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18:二人の意志

1章ラストです。

 目の前には明日王都に旅立つスザクがいた。


 会いたかった、私が探していた人。


 けどなんて声をかければいいんだろう・・・。



「探したよジュリア」


 優しい声でスザクは言った。


「わ、わたしも・・・」



 突然、彼は私を抱きしめる。

 ビックリした。




 けれど・・・





「身体が震えているよ・・・」

「ご、ごめん・・・」


 というとスザクは私から離れる。


「い、いやじゃないの」


 震えていることを指摘して誤解されたかもしれない。決して嫌じゃない。



「違うんだ・・・・」

「スザク?」

「僕はまだ弱いみたいだ。」



 私は思った。


 もしかしたら彼が王都に行くのは、私と決別するためなのかもしれない。




 でも逃げてはいけない。

 これが彼との時間が最後だとしても。



「君とまともに向き合うこともできない。」



 その原因は私があなたの心を傷つけたから。



「だから僕は王都に行って変わるんだ。」



 スザクは過去と決別するんだね。

 その決意、つらいけど、私は後押しするよ。



「うん、頑張ってね。」


 精一杯の笑顔で後押しする。


「ありがとう」


 本当はもっと言ってほしかった「ありがとう」



 優しいスザクは、私がご飯を作ったら言ってくれる。

 夫婦になってもいつも「ありがとう」って言ってくれる。

 でも、これがきっと・・・最後のありがとう。





 そんなことを考え、私の頬には涙が流れる。










「僕が自分の過去を乗り越えられるくらい強くなったら、また君を迎えに行くから。」


「えっ」


 思わぬ言葉に、私は反応する。


「僕は甘えていたのかもしれない。君の近くで過ごせば、この過去を乗り越えられると思っていた。

 でも現実は、君を避けて、君が努力していることも知っていながらそれに応えることすらできない」


「違う・・・」


「違わないよ。僕はジュリアの優しさ、そして故郷に甘えていたんだ」


 私だって、そうなのに。


「だから僕は変わるんだ。甘えられない場に自分の身を置いて強くなる。強くなるそれまで・・・」

「私、待つから」


 スザクが言うその前に私が言った。


「ジュリア・・・」

「私も一緒に過去を乗り越える。私も勇者によって壊されたものが戻ってきて、『恋人関係』も一緒にいれば戻ってくると思ってた。私も甘えていたの。」

「そんな、ジュリアは頑張って・・・」

「違うの。私は洗脳から解かれてここへ帰ってくる時もある人(エレンさん)に背中を押してもらった。あなたの隣に立つために強くなるのだって、結局はただただあなたの背中を追っていただけだった。」



 私は自分の想いを彼にぶつける。



「私だってあなたと一緒に成長する存在でありたいの!」


 スザクは過去を乗り越えるために王都へ行って強くなる。

 これは彼の意志だ。



 彼の背中を追うだけじゃない。共に成長したい。

 これは私の意志だ。



「だから一緒に頑張ろう。離れ離れになっても。」


 私は右手を差し出す。

 本当は抱きしめてもらいたいけど、握手ならきっとできるよね。


 彼は少しどぎまぎしながらも私の手を握る。


 私は少し懐かしい気持ちになっていた。


 昔にお互いの想いを打ち明けたあと、初めて手をつないだ時もこんな感じだったよね・・・。



 






 翌日、彼は王都に旅立っていった。










 そして私も・・・・。









「村長さん、昨日は申し訳ありませんでした。」


「ジュリアか。」


「私に魔法の修行をつけてください。」




 私も待つだけじゃダメ。





「ふむ、いい目じゃな。いいじゃろう、厳しくいくぞ」



 私も彼と同じ土俵に立つために努力するんだ。

二人が再び離れ離れになったところで第1章は終了です。


国がちゃんと説明をしてくれなかった等の自分たちではどうしようもないことが原因で離れたわけじゃなくて、関係者の考えや行動の結果によって離れ離れになったわけなので、他の類似作品と比べても優しい感じで物語が進んでいると思います。


その分スカっとしたい人にとっては満足できない流れになっているかもしれません。

※一応最初からタグに「ざまぁ無」としているので大丈夫だと思いますが・・・。



まだまだ物語も序盤ですが、よろしくお願いします。


第2章ですが、8月から開始です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二人を語るのもなんか野暮なのでただ思わずポイントを入れるほど良かったです。 [一言] 第2章楽しみにしております。
[良い点] 誤解はなく、和解も叶ったのだから、無理して再び付き合う必要はありませんし、付き合わなくとも何ら恥じることもないでしょう。 その上で乗り越えることを目指せる二人は立派。 [気になる点] 勇者…
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