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13:足手まとい

後半は村長さん視点の話になります。

 朝の目覚めは最悪だった。


「勇者に復讐する」という天変地異が起ころうとも一村娘には無理なことを、布団の中で妄想してしまった。



「無理だってわかっているのになぁ・・・」



 覆水盆に返らず

 その状況で、たくさん水が返ってきた。



 ただ『恋人関係』という水だけが、零れてしまっただけだ。




 ならそこに新しい水を注ぐんだ。




 一からスザクと恋人関係になるんだ。








 そう決意して、1カ月・・・。


















 何も変わっていない。






 

 

 ・・・むしろ悪い状況だ。




 隣に立つために私は彼の仕事と手伝おうと思った。



 けれど

『ジュリア、南の森は危ないんだ。そんなあぶないところに連れていけないよ』

 とスザクに拒否された。



 それでも彼との距離を縮めたい私はしつこく粘った。足は絶対に引っ張らないと。



『・・・いやジュリアは足手まといだよ。』

 彼はそう言うとそのまま森へ向かっていった。







「まあスザクの言うことは正論じゃが・・・。」


 言い方があるのう。と村長さんは言った。



 今私は村長さんの家にいる。



 スザクの正論で放心した私を家に招いてくれた。


「うう、私はスザクの隣にいる資格なんて・・・」


 でも私は彼のために何もしてあげられない。

 やっぱり私は彼の隣にいる資格なんて・・・。


「ジュリア。スザクはお前を取り戻すために強くなったんじゃ。」



 私のため・・・。

 そういえばお父さんとお母さんも言っていた・・・。




「・・・お前が去った後のスザクについて少し話をしよう。」






 ***********

~村長さん視点~





 お前が王都に行った後、スザクは落ち込んでな・・・。

 それでもジュリアが戻ってくることを信じておった。


『自分が弱いからジュリアは行ってしまった。僕は強くなる。』


 と彼は決意した。





 ちょうどそんな時、村の南の森を調査するために王都の騎士団がこの村を訪れた。



 この村の南の森に良質な素材があることがわかったそうじゃ。

 だがその森には魔物がいる。なので王都は騎士団を連れて、調査しに来たということだ。しばらくこの村に滞在するらしい。



 スザクは大胆にも自分に剣の修行をつけてくれと頼み込んだ。騎士団がそんなことをしてくれるとは思えない。当然、彼の願いは突っぱねられた。






 それでもスザクは諦めなかった。


『お願いします。勇者に奪われてしまった大切な人を取り返すために僕は強くなりたいんです』



 その言葉に一人の騎士がスザクの言葉に答えた。




『いいだろう。』


 その場にいるすべての人間が耳を疑っただろう。

 でもその騎士は確かに「いい」と言ったのだ。


『ど、どういうことですかレオンハルトさん!』

『おれたちはモック村の南の森について詳しく調査するためにわざわざここに来たんですよー。』

 当然騎士たちからは反対の声があがる。


『まあ聞け。俺たちは南の森を調査するためにここに来た。だが王都からはかなり距離もある。この村に一人くらい南の森を調査できる者を育成しておくのも、今後長い目で見たときに何かと便利ではないか?』

『それはそうですが・・・』

『それに育成に成功すれば、お前たちが言う「わざわざ」この村にくることもなくなるぞ』



 そういうとレオンハルトはスザクの方を向いて言った。



『少年よ。名はなんという』

『僕はスザクと言います』

『・・・ならスザクよ。3カ月で南の森で調査できるくらい強くなってみせよ。』



 こうしてスザクとレオンハルトの修行が始まった。



 レオンハルトは信頼の厚い騎士だったのだろう。滞在期間を終え、騎士団が王都に帰るとなったときも

『俺はさらに南の森を調査するから、この村に残ると王都には上手くいっておいてくれ』

『わかりました。・・・全くレオンハルトさんじゃなかったら無理な話ですよー』

『すまない。苦労をかけるな・・・』

 とここに留まることになった。



 レオンハルトは騎士としての実力もかなり高かった。


 そのおかげかスザクの剣の腕は短期間でかなり上昇した。

 スザクに元々才があったこともそうだが、それよりもレオンハルトの的確な指導のおかげだった。


 剣はもちろん、間合い、そして戦いの心得、実に的確な指導じゃった。





 その分、修行の内容は客観的に見ても厳しいものじゃった。






 それでもスザクは決して折れなかった。


 それでもスザクは決して逃げなかった。


 それでもスザクは決して倒れなかった。







 わしは小さいころからスザクを見ているが、初めて彼を怖いと思った。


 その理由は、驚異的な成長スピードでない。また決して折れない彼の精神力ではない。


 強さに対する執着。強くなることはジュリアを取り戻すということだと「妄信」している彼に、そして、そのためなら命すら惜しくない「覚悟」に恐れを抱いた。


 わしは止めようかと何度も思った。でも彼の気持ちを考えると止めることはできなかった。






 そして3か月・・・。レオンハルトとスザクは二人で森の奥地へいくと言った。

 奥地で素材を入手する、それがレオンハルトがスザクに与えた最終試練だとわしは悟った。

 

 そして二人は素材をたくさん採取して南の森から帰ってきた。


『これならもうお前ひとりでも大丈夫そうだな。強くなったな、スザク』

 

 レオンハルトがそういうと、スザクは嬉しそうに笑った。

 それは久しぶりに見る彼の笑顔だったのう・・・。



『今日は家でゆっくり休め。』

『はい、わかりました。』


 スザクは家へと帰っていった。


 そしてワシも家に戻ろうとしたとき・・・。







『・・・さて村長さん、少し話いいか?』

 レオンハルトが声をかけてきた。

ブックマーク登録してくれた方、評価してくれた方

本当にありがとうございます!


次回の話も前半は村長さん視点、後半はジュリア視点に戻ります。


追記

誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そこは森に付いていくんじゃのうて、 三食用意したり家の事やったり……って発想にならないのか。 実は脳筋?(印象操作 →普通に考えたら、強迫観念込みで傍に居たいってところですよねw
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