24:氷の魔術師
エレンさんのスザクに関する話をまとめると・・・。
スザクは王都の冒険者の間では有名らしい。
ティアさんに連れられ、冒険者登録する。そして彼は見事に実力を発揮していった。
ほぼ同時期に冒険者になったエレンさんたちも凄いスピードで成長していったが、それ以上にスザクはすさまじいスピードで成長していったらしい。
勇者パーティが三人目の四天王を倒しに行ってる間に、ドラゴン討伐の依頼が出たとのこと。
本来は勇者も呼びたいが、タイミングが悪く居なかった。ギルドの数少ないゴールド冒険者とティアさんとスザクで行ったらしい。
そこでスザクは大活躍だったらしい。
勇者パーティが三人目の四天王を倒して王都帰還した後、王都から北にあるノーランド山の魔物が活発化したらしい。
四天王を倒したタイミングでその山が活発化したので、念のため勇者に調査を依頼したが『疲れている』とか『パーティメンバーを愛さないといけない』とか言って行かなかったそうだ。
そこでスザクは「自分が行きます」と言って、ティアさんと二人で調査に行ったらしい。その結果ノーランド山の魔物は不活化したそうだ。
不活化したのに勇者は「そこに四天王4人目がいるんじゃないか?ちゃんと調べたのか?」とティアさんたちに言ったそうだ。
勇者がそんなことを言うので邪険に扱うことはできない。今度はもう少し人数を募って、改めてノーランド山に調査に向かうことだそうだ。
・・・ただなかなか人数が集まりそうにないとのことだ。
勇者の「四天王がいる」という発言、そして肝心の勇者は行く意志を見せない。
不穏な部分が多いためか人は集まらない。
またこの調査に参加するためには、ギルドマスターとティアさんによる参加審査もあるらしい。なぜだろうか?
スザクの話に戻すと、こうやって短期間で大きな活躍すると、天狗になる冒険者もいるらしい。
しかし彼はとても謙虚でとても人当りもよく優しいらしい。
エレンさんの話を聞いて、私はにやけが止まらなかった。
「流石スザク」と誇らしくなった。
別に今は恋人同士ではない。
だから胸の大きくて色気のある金髪美女のティアさんとよく一緒に行動していることは気にしてはいけない。
「いやあ・・・まさか、あのスザクとジュリアにそんな関係があるなんてな」
エレンさんは驚く。
「顔がにやけているわよ」
シオンさんが指摘する。にやけてばかりもいられない。
「スザクは凄い成長している。私も頑張らないと。だからこれからもよろしくお願いします。エレンさん、シオンさん」
これは私の決意表明。頼れる仲間と私は頑張る。
「何?ジュリア改まっちゃって。うふふよろしくね」
「冒険者の姉貴分として頼ってくれよな」
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行商人さんとの馬車の旅は順調だった。
魔物が出たときは冒険者である私たちで対処する。所謂用心棒だ。
行商人さんは私たちの移動を助ける。そうやって助け合っているそうだ。
そうして私たちは王都についた。
身体が震える。
「大丈夫だ。ジュリア。」
「そうよ。今は私たちがいるわ。」
私は忌まわしい過去を乗り越えるために、スザクと共に成長するために来たんだ。
あの勇者との記憶ごときに負けるわけにはいかない。
「大丈夫です。行きましょう」
私は一歩を踏み出した。
まず向かったのはギルドだ。
依頼の失敗とポイズンバタフライが出たことを報告しないといけない。
「依頼失敗は残念ですが、まさかあの森にポイズンバタフライがでるとは思いませんでした。」
受付の女性の人は深刻そうに言った。
「・・・とにかくよく生きて帰ってこれましたね。流石彗星のごとく現れた美女コンビですね」
「いえワカバさん。今回は私たち二人ではなく、ここにいるジュリアを含め三人で討伐しました」
エレンさんはワカバさんと呼ばれた受付の女性に言う。
「は、はじめまして。モック村から来たジュリアです。よろしくお願いします。」
私はあいさつする。
するとワカバさんから予想外もしない言葉が返ってきた。
「モック村・・・。もしかしてあなたが噂のモック村の『氷の魔術師』ですか?」
「えっ!?どういうことですか」
私は思わず驚いてしまう。
「モック村南の森の依頼で、助っ人としてついてきた魔術師がちょっとしたこと氷漬けにするって噂です。」
「ち、違います!」
私はきちんと説明した。
軽薄そうな男が触ってきたから。
この依頼に成功したら俺のものになれという男がいたから。
私のことを「まな板」って呼んだ男がいたから。
ちゃんと理由があって氷漬けにしたことを説明した。
「だからワカバさん。私はちょっとしたことで氷漬けにはしません。それに私は火の魔法の方が得意です。」
バンっと受付の机をたたきながら私は言った。
「うふふ。面白い人ですね。わかっていますよ。」
ワカバさんは笑顔で言った。素敵な笑顔だ。
「それでジュリアさん。冒険者登録をしに来たんですよね。」
これに記入してくださいとワカバさんは私に紙を渡した。
必要事項を記入して、彼女に返す。
これで私も冒険者だ。
「はい。登録完了です。これがギルドカードです。無くさないでくださいね。」
「ありがとうございます。」
「良かったな。ジュリア。あっワカバさん、パーティはもちろん私のパーティだ」
「はい。」
これで正式にエレンさんのパーティの一員だ。なんだかうれしい。
「あっ、エレンさん。ポイズンバタフライを倒したあなたたちに言っておくことがあります。」
ワカバさんの顔が真剣になった。
「ここ最近各地でモック村南の森にポイズンバタフライが出たように、高レベルの魔物があちらこちらに出るようになっているそうです。なので今後依頼を受注するときは最大限の準備をしていくようにしてください。」
「ああ」
「そして、今後この魔物たちの討伐依頼も増えてくることでしょう。その時はご協力お願いいたします。」
こうして私たちはギルドを出た。
「さて、ポイズンバタフライのことを早く報告しないといけなかったから最初にギルドにきたが、次は私たちが住んでいる場所にいくぞ!」
ふう。重い荷物からようやく解放されそうだ。