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87:温存

シオン視点です。

 私はルギウスさんとラフェールと行動している。

 彼らのスキルを使い、気配を消しながら街を探索する。



 潜んでいる魔物を見つけたときは、ルギウスさんが被っているフードを取り、自分の正体を明かして、この街を出ていくように説得した。



 それでも襲ってくる魔物は、ルギウスさんが対応した。



 思い返せば、結構強い分類の魔物だったと思うけど、すぐ大人しくさせてた。

 凄いことなんだけど、ルギウスさんだからもうこれくらいのことでは驚かない。




 物陰に隠れて助けを待っていた街の人を見つけ出したときは救出作業を行った。


 街の人を発見して、助けにきましたと言うと、「助けに来てくれてありがとうございます。」と街の人は安心していた。


 ただ、この人をどうやって安全にギルドまで送っていくか・・・。


 街の人を発見して、そのたびにギルドに連れていく作業をしていたら、このチームの目的である「調査」が捗らない。





 街の人が一人で安全にギルドに行ってくれたらなぁ・・・。





 いけない、また私は『楽』なことを考えていた。

 しっかりギルドに送り届けて、調査もしっかりやる。それが私たちの役割だ。


 なんて思っていたら・・・・。


 ルギウスさんが助けた街の人の肩に手を置いて、何かを念じた。

 するとその人をバリアのようなものが覆った・・・気がした。


「お前の気配を10分間消すように俺が操作した。そして念のため攻撃を守るバリアも張っておいた。これで一人でも安全にギルドに向かえるはずだ。」



 彼の言っていることが異次元過ぎて、私たちは理解が追い付かない。



「俺らは他のやつらも救ってくるから、あとは一人でギルドに行ってくれ。」

 

 ルギウスさんの言葉を理解しようと努力をしていると・・・


「何ボーッとしている。ほら行くぞ、ラフェール、シオン。」と彼は言った。




 **********





「さっきの人、大丈夫かなぁ・・・」


 街の人はギルドに向かって足を運んでいたけど、心配だなぁという思いが私の口から出てきた。


「問題ない。」といつもどおりの口調でルギウスさんは言う。


 まあ彼が問題ないって言うんだったら、問題ないのだろうけど・・・。


「俺は自分の気配を操作するのに精一杯なのになぁ・・・」とラフェールは言った。


「何を言う。お前も自分以外のシオンの気配を消去しているだろう。」

「いや、それは近くにいるからできるのであって・・・。」


 近くの人を自分の気配消去に巻き込むだけだから、俺でもできるとラフェールは言った。


「他人の気配を操作して、それを一定期間維持させるなんて、自分のそばを離れられたら無理だよ。」

「ふむ。そういうものか。」

「い、異次元過ぎる・・・。」


 私もラフェールの言葉に大いに同意した。

 戦闘能力もそうだけど、気配消去とか転移魔法とかも、当たり前のように使うし・・・。



 本当にルギウスさんを種族を超えて味方にした、スザクさんとティアってすごい。




 そういえばルギウスさんはなんで調査のチームに入ったんだろう。

 彼の戦闘能力ならスザクさんと一緒にレオンハルト討伐チームでもよかった気がする。

 それかクレア達と戦闘チームでもよかった気がする。




 別にラフェールと二人きりで行動したかった。


 ・・・わけじゃない・・・けども。


 そんなことを思っていると「そういえばルギウスはなんでスザクと討伐チームや戦闘のチームに入らなかったの?」と私の考えていた疑問をラフェールが言葉に出して、ルギウスさんに聞いた。



「俺は戦闘狂のイメージが強いのかもな。」と笑いながらルギウスさんは言った。



「ただ魔王と戦うために少しでも温存しておきたかっただけだ。」

「温存?」



 私は彼が『温存』ということを実践することに驚いた。

 温存なんかしなくても勝てそうな気がするが・・・。



「どうした。至って普通の作戦だと思うが・・・。」

「そ、そうですよね。」


 いくら彼が強いとはいえ、一人で全員を倒すのは無理だ。むしろエースを一番大事な場面まで温存するのは普通のことだ。


 私は彼に対して、若干感覚がマヒしつつあった。


「それよりも調査を続けるぞ。」





 **********







 街の人も救出しギルドに送って、街に魔王が仕掛けた罠などがないことを確認した私たちは、今は城の門の前にいた。


「城についたな。この位の距離なら十分かな。」というとルギウスさんがは地面に胡坐をかいて座る。


「なんで座るの?」とラフェールがルギウスさんに聞く。


「中を探るためだ。」

「え、ど、どうやって。」

「ここから城の中を魔王の気配を中心に探る。」


 またも彼の異次元過ぎる答えを聞いて、私たちは黙る。


「ただ『集中』して城を探る。その間、俺は無防備となるが・・・。お前らが俺を守りつつ、見張っていてくれ!」

「ああ、分かった。」


 いくら異次元なルギウスさんでも片手間で、そして一瞬で、外から城の様子を探ることはできないんだと安心した。


 いやその行動に集中しただけで、城の様子を探ることができるのが凄いんだけども・・・・。


 やっぱり私たちはルギウスさんへの感覚がマヒしている。



「信用しているぞ。」というと彼は目を閉じた。


 きっと今、城の中を探っているのだろう。

 ルギウスさんの信用に応えるためにも、襲ってくる魔物から彼を守らないと・・・。






 とはいってもクレアとティアが結構な数の魔物を倒したのだろうし、私たちも倒したり、街から追い出したりしている。


 今は、街にいる魔物の数が少ない。




 だから魔物が襲ってきても・・・。


「パワーシュート」


 ラフェールのこの一撃で十分だった。


「わ、わたしの出番が・・・」


 私は嘆くように呟く。


「何言ってんだシオン」


 その呟きを聞いたラフェールは私を見て笑顔で言った。


「女の前では男に良い恰好させてくれよ!」



 彼が私の前で良い恰好をしたいこと。

 そして私を女扱いしてくれたこと。

 そのことが嬉しくて舞い上がりそうだった。




 でも今は大事な作戦の途中。


「あ、ありがとうラフェール。」


 舞い上がるのはこの作戦が終わってから。




 ・・・終わってからだから。









 しばらくするとルギウスさんの目が開いた。


「ど、どうだったの?」


 ラフェールが言った。


「城の中に高い戦闘能力を持つ者が9人いる。」


 ラフェールの問いに、ルギウスさんが答えた。


「魔王、そしてディーンにエレン、マリア、あと剣聖と賢者・・・」



 魔王に洗脳されたエレンとマリア。


 ―このペンダントで救い出して見せる。


 私はそんな決意を心の中でしながら、ペンダントをぐっと握った。



「そして勇者は魔王と一緒にいる。いや、一心同体、なのか?」


 ・・・あの男もいる。

 ルギウスさんの言葉の歯切れが悪いが、魔王と一緒にいるということは私たちの敵なのだろう。



 そもそもこちら側にいても敵だけど。




「あれ?」とラフェールが言った。

「どうしたの?」


 私は彼に聞いた。

 何か疑問に思うことがあったのだろうか?


「足りなくない?」

「えっ!?」

「9人ってルギウスは言ってたよね?」


 そういえば・・・。

 魔王、勇者、ディーン、エレン、マリア、剣聖、賢者・・・。

 改めて数えなおして、私もやっと気づいた。








 7人だ。

 レオンハルトは街に繰り出しているから、城の中にはいない。

 そう考えるとあと「2人」は誰なのだろう。



「ルギウス。残り2人は誰かわかるかい?」

 ラフェールがルギウスさんに聞いた。


 自分たちが把握している戦力以外にも、魔王が「2人」補強した。

 ってことも考えられる。



 その場合、こちらとしてはかなり苦しい戦いになりそうだけど・・・。






「・・・・クレアとティアが城の中にいる。」

次回もシオン視点です。

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