66:女神の試練
女神の塔に入る。
「案外、何もないんだな。」
ティアが呟いた。
1階は大きな部屋だけ。もっと何か罠があると思ったけど・・・
「奥に階段があるわね。でもそれ以外なにもないのかしら・・・」
シオンが言った。
女神の聖域では激しい戦闘をした。
それを乗り越えて女神の塔に入った。
何かが待っているのかと思ったけど・・・。
何もない。凄く静かだ。
「ねえみんな」
スザクが声をかけた。
「この石板なんだろう・・・。」
大きな部屋のど真ん中にある石板。
みんながスザクの元に集まった。
「ええと、石板に書いてあることは・・・。」
『女神の秘宝。欲しくば女神の試練を受けよ。心の強さ、意志の強さで試練に打ち勝て。』
「この女神の秘宝って」
「恐らく女神のペンダントだろうね。」
私の問いにスザクが答えた。
「これを手に入れれば・・・」
彼の隣で戦える。
魔王、勇者も怖くない。
そしてきっとエレンさんとマリアさんも取り戻せる・・・。
「でも女神の試練ってなんだ?」
スザクがその場で考え込む。
秘宝を手に入れるためには試練を乗り越えろってことなのだろう。
どんな試練が待っているのだろうか?
「それに『心の強さ、意志の強さで試練に打ち勝て』ってどういうことなんだ?」
ルギウスさんも考え込む。
その石板に書いてある強さは目では測れない強さ。本当にどんな試練が待っているのだろう。
「考えても仕方ないわ。さっさと奥の階段をあがりましょ。」
「ああ、だな。」
とクレアとティアは先に階段へと向かう。
「私たちもいきましょ。ジュリア。」
「そうね。」
シオンの言葉で私も二人に着いて行く。
「うーん。俺たちもいくか」
少し遅れて、考えこんでいた男性陣がそれに続いた。
私は階段の前に来る。
「・・・よし」
覚悟はできた。
私は一歩を踏み出す。
ここで女神の秘宝を手に入れて
スザクの隣に立つんだ。
「・・・何をしているのルギウス。」
先に階段を上がっていたクレアがルギウスさんに言った。
「いや、なんだんだこれは・・・」
ルギウスさんは階段を上がろうとして躊躇している。
「先に進めない・・・」
・・・・異変はもうはじまっている。
「ぼ、僕もだ。まるで何か阻まれているようだ。」
「くっそ、ゴリ押しで行きたいところだが・・・俺もダメだ」
スザクとラフェールさんも階段を上がれてない。
何が起こっているの?
「どうしたのスザク」
私は上っていた階段を引き返す。
そして彼に手を伸ばす。
バチン
スザクに拒否されたわけじゃない。
それはまるでバリアに弾かれたようだった。
そして階段を降りようとすると・・・。
バチン
全身でバリアに弾かれるような感覚だった。
降りることができない。
「い、痛っ」
「ジュリア。大丈夫かい?」
「お、降りれないよ!」
私は驚いて声を出してしまった。
『うふふふ』
「だれだ!」
突如聞こえた女性の声にルギウスさんが反応する。
『ここからは男女、別れてもらうぞよ』
この声はどこから聞こえているのかわからない。
今はティア、クレア、シオン、そして私の女性は階段を上がっているが、スザク、ルギウスさん、ラフェールさんの男性は上がれてない。
「・・・俺たちはクレア達に女神の秘宝とやらと取ってくるのを指をくわえてここで待ってろと言うのか。」
ルギウスさんはその声に向かって言った。
『おー恐ろしい殺気じゃ。大丈夫じゃ指をくわえる暇は与えんよ。入り口を見てみぃ。』
「グルルル」
なんと塔の入り口から、女神の聖域に居た魔物たちが乱入してきた。
「え、なんで魔物が・・・」
『魔物どもよ。この侵入者たちを殺せい』
というと魔物はスザクたちに襲いかかってきた。
『・・・ちなみにこの魔物たちは階段をあがることができる。お前たちが少しでも狩り残すと、お前たちの大切な女子が大変な目に合うなー』
このままではスザクたちがあの大量に押し寄せる魔物を3人で戦うということになる。
私も隣で戦いたい。
でも、階段を降りれない!
ど、どうすれば・・・。
「ジュリア、先に行くんだ。」
迷う私に声をかけたのはスザクだった。
「僕たちはここで、こいつらを食い止める。絶対に一匹たりとも通さない。」
彼の言葉に強い意志を感じた。
「だからジュリア達は、上に登ってペンダントを取ってくるんだ。」
今は隣で戦うことはできない。
けれど、それぞれの場で『一緒の目的』で戦うことができるはず。
「わかったわ。スザク。」
ペンダントを手に入れて、本当に彼と隣で戦えるようになるために。
これはその最終試練。「女神の試練」受けて立つわ。
「皆さん、上に行きましょう!」
私は3人に声をかける。
「ああ」
「行くわよ!ジュリア」
「ルギウス、頼んだわよ」
私たちは階段を駆け上がった。