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58:宿屋探し

「へえ、花を売り物にしている店もあるのね。」

「クレア。俺たちは『奴隷』だ。静かに楽しめな。」



 違う種族の街が新鮮なのだろう。

 首輪をつけられているのに楽しそうだ。



「は、早く宿屋を探そうか?」

「そ、そうね・・・」


 一方の私とスザクは気が気ではない。


 クレアとルギウスさんを首輪をつけて奴隷扱いするのそうだが、なかなか宿屋が見つからない。


 もう既に3件は断られている。



 フードを被ったまま、宿泊はできない。フードを取ってくださいと言われる。


 そしてはっきりとではなく、やんわりと断られる。



 ―『他のお客様もいますし・・・』

 ―『できればご遠慮いただけたらと・・・』


 

 



「・・・すまないな。俺たちのせいでなかなか見つからないよな。」

「大丈夫。きっと見つけるよ。」



 とは、いっても違う種族を受け入れてくれそうなところはない。






「あなたたち!」


 突然男性の声がした。

 私たちはその声の方へ振り向く。


「魔族を連れて、宿屋を探しているそうですね。」



 もう、噂になっていた。


 これは今夜も野営かな・・・。



「よろしければ、私たちの宿屋に来ませんか?」




 一瞬、理解できなかった。





「あら本当にいいの?」


 男性の声に反応したのはクレアだった。



「ええ、もちろんです。」


 間違いない。この人は良いと言っている。



「本当にいいのか?」と言いながらルギウスさんはフードを取る。


「俺たちはお前たちとは違う種族だ。恐怖は感じないのか?」

「ええ、大丈夫です。」



 男性は笑顔で言った。



「・・・むしろ同じ人間の方に恐怖を感じることもありますよ。」




 確かに私は同じ人間である勇者に全てを壊されるところだった。

 男性の言葉を聞いてそんなことを思った。





「さて、私たちの宿屋まで案内しますよ。」



 私たちは男性に着いていくことにした。








「私の名前はカムイって言います。あなた方は・・・」

「僕はスザクです。」

「ルギウスだ。」

「クレアよ。」

「私はジュリアです。」


 カムイと名乗った男性に私たちは自己紹介する。



「本当にカムイさんには感謝しかないです。ありがとうございます。」


 スザクがカムイさんにお礼を言う。



 ルギウスさんやクレアに奴隷のまねごとをさせといて、結果は野営でした。

 

 なんて自分を許せなくなる結果となるという危機を救ってくれた。



 本当に宿屋が見つかってよかった。




「いえ、むしろ私たちの方が感謝ですよ」


 カムイさんは言った。



「・・・まだ私たちの宿屋は始めたばかりでして。お恥ずかしながらお客様がなかなか来ない状態でして。」



 そういえばカムイさん、私やスザクと年齢は同じくらいの見た目をしている。

 それなのに宿屋を経営しているなんて凄い。



「あっ、誤解しないでくださいね。お客様が来ないからって無理にあなたたちを案内したわけではありません。」


 カムイさんは慌てたように補足をした。


「私は良いお客という基準に種族は関係ないと思っています。どんな種族でも良いお客様は良いお客様なんです。」

「そんな考え方を持っている人間がいるとは・・・」


 ルギウスさんが言う。


「感謝だな。」

「ええ本当ね。」

「感謝してもらえて何よりです。それであなたたちはどんな目的で旅をされているのですか?」


 カムイさんが私たちに問う。



「あっ、言いたくなければ大丈夫ですよ。ただ異種族と一緒にどんな目的で旅しているのか気になりまして・・・」



 うーん、魔王倒すために女神の塔の女神のペンダントを取りに行きますって言うと大事になりそうだし。



 どう答えればいいんだろう。



 私は代わりに答えてと心の中で呟き、スザクの顔をちらっと見る。



「女神の塔の調査に行くのですが、何か知っていることありますか?」



 うん、私が答えなくて良かった。

 スザクが無難にカムイさんの質問に答えた。




「女神の塔ですか・・・」


 カムイさんは手を顎に当ててうーんと唸る。


「この街の出身のとある男性がそこに行くと言ったそうで、女神の塔に向かったって噂しか知らないですね・・・。」


 私たち以外にも向かう人がいたんだ・・・。


「でもその男性はまだ戻ってきてないそうです。申し訳ありません。大した情報でなくて」

「いえいえ、気にしないでください。」


 むしろ女神の塔について、いっぱい何かを知っていたら驚きだ。





「さて、着きましたよ。」


 カムイさんはそう言うと扉を開いた。



「いらっしゃいませ・・・ってカムイ!それに4人のお客様・・・」


 綺麗な女性が驚きの声を上げた。


「エイミー、ただいま。お客様だよ。」

「いらっしゃいませ。4名様ですか?」

「いえ、また二人の女性が仲間にいます。6人なのですが・・・問題ないですか?」

「はい歓迎します。6名様ご案内いたします。男性、女性で1部屋ずつでいいですか?」

「はい、ありがとうございます。」


 エイミーさんとスザクがやり取りをする。


 これで今日の宿屋が見つかった。


「じゃあジュリア、僕は物資の買い出しに行ってるティアさんたちを迎えに行ってこようかな。」

「ううん、私が行くよ。」


 思わず私は言う。


「え、じゃ、じゃあ荷物は置いて行っておいで」

「うんわかった。」



 私は荷物を置いて宿屋を飛び出す。


 思わずスザクが二人の女性と三人で歩くことを想像して、少し焦ってしまった。


 大丈夫・・・きっと私のそんな嫉妬は気づいてないと思う。



 それよりも宿屋探すのに結構時間かかったから彼女達を待たせているかもしれない。



 噴水のある広場だっけ・・・。

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