43:洗脳の性質
まだまだ暑い日が続きますね。私も土曜日に熱中症で体調を崩したので気をつけて行きましょう・・・。
予約投稿しているので投稿に支障はないです。
魔王の洗脳によって一気に戦況が変化した。
クレアさんの魅了状態は解かれた。
でも剣聖と賢者は魔王に洗脳され魅了状態になった。
そしてマリアさんも魔王に洗脳にされてしまった。
エレンさんは抗っていたものの、ディーンさんを蘇らせた魔王が彼女を陥落させた。
こちらは手負いのルギウスさんに気絶させたクレアさん。
勇者は地べたに這い蹲っている。
戦えるのはスザクとティアさんと私とシオンさん。
でも仲間を魔王に奪われた。
もう戦うことなんて・・・・。
「ジュリア、立ち上がるよ」
シオンさんが言った。
「シオンさん・・・」
「運よく私たちは洗脳されなかった。あのバカ二人の目を覚まさせるよ」
シオンさんが私の肩を叩きながら言った。そして弓を構える。
そうだ。まだ諦めない。
「ありがとうございます。」
彼女の言葉で私は立ち上がる。
それにスザクだって諦めてないのに、私も諦めるわけにはいかない。
だって私は彼の共に成長する存在であるんだもの。
「・・・・これ以上、私は失いたくないの・・・」
シオンさんが呟いた言葉は私の耳には入らなかった。
「『運よく』『目を覚まさせる』、面白いことを言うな。」
魔王が言った。
「何がおかしいの!」
シオンさんは弓を構えながらいう。
「まずそこの格闘戦士の女は我の洗脳にかかっていない。自らの意志でディーンの隣に立つことを決めただけだ。」
魔王がそういうとエレンさんは俯いた。
それを見たディーンさんが彼女の頭を優しくなでる。
「・・・じゃあなんでマリアはあんたに洗脳されて魅了状態になっているのよ!」
「簡単なことだ。我の洗脳は『想い人がいる女』には効かないからだ。」
えっ、今なんて言ったの?
『想い人がいる女』には効かない?
「マリアだって『想い人』はいるはず・・・あっ!?」
シオンさんは自分で言葉にしかけて気づいたのだろう。
彼女の想い人は既に結婚していること。
結婚して手の届かなくなった人を想い続けているはずという残酷なことを口に出そうとしたこと。
既に別の人を想ったり、想い人がいないという状態になってもおかしくない・・・。
「う、マリア・・・」
シオンさんは俯いてしまった。
それよりも私は魔王の言ったことが頭の中でぐるぐるしていた。
―『想い人がいる女』には効かない。
魔王は洗脳は「想い人がいる女」には効かないと確かに言った。
なら私はスザクがいるから効かない。
じゃあ、じゃあ、なんであの時私は・・・
「スザクがいるのに勇者に洗脳されて魅了状態になってしまったの?」
私は倒れている勇者を見て、思わず声を出した。
「それは勇者の魅了状態は『自分が良いと思った女』にしか効かない『性質』だからだ。さっきも言ったが我の魅了状態は『想い人がいる女』には効かない『性質』だ。同じ洗脳能力でも『性質』が違うのだ。」
私の声に答えたのは魔王だった。
「・・・お前と想い人を強制的に引き裂いた勇者が憎くないか?
そして『自分が良いと思った女』を洗脳し、飽きたら捨てた身勝手な勇者が憎くないか?」
勇者の洗脳は「自分が良いと思った女」にだけ効く。
それは私に「想い人」がいようと関係なしに。
私はまんまと洗脳されて、勇者を愛するように魅了状態となってしまった。
そして洗脳を解かれた理由は・・・。
単純に「飽きられた」から。
勇者が「良い女」だと思わなくなったから。
そんな理由だけで、私は勇者に弄ばれたの?
スザクを傷つけたの?
魔王の洗脳の方がマシじゃない。「想い人」がいれば、かからないんですもの。
許せない。勇者が憎い。
・・・倒れている勇者なら私でも殺せるかも。
「ジュリア。魔王の言葉なんか聞くな。」
スザクの叫びを聞いて私はハッとした。
今私はなんてことを思ってしまったのだろう・・・。
スザクが隣にいるのになんてことを・・・。
「お前も被害者だろう。」
「これ以上惑わすな。」
彼は魔王の言葉を書き消すように言った。
「・・・我がエリー達を洗脳して勇者を攻撃した瞬間に戦闘態勢を取り、我のふいうちを喰らったルギウスを助けて、こちらの駒が増えたにも関わらず、お前の闘志が揺るがない。
お前は間違いなく強いな。」
緊張が走る。
「いでよ!」
魔王はそう言うと玉座の前に全身が黒い騎士が現れた。
「さあ漆黒の騎士よ。その魔法剣士をおとなしくさせろ!」
スザクと黒い騎士の戦いが始まった。
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「その魔法剣士は漆黒の騎士に任せるとして・・・」
魔王は私たちの方を向いた。
「手負いのルギウスとその他の女は我達が相手となるぞ」
「・・・魔王がおしゃべりなおかげで、俺も大分回復したぞ」
ルギウスさんが言う。
が、無理をしているのは明らかだ。立っているのがやっとという感じだ。
「手負いでクレアは気絶しているのに、我に挑むとは舐められたものだな」
「クレアはシオンたちに任せている。あいつらは魔法と弓矢で遠距離攻撃が得意だ。
クレアをお前らから距離を離すことで・・・」
殺気がこの場を支配する。
「俺は存分に暴れられるぞ。」
「高ぶるぞ、ルギウス」
「魔王。私を『その他』扱いしたことを後悔させてやるぞ」
ティアさんが剣を抜く。
「剣聖と賢者の相手を頼む。それ以外は俺がやる」
ルギウスさんはティアさんに言う。
こちらの戦える人の数が少ない。一人で複数を相手しないといけない。
「ジュリア、シオン。クレアを守りながら、俺を補助してくれ」
「わかったわ。」
シオンさんがルギウスさんの指示に答えた。
「ジュリア、これ以上『洗脳』よってに大切な人を奪われないために・・・」
シオンさんは覚悟決めたように言う。
「あの二人も倒すわよ」
「わかりました。」
戦況は不利な状態かもしれない。
でも大切な人に戻ってきてほしい。
私は得意の火魔法を唱え始めた。
感想書いてくれる方々ありがとうございます。
返信できてなくて申し訳ありません。
熱中症で体調を崩したのと、返信しようとするとどうしても次話のことについても書いてしまい、ネタバレにもなりそうだったので一旦返信を止めてます。
目は通してます。3章の終わりにまとめて返信いたします。