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36:魔王

 我は魔王。


 魔族を統べるもの。


 だが我は弱い。


 これでは、また歴史が繰り返される。


 勇者に魔王が敗れるという歴史が。


 人族は個々の力は我々魔族よりも劣る。


 なのに我々は人族に勝てない。


 なぜだ。それは簡単だ。


 人族は「団結」をすると非常に強い。


 仮に魔王VS勇者という構図なら魔王が勝利していた歴史もあるだろう


 でも、魔王VS勇者、賢者、剣聖・・・そして彼らの背景には彼らが愛する同族たち。


 というように人族は挑んできた。


 虫が一匹増えたところでって言ってきたやつもいるだろう。


 でも、その「一匹」が増えたことで人族は何倍もの力を出す。


 そうやって「団結」することで勝利してきた。


 人族は普段から「団結」して助け合いながら生活し、愛し合い、命をつなぐ。


 ならその「団結」を崩壊させてしまえば、我でも勝てる。


 我は弱い。


 ただ、もう策は打った。


 駒もそろえている。


 勇者の名のもと「団結」し、我々に勝利してきた人族。


 その「団結」を勇者が原因で、崩壊させたらどうなるだろうか。







「魔王よ。話がある。」


 この声はルギウス。


 魔族最強の実力を持つ戦士。


 これほどの戦士が我に従うのはなぜか。


 我が魔王。


 それだけのこと。実力など関係ない。


「戻ってきたのか、ルギウスよ。」

「時間はない。早速これを見てくれ。」


 ルギウスが見せた水晶玉の映像に、我は高ぶる。


「クレアが勇者に洗脳されてしまった。洗脳を解く方法を知りたい。」


 高ぶる。


「魔王なら洗脳を解くことをできるよな。」

「ああできるとも」

「よし。これでクレアを救える。」


 高ぶる気持ちを抑えて、我はルギウスに問う。


「魔界の扉の封印はどうしたのだ。」


 ルギウスは黙る。

 そして覚悟を決めたように言う。


「勇気ある人間に封印の珠を渡した。俺を倒そうとした人間だ。そしてクレアを取り戻すことに協力をしてくれる人間だ。」


 ルギウスは続ける。


「俺が生きている限りクレアは人質だ、死ぬことはない。生きている状態でクレアを魔王のいるここに呼び出すためには俺が生きている状態で魔界の封印を解かなければならなかった。」


「だとしてもお前がここに戻ってくる必要はなかろう。お前が封印の珠を砕いて封印を解けば、勇者はここにきただろう?」


 我はあえて、愚問をした。


「・・・・あの勇者は封印が解かれたことに感づいても素直に魔界に行くとは思えない。クレアを盾に俺を抹殺しにくるかもしれない。俺が死んだら人質のクレアの命の保証はない。」


 高ぶる。


「仮に勇者が俺に目もくれずに魔界に行ったとしても、クレアが洗脳されていることに気づかずに魔王が『裏切り者』として殺してしまうかもしれない。」


 良い顔だ。


 色々考えたのだな、ルギウスよ。


「だから俺はわざわざ時間をかけて、勇者やクレアに気づかれないように魔力を抑えて魔界への扉を作り戻ってきた。そして魔王にクレアの事情を説明する時間が欲しかった。・・・・俺はどんなことをしても絶対にクレアを失いたくない。」


 これほどの戦士の絶望する顔はなかなか拝めない。高ぶる。


「ここまでは俺の作戦は成功だ。人間たちも俺を信用してくれて珠を破壊せずにいてくれた」


 ルギウスには時間が必要だった。


 魔界への扉をクレアに感づかれず作る時間。


 この我にクレアが洗脳されていることを説明する時間。


 そして我を説得する時間。



 それをクレアの安全を確実に確保しながら、クレアをここに誘導するように、回りくどいやり方をしなければならなかった。



 全ては「人質」であるクレアを洗脳から「安全」に解放するために・・・。

 お前のクレアに対する愛は本物だ。




 ・・・我も洗脳を使えるから、洗脳されて魅了状態にかかっているものとそうでないものの見分けはできるがな。

 

 まあそんなことはルギウスからしたらわからないことだ。


 我へ事情を話して、クレアが洗脳されていることを証明しに来るのは、わかる行動だ。




「俺は、俺を信用してくれた人間の心に応えなければならない。」


 ルギウスの空気が変わる。


「クレアの洗脳を解いて、俺が勇者を殺したら・・・」


 高ぶる。


「今後人間に干渉するのはやめてもらおう。」


 良い目だなルギウス。


「ああ、いいだろう。」



 なあルギウスよ。












 我は真顔で言えていたか?

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