37:勇者
俺はフォース。
勇者フォースだ。
「勇者様。今夜は誰を・・・」
「もちろん私だよな」
「私も愛してほしいです」
『剣聖』のエリー、『賢者』のシュリ。
そして、元魔族四天王のクレア。
この美しい女性たちは俺の洗脳と呼ばれる能力で魅了状態になっていて俺のことを愛している。
少々『欠陥』はあるが、いい能力だ。
王都に来てから俺にこの能力があることに気づいた。
勇者という名だけに釣られてきて「俺」そのものに興味のない女もこれで従わすことができる。
他人の女を洗脳するのは最高だ。「他人の女」というのは良い女だ。
恋人だろうと夫婦だろうと勇者の俺が洗脳してしまえば俺のものだ。
あわれな男共に俺が勇者だってこと、生きている階級が違うってことを教えてやることができる。
まあ『剣聖』と『賢者』は他人の女ってわけじゃなかったけど、二人共、本当に良い女だ。
そしてクレアはなんと四天王4人目の妻だ。
人外の女だが美しい。最初は種族が違うから正直不安もあったが悪くない。いやむしろ良い。
流石人妻だ。「人」妻って言っていいのかわからないが色気が凄い。
そして俺は「強い」
俺が来た王都にきた翌日に四天王の一人目が襲ってきたが・・・。
あの時は騎士団も壊滅してもうダメかと思ったが、『勇者の奇跡』で俺が倒した。
俺が洗脳して飽きて捨てた女に対して、王都は色々支援しているらしい。
まあやりたい放題やっているし、哀れな男共に恨まれて、暴動とか起こったら大変だしな。
一度神父に口を出されたことがあったが、見捨てるぜっていったら黙った。
それが許されるのは、俺が「強い」からだ。
ただそんな圧倒的に「強い」勇者の俺でも勝てないと相手がいるという。
クレアの夫・・・元夫のルギウスだ。
洗脳されて魅了状態となった女は俺に嘘をつけない。
それに元々クレアは魔族の四天王で俺とも戦っている。俺の戦いでの実力を知った上で、ルギウスに勝てないと言っているのだから俺は勝てないのだろう。
どうにか彼と戦わずして魔界の扉の封印を解く方法はないだろうか考えた。
クレアが言うにはノーランド山にいるという。
そしてノーランド山の魔物の活性化した。ルギウスが俺の送った映像に発狂したのか。
いやクレアを人質にしていると脅したから大丈夫なはずだ・・・。
俺がわざわざ洗脳したという情報を与えて、おとなしくしてくれていたら考えてやると伝えた。きっとおとなしくしているはずだ。
・・・まあ「考える」なんだけどな。
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ある日、ギルドからノーランド山の調査に一緒に来てほしいと頼まれた。
・・・別に怖いわけじゃねえが俺は調査を拒否した。
人質のクレアを盾にして倒すことも考えた。
でももしそんな盾をもろともせず俺を殺しに来たら?
俺は死ぬ。
だから俺は拒否をした。もしものことを考えたら当然だ。
勇者である俺は死んではならないからな。
すると色々とうるさいギルド副マスターのティアが『勇者様もそんなものか』と言った。かなりイラっときたがその場は引いた。
ティアも洗脳して俺の駒としたいが、故郷の『あの女』と似た容姿をしている。そのせいと能力の『欠陥』のせいで上手くティアを洗脳することができない。
だから俺は勇者であるにも関わらず、わざわざティアに媚びを売った。
優しくボディタッチをしながら『髪色を俺好みに変えてほしい』と囁いた。そうしたら洗脳できるかもしれない。
だがティアは鋭い眼光で俺を睨んだ。そしてあろうことか『気持ち悪い』と呟きやがった。
勇者である俺が優しくしてやってるのにこの女・・・。
この女の良い所はあの大きな胸だけで、性格、見た目は最悪だな。
それに勇者であるこの俺に、女の癖に剣術は負けてない。非常に腹が立つ。
しばらくするとティアは最近名を上げているスザクってやつとノーランド山に調査に行ったらしい。
このスザクって男はティアとよく一緒にいるらしい。性格は最悪なのによく一緒にいることができるな。
女運がないのか、大きな胸に誘われたのか。
その山には俺より強い四天王がいるわけだがせいぜい死ぬなよ。
まあこの勇者様を守れると考えたら名誉なことか。
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ノーランド山の魔物は不活化した。
それはティアとスザクってやつが抑え込んだからだという。四天王はいなかったらしい。
どういうことだ。ルギウスはいなかったのか。
俺の洗脳によって魅了状態となっているクレアは嘘をつかないはず・・・。
じゃあなんで不活化したんだ。
魔物が活性化したのは、俺に妻を取られたルギウスの哀れな行動じゃないのか?
クレアがルギウスの居場所をノーランド山と勘違いしている。その可能性もある。
実は今回の魔物の活性化はルギウスが関係ない。その可能性もある。
不活化したのはルギウスが死んだから・・・という可能性は、封印が解かれてないからないと思う。
ルギウスが今どうなっているのかがわからない。
クレアを人質にして倒しに行くことも考えた。ただ彼女は極上の女だ。手放すには勿体無い。
ルギウスも早く心折れて封印を解いちまえよ。
ってまあ、しばらく待ってくれると嬉しいなと言ったのも俺だがな。
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「おや」
いつものようにエリー、シュリ、クレアの3人と過ごしているとクレアが言った。
「魔界の扉の封印が、解除されているようですね。・・・ただルギウスは死んでないようです。」
やっと心が折れたな。
俺の言う通りにしたからあの約束を果たそう。
クレアを解放すること・・・を考える。
考えた結果、強いし、美しいし、今はルギウスとか関係なしにそばに置いておきたい女だという結論になった。
考えたから嘘は言ってないし、ちゃんと約束も守ったぞ。
「じゃあ行くか。お前たち」
俺は早速立ち上がる。
3人の女が名残惜しそうに俺を見る。
「大丈夫だ。魔王をサッサと倒したら、お前たちを妻にしてやる。」
この能力に気づいたときはたくさんの女を洗脳した。そして洗脳を解いた女もいた。
今はこの3人以外を洗脳してない。それ以外の女はいらないからだ。
お前ら3人はこの勇者に選ばれた最高の女だ。
「「「はい」」」
最高の女と魔王討伐の最高の名誉を得て、俺は英雄としてこの王都を支配する。
早速俺たちは魔界の扉があるという南の遺跡に向かった。
ここで2章が終了です。
3章は9月から再開予定です。