呪い
「アンデッドドラゴンの呪いですか。これは強力な呪いですね。」
―『アンデッドドラゴンの呪い』
という言葉に私はパニックになった。
神父様が私の様子を見て落ち着かせた。
彼は呪いの解呪を始めたが、苦戦しているみたいだった。
「この呪いを受けてもピンピンしているのは、流石スザクくんということか。」
この剣士さんのお名前はスザクさんというらしい。
「いやそんなことは・・・。」
神父様に褒められて、マゴマゴするスザクさん。
その反応を見ると、本当に彼がアンデッドドラゴンを倒したのが不思議なくらい、可愛い反応だった。
「けれど呪いをしっかり解呪しないと、徐々に影響が出てくるだろう。」
この呪いは数ある呪いの中でも、間違いなく最上級に強力な呪いだ。
今は元気でも、放置していればきっと身体を蝕んでいく。
「マリア!」
「ひゃい」
神父様に突然名前を呼ばれた私は変な返事をしてしまった。
「ひゃ、ひゃい?」
「いえ、申し訳ありません。」
は、は、恥ずかしい・・・。
私は手で顔を隠した。
・・・ふとスザクさんの反応が気になった。
私は中指と薬指の間を少し開けて彼の顔を見た。
その顔は笑顔だった。
カムイくんに似た穏やかで優しい笑顔。
カムイくんの方がカッコいいだろうか。
でもスザクさんも屈託のない可愛い笑顔というか・・・。
「マリア、スザクさんの呪いの解呪に協力してください。」
「ひゃ、はい。」
また変な返事をしそうだったが、しっかり返事をした。
「ふうー」
私はゆっくりと息を吐いた。
神父様でも解呪に苦労するアンデッドドラゴンの呪い。
私が力になれるだろうか。
「マリアさん。」
スザクさんに声をかけられた。
「お願いします。」
トクン。
また胸が高鳴った。
このまま呪いを解呪できなかったら、きっとこの笑顔も・・・。
それは嫌。
この笑顔を守るために・・・。
私は全力で解呪の魔法を唱えた。
「優しい魔法ですね。」
彼はそう微笑んだ。
なんだろう。
今、ものすごく力が沸く。
今の私なら、アンデッドドラゴンの呪いだろうが、魔王の呪いだろうが解呪できる気がする。
これ以上、優しく可愛い笑顔を蝕むことは許さない。
呪いよ、彼から出ていけ。
「マリア、よくやりましたね。」
「はあはあはあ。」
初めてこんなに気合いを入れて、魔法を唱えた気がする。
私は息を切らしていた。
「あ、ありがとうございます。神父さんと・・・マリア、さん?」
スザクは頭をペコっと下げる。
そして私の名前を自信無さげに言いながら、お礼を言った。
「はい。マリアです。」
自分でもわかる。
今私、凄い良い顔をしている。
「マリア。スザクさんは、まだしばらくここで安静する必要があります。」
神父様が声をかけてきた。
「そ、そうですよね。」
ちょっと前まで呪い状態だったのだ。
解呪できたとしても、いきなり身体を動かすのはいけないのだろう。
「だからマリア、安静にする彼と一緒に居なさい。」
へ?
彼と一緒に?
「スザクさんのお話相手になりなさい。」
「ひゃい。」
私はまたも変な返事をしてしまったけど・・・。
「あのスザクさん。」
「は、はい。」
「これからよろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いします。」
アンデッドドラゴンの呪いを解いた時の話でした。