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51:クレアの目覚め

いつのまにか50話を超えていた・・・。

 ティアさんの悲痛な叫びを聞いたあとは、ドレークさんの苦労話を聞いた。



 ドレークさんはこの作戦が失敗することを考えて、私に転移石と自分の転移石をリンクさせるだけでなく、他にも手を打とうとしていたらしい。



 私たちがノーランド山の調査に向かった後、勇者が魔王を倒しに行くと言った。

 勇者は絶対に魔王を倒して戻ってくるといって旅立ったという。



 ドレークさんは『失敗』したときのことも考えて、手を打っておくべきだと主張したらしい。

 失敗したら、真っ先に勇者のいたここが狙われるからと。



 でも王都と城下町は、勇者が討伐に向かった時点で既に魔王に勝利したかのようにお祭り騒ぎ。

 彼の主張を聞く人はほとんどおらず、聞いた人はギルドの職員たちや教会の神父様位だったそうだ。



 結局ドレークさんができたことは、私たちが転移した来た時のことを考えて、教会の神父様や癒しの魔術を持つシスターや、癒しの魔術を使える受付のワカバさんをいつでもここに呼べるように融通が利くようにすること。



 また昔一緒に冒険したことがある魔術師に会いに行って何かあったら助けてほしいことを伝えること。



 そしてもしこの王都を避難することになったときに素早く避難するために、ギルド職員と教会の人に必要な荷物な準備をしておくことを指示すること。



 これくらいしかできなかったそうだ。




「ルギウスくんが目覚めたとき内心ヒヤヒヤしたよ。冒険者ならわかる圧倒的な強者のオーラ。敵意を向けられたら死を覚悟するね。でも彼はこう言った。」


 ―『魔族の俺とクレアを助けてくれて感謝する』


「そういうと彼は眠っているクレアくんに側に寄り添い看病を始めた。魔族も人族も大切な人を助けたいのは同じなんだと考えさせられたよ。」


 ルギウスさんのように魔族でも大切な人のために行動する。

 勇者のように大切なものを壊してくる人もいる。



「・・・クレアさん目覚めるかな」

「クレアならさっき目覚めたぞ」

 その声とともにルギウスさんが部屋に入ってきた。



「ルギウスさん!クレアさんの側にいなくて大丈夫ですか?」


 私は魔王に勇者の洗脳を解かれた瞬間のクレアさんの姿を思い出す。

 彼女を一人にしたら・・・。



「大丈夫だ。それよりも一緒に来てほしい。クレアがお前たちにお礼を言いたいそうだ。」

 とルギウスさんは言った。

 

「ジュリアは目覚めてからちょっとしか時間が経ってないけど、行けるかい?」

 スザクが私に聞いた。

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

「無理はしないでね。」


 私たちはクレアさんのいる隣の部屋に向かった。







 *************



 隣の部屋に入るとベッドから上体を起こすクレアさんがいた。


 あの時はそう感じる余裕はなかったけど、凄く綺麗だ。



「皆さん。地獄のような洗脳から解放してくれてありがとうございます。そして、ルギウスを・・・彼を信じてくれてありがとう・・・。」


 クレアさんは頭をさげて言った。


「俺からも感謝する。お前らが協力してくれなかったらクレアと俺は再びこうして会うことができなかっただろう」

 ルギウスさんも一緒に頭を下げて言った。



「ルギウスさん、クレアさん頭を上げてください。お二人が再会できて本当に良かったです。」

 私は頭を下げる二人に対して言った。


 私は洗脳の恐ろしさを体感している。魔族でもそれで苦しんでいるのであれば、助けるのは当然だと思った。



「ジュリアの言う通りよ。本当に良かったわ。」


 シオンさんも私に続けて言う。


「それにしても、まさか人間に助けてもらえるなんてね・・・」

「・・・ただ俺の勘違いと詰めが甘いせいでこんなことになってしまった。」

 ルギウスさんが声をトーンを落として言った。


「お前たちの大事な仲間のエレンとマリアは魔王に奪わせてしまった。魔王の洗脳の『性質』を勘違いしていた。申し訳ない。」

 彼は私とシオンさん向かって言った。


「勘違いだけでなく魔王のふいうち喰らうという失態まで犯した。不覚だ。」


 正気に戻って錯乱したクレアさんを守るために彼は行動した。誰も彼のことを攻めることはできない。



「魔王は戦力を整えて攻めてくるだろう。でも大丈夫だ。『三度目』こそは俺が・・・」

「ルギウス、今はそんな暗い話はなしよ。」

 クレアさんがルギウスさんの言葉を遮る。


「そうね・・・。」

 彼女は私やシオンさん、ティアさんを見る。


「今は助けてくれたこの娘たちと仲良くなりたいし、魔王の対策は明日で話しましょう。」

「だがクレア、なるべく急がないと」

「魔王も準備をするはずよ。今度こそあなたを『確実』に倒すために時間をかけてね。」

「いや、しかし」

 とルギウスさんはもごもごと言う。


「私もこの恩を返すために協力するつもりよ。でもまず仲間になるこの娘たちのことを知ることから始めないとね。」

「そ、そうか」

 彼が少しオロオロしている。


 初対面の時の圧倒的なオーラを知っているので、このような姿を見るのは新鮮だ。


「大丈夫よ。明日になったらちゃん聞くわ。」

「わかった。」

 ルギウスさんはしぶしぶ納得したように返事をした。



「ふー。やっと納得してくれたわ。さて・・・」

 クレアさんは一息つくと言った。



「男性はこの部屋から出て行ってもらおうかしら?」

「「えっ!」」

 スザクとルギウスさんが同じ反応をする。


「クレア、まだ目覚めたばかりだろう?」

「大丈夫よ、むしろたくさん眠ったから元気よ」

 彼女は胸の前で両手をグーしながら言う。



「女同士でお話ししたいの。わかってくれる?」

 

 クレアさんは私やシオンさんたちを見て言う。


「・・・わかった。じゃあ俺たちは部屋出るぞ、スザク、ドレーク」

 ルギウスさんが2人を促す。

「ジュリアも目覚めたばかりなんだから無理しないでね」

 とスザクは私に言って部屋の外に向かう。




「あと・・・・」

 ゾっとする空気を放つクレアさん





「盗み聞きなんて趣味の悪いことしたら、ルギウスでも恩人のスザクさん、ドレークさんでも容赦しないわよ?」


 男性陣が震えあがる。


 それはまさにクレアさんが四天王だったことを一瞬で理解できるほどの殺気だった・・・。

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