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88:潜入

シオン視点です。

 ―「クレアとティアが城の中にいる」


 ルギウスさんは確かにそう言った。


「クレア、ティア、なんで・・・」


 まさか彼女達が先に城に入ってしまうなんて・・・。


「裏口から先に城に入ったんだな。クレアにも何か考えがあったのだろう。」


 ルギウスさんは、クレアを信用している。


 その関係が羨ましいなと思った。

 離れていても、お互いを信頼しているんだ。


 私はチラッとラフェールを見る。

 私も彼とそんな関係になれるだろうか?


「クレアとティアは恐らく剣聖と賢者と戦っているが、それくらいならあいつらに任せて問題ないな。」

「でも悠長なことはしてられなくなったな。」


 ラフェールが言った。



 彼女達が剣聖と賢者に勝ったとしても・・・。


 他の魔王側の敵が追撃するかもしれない。

 ディーン、勇者、そしてエレンとマリアも。



 いくら彼女達は強いと言っても、相手の戦力が集中してしまったら・・・。

 そう考えると相手の戦力が彼女たちに集中しないようにしなくてはいけない。

 分散させるためにスザクさんたちを待たずに、潜入した方がいいかもしれない。


「だな、俺らも城に潜入するか。」

「スザクさんとジュリアにはどう伝えますか?」


 先に城に入るなら、合流してから城に入ると思っているジュリア達にも伝えないと・・・。


「これを使う。」とルギウスさんは言うと、映像を記録する水晶玉を取り出した。


「先に城に入ったから、スザクたちは『正面』から城に入ってくれと伝える。」


 水晶玉に映像と共に、城内の様子と先に潜入していることを記録した。

 そして水晶玉を城門の前に置いた。



 スザクさんたちは、私たちと合流するためにここに来る。そして城門の前でこの水晶玉を見つけてこの映像を見る。


 水晶玉が他の人に見られる、ということはないと考えていいだろう。

 ギルドに避難させたし、そもそもこの状況で城に近づくのは私たち以外いないと言っていい。



「これで準備は完了だな。」


 水晶玉を設置して、いよいよ私たちも城に潜入する。


「それでどこから潜入しますか?」


 クレアたちは裏口、スザクさんたちはこの城門から潜入すると考えると・・・。

 私たちはできれば、正面以外の別のところから潜入した方が良い気がする。



「あそこだ。」とルギウスさんが指した先は・・・。






 城の屋上にあるバルコニーだった。





「いやいやいや」

「どうやってですか?」


 私とラフェールが同時にルギウスさんに言った。


「二人とも、俺にしっかりつかまれ・・・いや、俺が抱えるか。」と言うと左腕で私を、右腕でラフェールをしっかりと抱えた。



 まさか・・・。



「それじゃあいくぞ。」


 トン


 と地面を蹴る音と共に私たちは宙に浮いた。









「よし、着いたぞ。」



 さっきまで遠くから見ていたはずのお城の屋上のバルコニーにいた。



「え、いつの間に。」


 ラフェールは困惑の色を隠せずに言った。


「いや、飛んできただろう?」



 あーそうか。

 ルギウスさんレベルとなればこれくらいの跳躍も可能か。


 むしろ元々ノーランド山を拠点にしていた四天王ですもの。

 これくらいの跳躍力がないと、あの山ではやっていけなかったのかもしれない。



「なるほどな。」

「ルギウスさんなら納得です。」


 私たちは彼に対しての感覚が完全にマヒしていた。


「ん?まあ納得してくれたなら、早速中に潜入するか。」


 私たちはバルコニーから部屋に入った。





 ***********




 入った部屋は大きな寝室のようだ。


 部屋が広いが、広さの割には配置されているものはベッド、タンスだけだった。



「広い部屋ですね。」


 私は声を出した。


「・・・出て来い。」


 ルギウスさんが突然言った。


「俺から隠れようとしても無駄だ。」

「・・・まさか屋上から潜入してくるとは思いませんでしたわ。」



 ルギウスさんに答えたこの声は・・・。



「マリアなの?」


 私はその声に向かって叫んだ。


「ええ、シオン。久しぶりね。」



 その声の主が姿を現した。



「ま、マリア・・・」

「大丈夫か。シオン。」


 私の驚いた様子を見て、ラフェールが声をかけた。


「あら、美しくなった私をみて驚いてるのシオン?」


 魔族だ。

 あの聖母のように優しいマリアが魔族の姿をしている。



 肌の色も。

 目の色も。

 浮かべる表情さえも。



 あの時のマリアとは違う。

 マリアの面影はあるから、マリアだってことはわかるけど・・・。



「まさか魔王様の最大の敵ルギウスとあなたが一緒に行動しているとは思いませんでしたわ。」



 私は彼女のあまりにも変わり果てた姿に声を出せなかった。

 マリアをこのペンダントで救うことはできるのだろうか?

 そんなことも私は思ってしまっていた。



「魔王はどこにいる。」


 ルギウスさんはマリアにそう言った。


 ―答えなかったらどうなるかわかっているな?


 そんな圧を声から感じた。



「魔王様は、王座の間・・・にいますわ。」

「あっさりと答えるんだな。」

「ええ、私はあなたには勝てませんから。」


 けれど、とマリアは続ける。


「魔王様があなたを倒しますから。」

「・・・・・」

「あなたはどうぞここをお通りください。魔王様がお待ちです。」


 マリアは奥の扉を指しながら言った。


「・・・・・」


 マリアの言葉を聞いてルギウスさんは私の方を見た。


 ルギウスさんは魔王戦まで温存するために、戦闘チームに入らず私たちと行動した。

 できればここも温存しておきたい。


 さらにマリアは、ルギウスさんにここを通ってもいいと言った。

 温存できる絶好の機会だ。


「行ってください。ルギウスさん。」


 マリアとはここで私が決着をつける。


「・・・いけるのか?」


 彼は静かに私に問う。


「はい。」


 覚悟を決めて返事をした。


「大丈夫だ、ルギウス。」


 ラフェールが言った。


「俺もついてるから。先にいけ、ルギウス。」

「ラフェール!」


 私にとって最高の心強い味方。

 二人で力を合わせれば、きっとマリアを救い出せる。



「ああ、任せたぞ。」とルギウスさんは言うと、奥の扉を開けてさらに城の中へと進んで行った。






「シオン、それにラフェールさんかしら・・・?」


 扉が閉まるとマリアは私たちに声をかけてきた。


 私は魔族化したマリアと向き合う。


 今まで『楽』な道に逃げてきた。

 けれどこの戦いで彼女を救ってみせる。


 マリアは魔族化してかなり力をあげていると思う。

 激しい戦闘になるかもしれない。それでも救うんだ。



「一緒に魔族として、この世界を平和に導かない?」



 彼女の発した言葉。



 それはあまりに予想外の言葉だった。

これで全チーム城に潜入できました。

次回はティア視点です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 兵力分散が吉と出るか凶と出るか。 [一言] マリアの魔族化見たシオンはきついでしょうね。 ほぼ一緒に屑の魅了解けて頑張った仲間だし。 魔王なりの大義有ったにしても勇者にやりたい放題させ…
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