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28:冒険者生活

 ― 勇者に復讐する。


 そう決意してしばらく経った。

 私たちは様々な討伐依頼をこなしていった。



 モック村南の森でポイズンバタフライのような高レベルの魔物が各地で出て、それを討伐してほしいという依頼が増えていた。

 また素材採取の依頼でも、高レベルの魔物と遭遇することが増えていた。



 私たちはその魔物を次々と討伐していった。



 沢山の討伐依頼をこなしたおかげか、エレンさんはゴールド級の冒険者として認められていた。



 マリアさんは「私戦闘向けじゃないけど大丈夫かしら」と言っていたが杞憂だった。


 マリアさんの癒しの能力は凄かった。傷はすぐ癒えるし、心地良い。

 アンデッド系のモンスターと戦うときは、マリアさんが癒しの魔法をかけるだけで一気に消滅したこともあった。


 私もエレンさんの拳に魔力をまとわすだけでなく、シオンさんの矢にも魔力をまとわすことができるようになっていた。



 近接戦闘のエレンさん、弓矢での援護射撃や気配察知で補助するシオンさん、補助&癒し系の能力のマリアさん、そして魔法攻撃で敵を一掃する私。

 ワカバさんが言うにはバランスがいいパーティとのことだった。




 最近は、仲間の能力を自分も使うことができるかも試していた。

 例えば、マリアさんの補助魔法の一つの攻撃力を一時的に上げる補助魔法を、エレンさんが自分自身にかけるために使えないか。


 というのことを試していた。



 これが意外と噛み合い、エレンさんはその補助魔法を使えるようになった。


 シオンさんや私も初級の癒し魔法を使えるようになったり、マリアさんは中級レベルの水攻撃魔法を使えるようになったりした。


 これは勇者と交わったことで得たかもしれないスキル以外についても、自分自身で努力すれば少しは使えるようになる。

 ということを証明したかったというのが始めた動機だけども・・・。


 結果的には個々でやれることが広がったので、パーティとしての戦術に柔軟性が出たので良かったんだと思う。



 このように王都に来てからの冒険者生活は順調だ。




 でも『彼』とはまだ会えてない。

 彼は忙しい。そして私が王都に来ていることも知らせたわけでもない。

 

 ―きっとギルドで会える。

 

 真っ先に会いたいはずなのに『偶然』に期待している。

 そんな矛盾を心に抱えながら・・・。






 ***********






「ふう。まさかキングタイガーとダークエレファントが同時に出てくるとはな・・・」

「本当に想定外でしたが、どうにかなりましたね。」


 マリアさんの言う通り想定外だった。

 けれど仲間と力を合わせればどうってことない敵だった。


「それにしてもジュリアは魔力をまとった矢を放つときって気持ちいいわ。『ファイアーアロー!』なんてね。」

「それはわかるぞシオン。私も拳に魔力が宿ったときに『ビックバン・ファイアーブロー』とか『ビックバン・アイスブロー』とかいうの気持ちいもんだ。」

「思ったんだけど、エレンってなんで『ビックバン』ってつけるの?ポイズンバタフライ戦もそうだったけど」

「ダ、ダメかシオン?」

 不安そうにエレンさんは尋ねる。


「私はビックバン、好きですよ。エレンさん」

 私はエレンさんをからかう。

「ジュリア。バカにしているなー」

「私もこの杖でぶん殴れるようになろうと思います。私もジュリアの魔力をまとって気持ちよくなりたいです。」

「マリア、癒やし手とは思えない物騒な発言していることに気づいてね」

 シオンさんが冷静にツッコむ。


「冗談ですよ。さあ早速ギルドに成功の報告をしましょう。」


 私たちはギルドへと足を運んだ。






「確認完了です。それにしてもよくキングタイガーと一緒にダークエレファントも討伐できましたね、凄いです。」


 いつもの素敵な笑顔でワカバさんが言う。


「本当、ワカバの言う通りだ。」


 そう言ったのはティアさんだ。相変わらず色々と大きい。



「精力的に依頼を受けてくれて助かるよ。」

「じゃあティアさん、あの調査の件、加えてくれるか」


 エレンさんがティアさんに言った。


「君たちからこの調査に加わりたいと言ったときは少し驚いたけど・・・。この短期間でかなり成長しているしいけるな・・・」

「ほ、本当か」


 このノーランド山の調査で四天王の4人目を討伐して、魔王の情報を得る。


 そして勇者より、先に魔王倒す。


 ・・・相変わらず勇者はこの調査にはいきたがらない。なぜかは知らないけど、これはチャンスだ。





 ふと私は思い出す。



 ―『あ、俺はノーランド山にはいかねえよ』

 ―『ティアさんとスザクってやつが調査不足のせいで四天王4人目が姿を隠しちまったんだろ。なら当事者が責任もって蹴りつけろよな。』


 勇者がティアさんに言いたい放題の光景を思い出す。



 そして別の討伐依頼にいった勇者。



 私たちのすぐ横を通り・・・



 ―『君たちが最近名を上げている女性冒険者だね。頑張ってね』



 何事もなかったように紳士を装って話しかけて、通り過ぎていった。


 エレンさんが怒り込めて呟いた。


 ―『・・・飽きて捨てた女なんか眼中にないってわけか』





 ・・・少し嫌なことを思い出してしまった。







「早速この件について説明したいところだけど・・・。少しギルドのテーブルに座って待っていてほしい。残っている仕事を片付けてくるよ」



 遂にこの依頼に加えてもらえる。これで私たちの目的に一歩近づく。

 私たちは言われた通りにギルドにあるテーブルに待つことにした。




「エレンさん、まずは第一目標達成ですね!」

「ああ。やっと土俵に立てた。これからも頑張っていくぞ」


 エレンさんが言うことに私たちは頷く。





「ちょっといいかい氷の魔術師ちゃん」






 突然、軽薄な声が私のことを呼んだ。

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