3:最強勇者
魔王が復活したと予言された。
そして、その予言と同時に新たな勇者が選ばれた。
その名は「フォース」
フォースはとある村に住む青年らしい。
王都は早速、彼を招くことにした。
彼が王都に訪れたその翌日、
魔王の四天王を名乗る魔族が王都現れた。
その力は圧倒的で王都の精鋭の騎士団が壊滅状態。
勇者も昨日王都にきたばかりで、少し前までは村に住んでいたただの青年。
恐らく剣もまともに握ったことはないだろう。
せっかく人類の希望の勇者が王都にきたのに、もうダメかと誰もが覚悟をした
フォースは一人の兵士の剣を借りて魔族に立ち向かった。
相手は騎士団を圧倒する力を持つ四天王。
こちらはいわば勇者になりたての「赤子」の勇者。
装備も一般的な兵士に与えられるただの剣。
ただ結末は誰もが予想しない結末となった
・・・勇者の勝利であったからだ。
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「勇者は精鋭の騎士団を圧倒した魔族に対して、戦闘訓練を受けていないにも関わらず、ただの剣で勝利してみせたのです。」
神父の話によるとフォースは勇者の資質だけで魔族の四天王を圧倒したとのことだった。
「スキル鑑定して洗脳のスキルを持っていることが発覚したときも、勇者は動揺もせず、わたしにこう言いました。」
―『あー洗脳とか魅了がばれちまったか。まあ旅から帰ってくるごとに女を連れて帰れば何か異変に気付くよなぁ。』
―『まあでも洗脳はやめないぜ。もし洗脳の能力を封印するっていうなら・・・お前らを見捨ててもいいんだぜ。』
「ひどい・・・ひどすぎる・・・」
私は思わず声に漏らす。
マリアさんは嗚咽が漏れている。
「勇者は確かに強いです。旅する先々で人々から魔族の脅威から救っているのも事実です。そしてこの前は魔族の四天王の2匹目を倒したそうです。」
間違いなく人類最高戦力で英雄ある勇者。
その勇者に見捨てられたら間違いなく魔族に支配される。
今後このような被害を拡げてはいけない。
ただそれをしようとすると、勇者に見捨てられ魔族によって国自体が危ぶまれる。
ということを私でも理解できる。
理解したといっても納得はできてないけど・・・。
「強いからって・・・何をしてもいいっていうの?」
声を上げたのはシオンさんだ。
私もそう思う。
確かに勇者は英雄だと思う。
魔族から世界を救っている。
けど私たちの平和な日常を壊していった。
・・・やっぱり納得できない。
シオンさんの言葉に神父様も返す言葉がないのだろうか、沈黙してしまった。
重苦しい空気が流れる・・・。
「シオン。言っても仕方ない。この勇者は私たちじゃあどうしようもない化け物なんだよ・・・」
エレンさんがシオンさんを諭すようにいった。
「エ、エレン。そうだけど・・・そうだけど・・・」
そして彼女は神父様に向かって言った。
「あんたらにも事情があったんだな・・・。変なことを聞いてすまなかった。」
「いいえエレンさん、謝らないでください。」
安堵した声で、神父様は言った。
彼は洗脳された女性に事情を説明しなければならない。
場合によっては、こういう重苦しい空気にもなるだろう。
だがこの空気を変えようとして・・・。
―『誠心誠意、謝れば許されます。』
―『事情を話せば、元に戻れます。』
なんて無責任な言葉を言うことはできない。
許されなかった、元に戻れなかった女性が彼の元に再び訪れているという事実があるから。
それを彼自身が一番わかっているから。
きっとこの重苦しい空気になるたびに、彼は心の中で頭を抱えたのだろう。
だが今回はその空気を変えてくれたのは、被害者であるはずのエレンさんだった。
まさか助け舟に、神父様も安堵されたのだと私は思った。
「今回の元凶である勇者をどうすることはできませんができる限りの補償を致します。『元に戻る』ように最大限の協力もいたします。そしてもしも・・・」
神父様はうつむき、言葉を紡いだ。
そして顔上げて言った。
「もしも『元に戻れなかった』ら、私たちが新たな人生を歩めるように最大限協力することを約束します。」