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倒すべき相手

ティア視点です。

 ジュリアは私の大切な仲間。


 洗脳された彼女を救うのは仲間として当然だ。





 ・・・なのに私はなんて言った?






 ―『救ってやる。』

 ―『倒してやる。』




 倒す?

 なぜ倒す必要が・・・。




 ―『可愛い仲間だ。救ってみせる。』



 そうだ、私はジュリアを救う。



 私が「倒す」なんて言うはずがない。

 そんなことなんて全く思ってない・・・。

 気が動転して『幻聴』を聞いてしまったのだな。




 ―『洗脳されたジュリアを倒したら、私がスザクの一番の女になれるかもしれないな。』




 私が幻と思っていた声・・・。

 今はハッキリと聞こえる。




 ―『ジュリアを失ったスザクの支えになれ。』

 ―『スザクと私は同じ剣を使って戦う。相性がいい。』

 ―『スザクの一番の女になるチャンスだ。』

 ―『だから洗脳されたジュリアを倒そう。』

 ―『もうどうしようもなくて倒すしかなかった。そういう状況にすれば・・・』



 うるさいうるさいうるさい。


 私の声で私に語り掛けるな!


 ジュリアは大切な仲間だ。倒すなんて思うはずがない!



 ―『何を言っているんだ?』


 私の声が馬鹿にしたような声で私に言う。


 ―『私の声なんだから、私だろう。』



 ちがうちがうちがう。

 私はそんな醜い思いなんて持たない。

 ギルドを引っ張る副マスターとしてそんな思いは絶対に・・・。



 ―『認めろ。』



 厳しい口調で私の声が言った。



 ―『「お前」が醜い思い持っていることを・・・。』





 -------------------------------








『ティアさん、チャンスです。』



 ラフェールが叫んだ。



 私はディーンを倒して、シオンとラフェールがエレンの動きを封じた。

 マリアも魔封じの矢で回復魔法を封じている。



『ジュリアを気絶させて!』


 シオンが私に向かって叫んだ。

 ・・・目の前には洗脳されたジュリアがいる。



 このまま気絶させてルギウスに加勢することができればこの戦いは勝利だ。

 魔王を倒せばジュリアも救われる。




『ジュリア、悪いな。』


 私は・・・。


 ―『ちょっと眠っててな。』

 ―『ここで倒されてくれ。』



 ・・・まただ。


 また私の声が・・・。




 ―『倒せ倒せ倒せ倒せ倒せ倒せ倒せ』




『ふう。』



 私は一息吐いた。



 認めよう。



 洗脳されたにも関わらずスザクに一途に想われているジュリアに『嫉妬』していたこと。

 洗脳されてない私はジュリアに出し抜くチャンスがあると思ったこと。

 ジュリアが冒険者としてギルドに来た時に、嫉妬心と焦りが生まれたこと



 だがな・・・。



『・・・ジュリア、悪いな。』



 私は拳をグッと握る。



『ちょっと眠っててな。』

 ―『何?』



 私はジュリアを気絶させた。



 ―『なぜだ。』

 ―『スザクの一番の女性になるチャンスだったのに・・・。』




 簡単な話だ。



 ジュリアを倒したって、一番の女性になれない。

 ジュリアがいなくなったって、彼はジュリアを想い続ける。

 私はスザクにとって頼れる『姉』でしかない。



 私にとってジュリアとスザクは大切な仲間だ。

 私が嫉妬や醜い思いを持っていても、彼らが大切な仲間であることは変わらない。

 そんな醜い思いに左右されて、私の大切な仲間を捨てない。




『ラフェール、シオン。ルギウスに加勢するぞ。』


 私の倒すべき相手はジュリアではない。


『魔王を倒すぞ!』


 私は倒すべき相手の名を叫んだ。

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