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83:リベンジ

ティア視点です。

「うーん、僕の出番がないなー。」とドレークさんが言った。


 私たちは街に潜む魔物たちを討伐しつつ、逃げ遅れた街の人たちを救っている。


 救った街の人はギルドに一時的に退避させている。

 ギルドは協力してくれる冒険者たちが見張ってくれている。少なくとも街中にいるよりかは安全だろう。


 多くの街の人は既に避難済だ。思ったより街に残っている人は少なかった。

 それにしてもドレークさんが策を打っていたとはいえ、多くの街の人をどこに避難させたのだろうか。


 昔からの知り合いの魔術師の力を借りたと言っていたが・・・。



「ティア、そっちから出てくるわ。」

「ああ、わかっている!」


 見えないところから不意を突こうとしたみたいだが、無駄だ。


 不意打ちに失敗した魔物は私の剣で切り刻まれた。




 ***********




「かなり襲ってくる魔物は倒したみたいだけど・・・。」


 街の人もかなりの数を助けてギルドに退避させた。

 そろそろルギウスやスザクたちと合流してもいいかと思っていると・・・。


「ドレークさん、ティアさん」


 突然誰が私たちに声をかけてきた。


「お前は確か・・・」

「騎士団長のグリムです。」


 レオンハルトがいなくなってから騎士団長に就任したグリムだ。

 城から逃れてきたのだろうか?


「グリムか。無事でなによりだ。」

「はい。でも良かった、ギルドのティアさんとドレークさんに会えて・・・。」


 グリムはほっとした表情で言った。


「私も城内の人を魔族から匿っています。助けるために一緒に来てくれませんか。」


 私たちが来る前もグリムたちが動いていてくれたってことか。


「そうかありがたい。案内してくれ!」


 私はグリムに返答した。






「あっ、ちょっと待ってティア。」


 そう言ったのはクレアだ。


「行くのは私とティアの二人。ドレークさんは先にギルドに一時退避させた人たちを避難させて!」


 確かにドレークさんまで連れていく必要はないか。

 先にギルドに一時退避させた人を、ドレークさん主導で先に避難させた方がいいな。


「じゃあドレークさん、そういうことでいいか?」

「うん、じゃあ後はよろしくね。ティアくん、クレアくん。」


 ドレークさんはそう言うとギルドの方へ走って行った。


「じゃあ、案内してくれるか?」

「はい。ついてきてください。」




 ********







「城に近づいているようだが大丈夫なのか?」


 グリムは城に向かっていた。

 あそこは今は魔王城と化している場所だ。


「大丈夫です。魔王が把握してない城の地下への隠れた裏口に向かってますので・・・。」



 なるほど。

 城を占拠したとはいえ、城の地下や一部の人間しか知らない隠れた裏口は、まだ魔王は把握をしていないのだろう。



 ルギウスやスザクたちより先に城に入ることになるが・・・。

 グリムが城内に匿っている人達を助けて、後で合流すればいい。



「さあここです。」


 今や魔王城と化している王都の城。

 私とクレアとグリムは中に入っていった。


 私たちは裏口から城の地下へと進む。



「さてと兵士さん」


 クレアが突然、グリムに声をかけた。


「私たちを誘い出してどうするつもりなの?」

「えっ!?」


 クレアがグリムによくわからないことを言いだしたので、私は思わず声を上げた。


「あら、ティア。まさか本当にこの兵士が案内しているとでも思ったの?」

「えっ、えっ。あれ?」


 私の様子を見てクレアはふうと息を吐いた。


「ティアはともかく私は誘いに乗ってあげたんだけど。ね、元人間さん。」

「元人間!?」

「恐らく魔王によって魔族化したんだと思うけど。」

「じゃあ、城の地下に囚われている人は・・・」

「いるわけないじゃない。」


 ティアはそう言うと私の頬を指でつつく。


「城の地下に魔王の知らない箇所があったとしても、私たちに助けを求める前に普通は裏口から避難させるわよ。」

「うっ!」



 確かにそうだ。

 仮に本当に城内の人を地下に匿っていたとしても、魔王がいる城に匿う必要はない。

 こっそりと裏口から避難させた方がいいはずだ。




 騎士団長という立場だからって、無条件に彼を信じすぎた・・・。




「・・・ティアってやっぱり脳筋よね。」

「うっ、うるさい・・・。」


 クレアにそのことを指摘されて、思わず顔が熱くなる。


「まあ、それでも城の裏口から潜入できたからいいわよね。」

「・・・」


 グリムは私たちのやり取りを黙ってみていた。


「・・・そういえば兵士さん。レディが問いかけてるのに黙るのは、男としてどうなのかしら。」


 クレアは挑発するようにグリムに問いかけた。


「最初からお見通しってわけか。」

「ええ、私は魔族よ!」


 そう言ってクレアはフードを取った。


「魔族の女、そういうことか・・・。」

「さて、最初の問いに答えてもらえるかしら?」


 それと・・・と彼女は続ける。


「私たちに勝とうとは思わないことね。騎士団長さんらしいけど、貴方くらいなら逆立ちしても勝てるわ。」









「・・・・エリー様とシュリ様のところへ案内する。ついてこい。」


 グリムは諦めたように口を開いた。


「あの二人は私たちと少なからず因縁があるし、先に私たちで相手しておきましょう。」

「ああそうだな。」


 相手の戦力を減らす。

 そしてその後にスザク達と合流するのが理想だ。








 なんて甘いことを考えながら先に進んだ。





 *************






 グリムが案内したのは、地下にある騎士団の訓練場だった。


 訓練場には来たこともある。魔王に城を乗っ取られた割には、意外と綺麗な状態のまなである。


 ただ、雰囲気は重苦しい。





「きたわね。」


 この声はエリーの声だ。


「待ちわびたわよ。ティア。」


 そしてシュリの声。


 2人が姿を現した。

 その姿を見て私は驚いた。







 既に人間の姿ではないのは明らかだったからだ。

 二人共、人間だった時の面影はある。だからエリーとシュリであることはわかる。


 しかしエリーは背中に翼が生えている。

 シュリも耳が尖って、目も赤くなっている。

 そして長い尻尾が生えている。



「ご苦労だったわ。」


 シュリはグリムに向かって言った。

 ・・・私は偶然見えてしまった。

 シュリの口の中の歯の形までものすごく尖っていた。少なくとも人間の歯の形ではない。



「それでは・・・。」とグリムは言うと、訓練場からそそくさと出て行った。



 そんなことよりも私は二人の容姿からして明らかに魔族化していることに驚きを隠せなかった。


 これは女神のペンダントを彼女達に着けたとして・・・

 本当に魔王の洗脳が解けるのか。二人を正気に戻すことができるのか。と私は思った。



「エリー、シュリ・・・」


 クレアも私と同じことを思ったのだろうか。

 小声で彼女達の名前を呟いた。


「あら、クレアもいたのね。」


 エリーはクレアに向かって言った。


「本当は二人でティアに魔界のリベンジをしたかったところだけど・・・。」


 あの時は私一人で、二人をなんとか抑え込んだ。

 最終的にはマリアの回復魔法で逆転されてしまったが、それが無かったら私が勝っていた。



「クレアもまとめて私たちが倒してあげる。」


 魔界の時とは明らかに違う。相当戦闘力がアップしている。

 正直私一人では厳しいかもしれないと思うほど。


 エリーは剣を抜いて、シュリは杖を構えた。


「このペンダントは無駄そうね・・・。」


 二人の姿を見て判断したのだろうか?

 クレアは悔しそうに声を絞り出ながら戦闘体勢をとる。


 ―『エリーとシュリの分よ。彼女達も救ってあげたいの。』


 女神の塔の最上部でクレアがジュリアに言っていたこと。

 私はそれをふと思い出していた。

次回もティア視点です。

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