15:意外な才能
「お願いします。村長さん」
まず私は魔力が出力できるか試した。
すると簡単に魔力を出力することはできた。
「ほう、確かに小さいころから少し魔力はあると思っていたが、王都に行っている間に何かあったのかのう・・・」
それはあり得ない。クズみたいな男と交わっていただけだもの。
「それじゃ、初級魔法でも出してみるか」
まずはファイアボールという火属性の初級魔法を出すことになった。
スザクは属性の魔力を出力することはできたが、それを攻撃の魔法してファイアボールとして出力することができなかったそうだ。
スザクができなかったことを私ができるの・・・?
いや、スザクができなかったからこそ、私ができるようになる。
私はスザクにとって必要な存在でありたい。
「イメージをするのじゃ。地面に書いた的に向かってファイアボールを撃つのじゃ!」
「イメージ・・・イメージ・・・」
村長さんの言葉を口に出して、私は叫ぶ。
「ファイアボール!」
すると、私の指から火の玉が出てきた。
そしてその玉が的に向かっていき・・・。
とても大きな火柱を建てた。
「えっ、これが初級魔法なの?」
「いやこれはファイアピラー。上級魔法じゃ」
「えっ、ってえええ?」
「まさかジュリアにそんな才能があるとはのう・・・」
私、魔法の才能あるんだ。
「これでスザクの隣に立てるんだ。」
私は自分の才に感謝しながら、呟く。
「ジュ、ジュリアよ。才能はあるがまだまだ『出力制御』に問題あるみたいじゃ」
村長さんが慌てたように私に声をかける。『出力制御』ってなんだろう。
「もしものことを考えて、外で試して良かったわい。家の中でやっていたら大火事じゃったわ・・・。」
「あ、村長さん。ごめんなさい」
初級魔法だと思って出したものが、危うく一大事になるくらいで魔法を出力してしまったんだ。
「いや、いいんじゃよ。それよりも・・・・」
村長さんは一呼吸おいて言った。
「お前の魔法で村人が集まってしまったのう・・・。まあ火柱が立てば当然じゃがな。
まずは問題ないことを説明してくるかのう」
村長さんはそう言って集まってきた村の人に説明しにいった。
「さて、ジュリアよ。お前には魔法の才能があるようじゃ。まさかここまでの才能があるとは思わなかったがのー。」
さっきは本当に危なかった。文字通り、村を大炎上させるところだった。
「まずは『出力制御』から教えるとするかの」
村長さん曰く、本当は初級魔法から徐々に教えていくつもりだったらしいけど。
私はなぜだが上級魔法を出せてしまった。
だから魔力の『出力制御』をすれば初級魔法も出せる。
「それに自分の力を上手く制御できない状況でスザクの隣に立ったら・・・」
「スザクが危ない・・・」
スザクの隣に立つ私が、彼のとって一番危ない存在ではいけない。
だからしっかり制御できるようになってみせる。
そして彼の隣に立つんだ。
「スザクの隣に立つの・・・」
自分に言い聞かせるように私は呟いた。
*********
それから私は村長さんとの修行に明け暮れた。
最初のころは制御が上手くいかなくて文字通りの大炎上させかけたけど。
制御が上手くいくようになったら、他の属性の魔法が出せるか試した。
氷、風、水・・・。
幸いなことに私は火属性以外の魔法も出すことができた。
「まさかこれほど適正があるとはのう。でもそれじゃったらこのワシがもっと早くに・・・」
「村長さん、雷魔法も出せるみたいです。」
バチバチと魔力を出力させる。
「それは凄いのう・・・。」
「これでもう私、スザクの隣に立てますよね?」
沢山の上級魔法も出せるようになった。
魔法の出力も制御できるようになって今では狙ったところに初級、上級魔法を打ち分けることも容易だ。
「うむ・・・実力的には問題ないぞ。」
「やった。」
なら早速彼に頼み込んでみよう。
「ジュリアよ。スザクのことも考えてな・・・。」
「えっ、はい。わかりました。」
これで彼の役に立てる。彼の隣にいる資格がある。
そして一から恋人関係を築き上げるんだ。
そのことばかりを考えていたからかな。
村長さんの言葉をよく理解せずに返事をしていた。




