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46:惨めな願い

「ディーン。ジュリアとシオンはおとなしくなった。戦意もない。だから殺さないでくれ」

「本当に君は優しいね。君の頼みは聞くよ。」

 ディーンはエレンさんに優しく声をかける。



「でも仲間だった彼女たちに敵意を向けるなんて、かなり無理したよね・・。

 あとは僕に任せて、ゆっくりお休み」

 ディーンはエレンさんの頭を撫でる。


「ありがとう。ディーン」



 その光景を見て、羨ましいと思ってしまった。


 勇者によって壊された関係を、魔王によって取り戻した。


 勇者は世界を救う英雄、魔王は世界を滅ぼす悪魔。


 本当にそうなの?


 と思わずにはいられない。



「はあはあ。ふいうちを受けたが、1対1なら相手にもならんな・・・」

「ぐっ。流石だなルギウス。」

「残念だったな魔王。俺の勝ちだ。」


 ルギウスさんが魔王にトドメを刺そうとする。

 彼も肩で息をしている。体力的には限界だろう。




「はあはあ、なかなかの剣術だが、はあ、私の方が上だったみたいだな。」


 ティアさんもボロボロになり、肩で息をしながら言う。

 エリーを圧倒して、シュリを気絶させていた。




 これなら、勝てるかも。


 エレンさんによって戦意を失っている私はそう思った。






 でもその希望は聖母のような声によって絶望となる。



「セイクリッド・ハイヒール」



 マリアさんの回復魔法だ。

 これで私たちの傷は癒えて、勝利は確実に・・・。




 いや違う。




 マリアさんは・・・。





「ルギウス。『俺の勝ち』だったか」

「き、傷が・・・」


 ルギウスさんは満身創痍の身体で魔王を追い詰めていた。しかしマリアさんの回復魔法によって傷が癒えた魔王に抗う体力はない・・・。



「一気に形勢逆転ね」

「くっ、こ、これ以上は・・・」


 エリーとティアさんも構図が逆転して、エリーがティアさんが圧倒していた。


 シュリは気絶していたので傷は癒えているが、意識がまだはっきりしていないのが幸いだった。



 でもティアさんのダメージは重い。気絶しているシュリにまで目覚められたら・・・。




「ぐわあああああ」

 ルギウスさんが魔王の一撃を受けて倒れる。


「ぐっ、立ち上がれん・・・」

「流石ルギウスだ。ふいうちを受けながら、我を一歩手前まで追い詰め、そしてこの攻撃を受けても意識を保つか。」



 そして魔王はマリアさんの方を向いて言う。


「よくやったぞマリア。」

「ありがとうございます。魔王様」

「お前がいなければ、我は負けていた。マリア、感謝するぞ」

「魔王様・・・」


 マリアさんは魔王に完全に『洗脳』されている。



 ・・・私たちの方は一度もみない。





 漆黒の騎士とスザクの対決も決着がついた。




 スザクが飛ばされ、壁に激突する形で・・・・。





「いやあああああスザク」


 私はスザクを見て叫ぶ。




 ルギウスさんが倒され、ティアさんは形勢逆転され、スザクも意識を手放している。




 相手は魔王、ディーン、剣聖のエリー。

 ダメージを与えてもマリアさんが癒し魔法を使う。


 漆黒の騎士もスザクを倒すほどの実力を有している。




 これじゃ、もうどうしようもないよ。




 ―助けて、お願い。





 生きて帰りたい。


 クレアさんとルギウスさんを再会させてあげたい。


 そして、スザクと一緒に生きたい。




 ―助けて、助けて、助けて




 私は惨めにもそう願うことしかできなかった。





 すると、私の持っている緑の石が光った。




 緑の光が当たりを包む。




 そして・・・・
























「おや、ジュリアくん。目覚めたみたいだね。無事で良かったよ。」

 ・・・ドレークさん、なんでここに。

3章でのジュリア視点はこれで終わりです

魔王視点、エレン視点の話を入れて3章は終了となります。

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