきて死骸を片付けてくれました。
気味が悪かったのですが、他にテントはないから我慢してくれと言われ、私たちはこのテントを使うことになりました。
◆◇◆◇
荷物を置いたあと、私たちは係別に別れました。(確か班長、副班長、食事係、保健係とかだったと思います。)
私は食事係だったので川魚を焼くための火をおこす作業をしていました。
火おこしといってもライターなどではなく、木を擦り合わせて熱を生み、その熱で火を起こすタイプのものでした。
これが予想以上に大変な作業で、火がついても燃えるものをすぐに与えなければすぐに消えてしまうので、みんな必死に新聞紙やら葉っぱやらを燃やし、かまどにぶちこみました。
ようやく安定してきた時には顔中がススだらけ、私は他の人に火のようすを見てもらい、顔を洗いに行きました。
顔の汚れを落としていると、大人たちの話し声が聞こえてきました。
声の方へ顔を向けると三人のアドバイザーさんと、キャンプ場の管理人さんがなにやら話し合っていました。
いつもならそこで興味を失い、もとの場所へへと戻っているのですが、アドバイザーの一人が持っているものが目に入り盗み聞きを続行することにしました。
そのアドバイザーが持っていたものはちり取りでした。
間違いなくさっき私たちのテントで使われたものだとわかりました。
大人たちはそれを、その中身を交互に見ながら話をしていました。
「...こんなことがありますかね。」
「いや、こんなことはじめてですよ。」
「...イタズラですかね?」
「いや、子供にこれほどの数の蜂を捕まえるのは無理だ。」
「前日にテントをチェックしたのは誰ですか?」
「...私だ。だがあのときはなにもなかった。○○君も見ている。」
「ええ、××さんと一緒に確認しましたがその時はなにもありませんでした。」
「...じゃあなんで...」
「...もしかしたら○△◇×かもしれん」
今なんといったんだろう。
聞きなれない名前?を聞き逃した私はもっと近くにいこうとすると、
「サボらないでよ」
と後ろから引っ張られました。
振り替えるとさっき火を頼んだ子が少しムッとした表情で立っていました。
ヤバイ長くいすぎたなー、と思った私はその子にごめんね、と言って持ち場(釜戸)へと戻りました。
その時にはもう大人たちの会話なんて忘れていました。
◆◇◆◇
お昼の準備ができた頃、先生たちが血相を変えて走り回っていました。
何かあったのかと周りの子達に聞きました。
「なんかね、○○君が大きな蜂に刺されたんだって。」
その子は様態が悪くなったらしく山から降りたらしい、とも聞きました。
私はその子とはクラスが別で、関わりも薄かったのであまり気にとめませんでした。
「...やっぱり出ちまったか...」
そう呟く管理人の言葉を聞くまでは。
残念ながら、ここから夜になるまで私の記憶はすっぽりと抜け落ちている。
何をどのようにして食べ、どんな遊びをしたかなど、欠片も思い出すことができません。
しかしこの管理人の言葉はなぜかあれから数年たった私の耳に残っている。
あの嫌悪感を隠せていないとゆうか、聞いててゾッとする感覚は残念ながら今の私には著すことができない。
◆◇◆◇
1日目の夜、なかなか寝付けなかった私たちは話に花を咲かせていた。
小学生らしい恋話とも言えない恋話、初めての山の感想、今日あった出来事と楽しく懐中電灯を囲みながら喋っていました。
「そういえば、最初の蜂、なんだったんだろうね。」
と、私はふとそんなことを呟いてしまいました。
「あー、あれねー?」
「なんだったのかなー?」
「たぶん閉め忘れたときに入って閉じ込められたんじゃないの?」
みんなもうそんなことは忘れたと言うように適当なことをいってました。
しかし、B君だけは顔をしかめて落ち着いた声でこういいました。
「お前ら、あの蜂の死骸ちゃんと見なかったのか?」
「暗かったしあんまりよく見てないよ。」
「なんか見たの?」
「あの死骸な、変なんだよ。」
「変?」
「そう、まともな形のやつが一つもなかった。羽がちぎれとったり、足が足りんかったりバラバラだったり。」
「でもそれは仲間割れしたからなんじゃないの?」
「...数匹な、頭が潰れてたんだよ。まるで誰かがわざとやったみたいに。あのとき俺たちは誰もあの中に入ってない。つまり死骸を踏むわけが無い。」
「...つまり俺たちより先に誰かがここに来たってこと?」
「アドバイザーさんじゃないの?」
「いや、昼に大人たちの会話を聞いたんだけどチェックの時には無かったって。」
「「...」」
みんな互いに顔を見合わせました。
それもそうです。イタズラにしてはやりすぎですし、目的もわかりません。
ただ沈黙続くのみでした。
突然テントに光が入ってきました。
全員驚いて入り口を見ると、
「...早く寝なさい」
と怖い顔をした先生が見回りに来ていました。
私たちはすぐに各自の寝袋に入って眠りました。
◆◇◆◇
しばらくすると私の名を呼ぶ声がします。
目を開けるとA君が私を起こそうとしていました。
腕時計を確認するとまだ10時。
どうかしたのかと聞くと、彼はトイレについてきてほしいと言いました。
ちょうど喉も乾いていたのでついていくことにしました。
暗い坂を懐中電灯の明かり頼りに歩きます。
歩きながらA君は小声で私に言いました。
「明日、気を付けた方がいいよ。」
「どおゆうこと?」
「...明日の山登り、良くない予感がする。僕たちは班が違うけど気を付けた方がいいよ。」
「...わかった。」
A君の忠告を聞いているとトイレについたので電気をつけようとスイッチを押しました。
...つきませんでした。
カチカチカチカチ
何度か試してもつきません。
話し合った末、暗いトイレで用を足すくらいならその辺でするとゆうことになり、二人並んでトイレの横の影で用を足しました。
しかし二人ともキレイ好きだったため、トイレの中にある洗面台で手を洗うことになりました。
…それがいけませんでした。
手を洗っていると急に激しい頭痛と目眩が私を襲いました。
フヒ...フヒヒヒヒヒヒ
何かが私たちの頭上で笑っています。
ヤバイ、怖い
私は動くことができませんでした。
フヒ、フヒヒヒヒヒヒヒ
ヤバイ、怖い、ヤバイ、怖い
私の心音が早くなり、今にも叫びだしそうになったとき、
グッ!!
と私の体は引っ張られ、トイレの外に出されました。
A君を助けてくれたのです。
「はぁ...はぁ...ありがとうA君。助かったよ。」
「大丈夫!?いたいとこない!?」
いつの間にか頭痛も目眩も収まっていました。
「うん、大丈夫。とりあえず逃げよう。」
そう言って早足で坂を上り、テントに入りました。
中の光景を見て私とA君は唖然としました。
私たち除く男子4名がテントの中央でかたまり、震えていのです。
「ど、どうしたの!?」
「...は、早く閉めろ!?」
声をかけた私にB君は強い口調でテントの入り口を閉めろと言いました。
何かにおびえているようで、それが中に入ってくるのを恐れているようでした。
A君がテントの入り口を閉め、私は再度B君に何があったのか尋ねました。
B君たちは動揺しつつも何が起きたか話始めました。
「…お前らが出てったあと、少ししたら金縛りにあった…、そん時は俺だけかと思ってた。」
「…俺たちもB君と同じように金縛りにあったんだよ。」
「四人同時に?」
「…あぁ、そんで何とか動こうと色々やってたらな、
『…フヒ、フヒヒヒ』
って笑い声が聞こえてきた。」
「…それはテントの周りを回ってたんだ…ずっと。」
「僕もう怖くて怖くて、でも声も出せないし動けないし…」
「でもしばらくしたらその声がいなくなって、急に金縛りが解けたんだ。」
「みんな一斉に飛び起きてさ、そしたらまた
『…フヒ…フヒヒヒ』
って聞こえて!?」
「それで、みんなで集まってふるえてたんだね。」
「…あぁ。」
間違いありません。さっきトイレにいたやつです。
私たちは、B君たちにさっき会ったことを伝えました。
4人は引きつった表情で私たちの話を聞いてました。
そして話し合いの結果、しばらく6人でテントの真中に集まり警戒することになりました。
しかしそれ以降その声聞こえず、結局30分ほどしたら各々自分の寝袋に戻り始めました。
私も寝袋に入り、目を閉じたとき、ある事に気が付きました。
私たちがトイレに向かった後、テントで4人があの声をきいた。その時私たちは用を済ませる途中。
そのあとトイレであの声をきいた。
おそらく4人が金縛りが解けたのはこのタイミング。
そのあと私はA君に助けられ、急いで戻る。
そのころ4人はまたあの声をきく。
そのあと私たちはテントに入っていまにいたる。
・・・じゃあ今あの声の元はどこへ?
沈んでいく意識の中、最後に私はすぐ近くで
『…フヒ、フヒヒヒ』
と聞こえた気がした。
・・・キャンプ一日目終了、二日目に続く
思ったより長くなってしまったので1日目、2日目、3日目と分けます。