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順調な戦い

前回まではクレアのお話でしたが、今回からはティアが見た幻想の話となります。

ティア視点です。

『ジュリア、正気に戻って。』


 シオンが叫ぶ。


『魔王・・・!』


 ルギウスは恐ろしい表情で魔王を睨みつける。


『ジュリア・・・』


 スザクは絶望に満ちた声で言う。


『ヘルフレイム』


 洗脳されたジュリアはそんなスザクに最上級の炎魔法を浴びせる。


『ぐわああああああ』


 いつものスザクなら難なくよけることができただろう。



 だが・・・。



 彼にとっての大切な人からの攻撃。

 大切な人が「また」洗脳されてしまった。

 きっと普通の精神状態ではいられない。



 彼はヘルフレイムを諸に受けてしまった・・・。




 -----------------------




 ジュリアが魔王に洗脳された。

 すべてが順調に戦いが進んでいるはずだった。




 魔王城に入る前に立ち塞がっていたレオンハルトをスザクが一人で倒してみせた。



 魔王の間に突入した後も・・・。

 女神のペンダントで洗脳を防いだ。

 勇者を取り込んで大幅にパワーアップした魔王と互角に戦うルギウス。

 クレアと私で、剣聖だったエリーと賢者だったシュリと戦って順調に追い詰めていた。


 そしてスザクを中心にジュリア、ラフェール、シオンが協力をして魔族と化したディーンとエレン、そしてマリアを戦っていた。


 順調に戦いが進んでいるはずだった。


 ジュリアの魔法が見事に決まった。


 それが歯車が狂うきっかけになるなんて・・・。





 ―『ジュリア。お前の魔法で目が覚めたぞ。』

 ―『エレンさん。』



 ジュリアはエレンの言葉と演技にまんまと騙された。

 気を緩めてしまった。

 エレンはその隙をついて、ジュリアの後ろに回る。

 そして首に掛かっている女神のペンダントを外して・・・。



 ―『エレンさ・・』

 ―『魔王様。』



 そしてジュリアは魔王に洗脳された。


 あまりにも、あっけなく・・・。




 -----------------------




『スザク!』


 最上級魔法をもろに受けたスザクを見て、私は叫んだ。



『冷静になれ!』


 ルギウスの叫び声が響く。


 その声は威厳があり、軽くパニックになっていた私の頭を冷静してくれた。

 ・・・いや、強制的に思考をリセットされたと言った方が正しいのかもしれない。



『クレア、一人で相手できるな。』

『もちろんよ。』


 最低限のやり取りであるが、流石は夫婦といったところか。

 十分に削れたエリーとシュリを一人で相手にしろということをクレアは一瞬で理解した。



 そして私は・・・。



『ティア、任せたわよ。』


 クレアは私に言った。

 本来なら「エリーとシュリは私に任せて」というのが普通だろう。



『ティアはジュリアを「おとなしくさせろ」』


 今までスザクが担っていた役割を私が担う。

 ディーンとエレンを抑えつつ、ジュリアを助けないといけない。


 重要で難しい役割だ。

 クレアが「任せた」と言ったのはこういうことだろう。



『俺は魔王を絶対に殺る。』

 


 そうだ。ここで魔王を倒せればジュリアの洗脳は解かれるかもしれない。

 そしてエレンとマリアも救えるかもしれない。




『大丈夫ですよ、ティアさん。』


 私に声をかけたのはラフェールだった。


『マリアってやつの回復魔法は魔封じの矢を当てて封じてますし、俺も近接戦闘はある程度はできるので。』

『そうか、心強い。』



 彼らもスザクを援護しながら、遠距離攻撃で矢を的確に相手に当てた。

 魔封じの矢や相手の痺れさせる効果のある矢を的確に当て続けていた。

 まさに戦いを縁の下で支えてくれた。



『シオン、スザクを守りながら援護頼む。』

『任せて!』



 ジュリアはシオンにとって洗脳されている時から隣にいる仲間だ。

 けれどその仲間は目の前で洗脳されてしまい、隣にはいなくなった。


 それでも心を奮い立たせるように、いや、心が折れないように・・・。

 シオンは自分を奮い立たせるようにラフェールの指示に対して叫ぶように返事をした。




『ジュリア、私が今・・・』



 私はお前たちを・・・。




『救ってやる。』『倒してやる。』





 ・・・私は今、なんて言ったの?

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