14:隣に立つために
前半は村長さん視点
後半はジュリア視点に戻ります。
スザクが帰った後、レオンハルトはワシと話がしたいと言った。
『なにかのう』
『・・・あなたは若いころ相当な実力をお持ちでしたよね。』
『はてなんのことかのう』
『村の人は誤魔化せても私は誤魔化せませんよ。あなたはかなりの魔力を有している』
『一流の騎士はやはり誤魔化せぬか。それでワシになにか。』
『スザクのことです。彼はかなり強くなりましたがまだ足りない。そこであなたの力で彼を強くしてほしい。』
『ほほほ、ワシは剣術は使えんのじゃがな』
『魔術の修行で構いません。』
正直レオンハルトのお願いにワシは困った。
剣術を高めることはできない。
そしてスザクに魔術の才能があるとも限らない。
『スザクに魔術の才能がなければ、無駄だと思うのじゃが・・・』
『俺はスザクに剣術だけでなく、戦いの心得も教えたつもりです。その教えを真に理解していれば、才能がなくとも彼は無駄にしないはず。だからどうかお願いしたい』
『そこまで言うなら引き受けよう』
レオンハルトにどういった意図があるかわからないが、ワシは引き受けることにした。
そしてレオンハルトが王都へ帰る日がきた。ワシとスザクは彼を村の出口まで送った。
『スザクよ。よくぞ俺の修行についてきた。お前の「覚悟」は本物だった。』
『ありがとうございます。』
『・・・俺も向き合わないとな。』
レオンハルトが呟いたことの意味が分からず、ワシとスザクは目を合わせた。
『スザクよ。今後も期待しているぞ。』
『はい、ありがとうございました。』
こうしてレオンハルトは王都へ帰っていった。
***********
知らなかった。
私と別れていた1年間、スザクがそういうことをしていたなんて。
私を取り戻すために強くなるという『覚悟』があったこと。
ついでに村長さんが実は魔術を使えること。
「ワシもスザクに魔術を教えた。だが正直、才能というか適性がなかった。」
スザクは魔力を出力することができたが、それを「攻撃魔法」として変換することができなかったらしい。
「正直ワシは無駄だと思ったが、レオンハルトの言うことを信じて教え続けた。」
しかし何度やっても攻撃魔法を出すことはできなかったそうだ。
「そうしたらな、スザクはそれを剣術に活かしてみせた。」
スザクは魔力を攻撃魔法に変換することができなかった。
彼は「攻撃する」という手段を剣にして、出力した魔力をその剣にまとわせて攻撃する。ということを思いついたそうだ。
「スザクは南の森を探索して素材を採取できるようになった。定期的に訪れる騎士団に綿などの南の森で採取した素材を渡した。」
すごい、すごいよスザク。
しっかり期待に応えているよ。
でも私と距離がどんどん離れていくことを実感する。
私は何も努力もせず、まるで娼婦のようにただただ勇者と交わっていただけ・・・・。
「じゃが、ワシもレオンハルトも教えられなかったことがある。それは『命を惜しい』という気持ちじゃ」
・・・村長さんは言ってた。
『強さに対する執着。そのためなら命すら惜しくない覚悟に恐れを抱いた。』って・・・。
私は彼に命を惜しいと思ってほしい。
強さのために命を捨てないでほしい。
そして叶うことなら私と一緒に命を育んでいってほしい。
「スザクが自分の命の価値を真に理解させる存在。それはジュリア、お前じゃ」
「えっ、私ですか?」
「お前が隣に立てば、スザクも考えるはずじゃ。でも今のお前じゃ彼の隣には立てない。」
そうだ。私は戦うことができない。
あの時は「足を引っ張らない」って言ったけど、きっと彼の足枷になる。
やっぱりわたしがスザクの隣に立つ資格なんて・・・
「そこでお前に提案がある。」
村長さんが真剣な目で私を見る。
「このワシから魔術を教わってみないか。」
「え?」
「お前も戦える力がつけば『足手まとい』じゃなくなるだろう、どうじゃ?」
もし魔法を使うことができたら・・・。
森でスザクの死角から襲う魔物を倒せるかもしれない。
魔物に襲われて負った彼の傷を癒すことができるかもしれない。
彼の役に立てたら私を必要としてくれる。
なら私の答えは一つだ。
「お願いします。村長さん!」
スザクの隣に立つために私は強くなる。私も彼の隣に立つために努力をするんだ。




