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エピローグ ~二人の子供~

エピローグ最後の話です。

 僕の名前はルーカス。



 モンスター島でフェアリードラゴンたちと遊んでいる。

 島とは言っても、陸地からそんなに離れてないから、作られた橋で陸地にいけちゃうんだけど・・・。



「お兄ちゃん、お母さんがご飯できたって。」

「ありがとう。」



 妹のエリアが僕を呼びに来た。

 メタルガーディアンという大きな機械の魔物さんに乗って迎えに来た・・・。



「お兄ちゃん、もうフェアリードラゴンたちに懐かれてるね。」

「うん、すごいでしょ。」

「ぴー」


 フェアリードラゴンたちが僕の周りを飛ぶ。


「エリアだって、機械の魔物さんと仲良いよね。」

「えへへ。」



 エリアは特に機械の魔物さんと仲がいい。


 この前はこのメタルガーディアン、リーサルマシン、メカニックワイバーンとおままごとをしていた。


 ・・・誰がどの役をやるのだろう。





「じゃあまたくるね。」

「ぴー」


 僕はフェアリードラゴンたちにそう声をかけて、メタルガーディアンに乗った。





 この国は人間も魔族もエルフもドワーフも色々な種族が協力して、一緒に暮らしている。


 けれど、僕が生まれる前は違ったらしい。


 信じられないけど、魔族と人族は争っていた。

 魔王っていう魔族の偉く、悪い者がいて、それを勇者って人が退治しないといけなかったんだ。


 でも勇者は魔王に負けてしまった。

 そこで僕のお父さんとお母さん、ルギウスさんとクレアさん、ギルドマスターのティアさん、ラフェールさん、シオンお姉さんが、みんなで力を合わせて、魔王とその配下を倒したんだ。


 その戦いの中で戦死したエレンさんとマリアさんという仲間もいた。

 勇気、実力もあった優秀な冒険者さんだったらしい。




 悪いやつを倒したお父さんたちは、報酬としてこの海沿いの島をもらったんだ。お父さんはこの島を『モンスター島』と名付けた。


 魔王を倒されて行き場のなくなった魔物さんを、お父さんとお母さんとルギウスさんとクレアさんが力を合わせて、この島に保護することにしたんだ。


 魔王を倒したときのように、お父さんたちは力を合わせて、全ての種族が協力して暮らせるようにしているんだ。


 このモンスター島で保護されたオオカミの魔物さんが、サーカス団のスターになっている。


 ということもあるんだ。





 でも種族間の壁が大きい地域もあるらしく、まだまだ共に生きることができてないところもある。

 それは魔族と人族が争っていた時代があったから・・・。


 ・・・ってこの前、お父さんたちが言ってた。





 魔物さんの中には「戦い」自体を好む者も居て、「戦う」場がなくストレスを溜める魔物さんが出てきたらしい。

 そこで「ころしあむ」という戦いの場を作って、それを好む魔物さんも満足できるようにしたんだ。


 また試合には「れふぇりー」という人がいて、戦闘不能になった魔物さんに対して、さらに攻撃を加える魔物さんがいたら強制的に退場にしたり、ルール違反した者を強制的に追い出す仕組みを作ったんだ。


 命をかけた戦いではなく、ルール付きではあるけど、戦う場があることでストレスを溜める魔物さんも少なくなったんだって。




 ちなみに「ころしあむ」では、人が指示を出して、魔物さんがそれに従って戦うんだ。


 毎年大きな大会が開かれて、お父さんとルギウスさんのチームが圧倒的に強いんだ。

 今は強すぎて大会に参加してないらしいけど・・・。

 お母さんも強くて、お父さんたちが参加しなくなった次の大会で優勝したらしい。






 僕はその「ころしあむ」でお父さんたちに勝つ。

 それが僕の夢なんだ。




「メタルさん、ありがとね。」

「ドウイタシマシテ。」


 メタルガーディアンは、島で遊んでいた僕たちを家に運んでくれた。

 見た目はちょっと怖いけど、僕とエリアといつも一緒に遊んでくれる優しいメタルさん。

 

 メタルさんをみていると、本当に人と魔物さんって争っていたのかなーと疑問に思うことがある。

 魔王という偉いやつに、仕方なく従っていたんじゃないかなー。

 


「ルーカスを連れてきてくれたのね。」


 家に戻ってきた僕らにお母さんが声をかけた。


 僕の優しいお母さん。

 でも氷の魔術師や『まな板』の魔術師といわれる凄い魔法使いなんだ。



 ・・・なんでお料理の道具が名前に使われているんだろう。

 お母さんの作ったご飯が美味しいからかな?




「はやく、はやく食べよう!」


 僕はもう待ちきれない。


「はいはい。じゃあ食べましょう。」

「いただきます。」



 **********








「お兄ちゃん、魔物さんに凄く懐かれているんだよー」

「えへへ凄いでしょ、お母さん。」


 今日はフェアリードラゴンたちといっぱい遊んだ。


「本当にルーカスは凄いわ。お父さんのようになれるかもね。」


 僕が・・・お父さんみたいに・・・。

 

「うん、お父さんみたいになりたい。」

「でもパパはおうちにいる時間が少ないよ、お兄ちゃんもおうちにいないの?」


 エリアは不安そうな顔で僕を見た。


「お父さんは助けを待っている魔物さんたちを保護しているんだよ。そして共に暮らせるようにしている。だから大変なんだ。」


 たまに長い時間、家に帰ってこないときもある。

 ちょっと寂しい時もあるけど・・・。


「でもルーくんのお父さんは、ルギウスとお外ばかり行ってるのは事実ねー。」


 この声は・・・。


「まあでも私がいるから、ジュリアに寂しい想いなんてさせないけどね。」


 その声の主は、お母さんに抱き着いた。


 クレアさんだ。

 とても綺麗で、『ガンファッション祭』で毎年一番を取っていた人。

 今は審査する側にいるんだ。

 綺麗なだけでなく「ころしあむ」でのお母さんのチームの主力として大活躍しているんだ。


 お母さんのチームはクレアさんの他に、カレンさん、ジェシカさん、アリサさんという綺麗な女性達がいる。


 カレンさんは、綺麗でカッコいい屈強な戦士だ。

 そしてクレアさんのことは、クレア様、お母さんのことは、ジュリア様、そして僕のこともルーカス様と呼ぶ。

 僕は「ルーカスでいいよ」って言うけど、それでも「様」とつける。

 様付けするカレンさんは、女性だけど凄くカッコいい。



 ジェシカさんは美しい。

 剣だけじゃなくて魔法も得意。様々な魔法で相手を圧倒したり、チームを補助したりするんだ。

 お母さんと同じで魔法が得意なはずなのに、『まな板』の魔術師とか、『包丁』の魔術師とか、お料理の道具では呼ばれてない。

 お料理ができないのだろうか?

 

 

 アリサさんは、お母さんに似ている。

 だから一番話しやすいし、とても優しい。

 けれど戦闘になるとムチを使いこなして、相手を縛るんだ。

 


 僕は一度、アリサさんに聞いたことがある。


 どうしてお母さんが『まな板』の魔術師と呼ばれているのかを・・・。


 するとアリサさんは、ムチを持った時と同じ顔で僕に言った。


 ―『ルーちゃん、絶対にその質問は女性にしてはダメよ。特にお母さんとシオンちゃんには本当にダメ。』

 

 ・・・・してはいけない質問なんだ。きっとお料理が上手だからそう呼ばれているんだ。

 と僕は無理やり納得することにした。


 ―『私だって、希望はあるから・・・。』


 アリサさんは自分の胸に手を添えて、寂しそうに小さく呟いていたけど、どういうことなんだろう・・・。


 けれどダメと言われたから、聞かないことにした。

 



 とにかくとても強くて、とても綺麗なチームなんだ。

 そんなチームを率いるお母さんは凄い。対策が無いと「のうさつ」されるらしい。

 ・・・のうさつってなんだろう。






 普段はこの島の保護された魔物を、お母さんと一緒に面倒を見ている。

 最初は言うこと聞かない大きな魔物さんもクレアさんたちにかかれば、子犬のようにおとなしくなる。

 ・・・偶然、その光景を見ていた僕もおとなしくなる。




 僕がお父さんたちに勝つためには、まずはお母さんとクレアさんとカレンさん、ジェシカさん、アリサさんたちにも勝たないといけないんだ・・・。

 「のうさつ」をしっかり対策しないといけない・・・のだろうか。



 僕の夢は、とても険しく、とても大変だ。





「ちょ、ちょっとクレア。」

「でも事実でしょ?」


 からかうようにクレアさんはお母さんに言った。


「もう、クレアの分もあるから、一緒に食べるよ!」

「はーい。」

 とクレアさんは言うと椅子に座った。





「あ、そういえばね。」


 クレアさんは僕を見て言った。


「ルギウスたち、そろそろ帰ってくるらしいわ。」


 ということはお父さんも帰ってくる。


「えっ、ホント?」




 僕はクレアさんの言葉に反応して、勢いよく立ち上がる。







 ゴツン







 肘がコップに当たって、中の水が零れてしまった。






「お、お兄ちゃん!」


 や、やってしまった。


「お、お母さん、ごめんなさい。」


 ううう、たくさん零してしまった。

 早く拭かないと・・・。


「いいのよ、ルーカス。」


 お母さんは優しい声でそう言った。


「えっ!?」


 怒らないの?と僕は思った。


「お水はね、零した後が大切なの・・・」


 お母さんはそういうと、僕の零した水を拭く。


「そうね。」

 とクレアさんは僕のコップを立てる。

 そしてそのコップに水を注ぐ。


「ルーくんはお水を零した後に、しっかり謝ることができた。それはなかなかできることじゃないの・・・。」


 クレアさんはそう言って、僕の頭を撫でた。


「クレアの言う通りね。ルーカスもエリアも水を零したら、まずは謝るの・・・。」


 お母さんはなんだか寂しそうな表情をしている・・・気がした。

 

「わかったわ。ママ。」


 エリアが明るい声で返事をした。

 その声を聞いて、お母さんの表情は明るくなった。

 

「うん。僕もわかった。」


 エリアに続いて、僕もしっかりと返事をした。




 ・・・でも『水を零さない』ことが一番良いよね。

 次は零さないように気を付けよう。






 **********






「ごちそうさまでした!」


 やっぱりお母さんのご飯は美味しい。『まな板』を上手に使っているからかな?


 さて、ご飯も食べ終わったし・・・。


「お母さん、フェアリードラゴンたちと遊んでくるね。」

「はい。いってらっしゃい。」

「お兄ちゃん、私もいく。」


 お外に出ると、メタルガーディアンが待っていた。


「メタルさん、待っていてくれたの?」

「ルーカストエリアトアソブ。ダカラマッテタ。」

「ありがとう。」



 僕とエリアはメタルガーディアンの背に乗ろうとした時・・・。






 ドーン







 大きな音がした。

 僕たちはその音のする方へと向いた。





「ルギウス・・・。転移魔法もっと優しくできない?」

「スザクよ。俺は早くクレアに会いたいんだから仕方ないだろう。」


 ・・・相変わらずルギウスさんは豪快だなぁ。


「あっ、パパだ。」


 エリアがお父さんたちに声をかける。


「エリア、ルーカス。」


 お父さんは僕たちに気づいて声をかけた。


「ただいま。」


 優しい目だ。安心する。

 きっと魔物さんもこの目を見て安心するんだ。


「おかえり、お父さん!」



















 僕がたくさんの魔物さんたちと協力して、冒険して、成長する。

 その話はまた別の話だ。

明日、作者のあとがきを投稿して完結です。

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[良い点]  人間、魔族、亜人種が共存する社会。人種差別の歴史がつい数十年前まで先進国でも当たり前にあり、今でも問題になっているのだから、多種族共存というものは容易くできるものではないのでしょう。それ…
[良い点] まな板 [気になる点] まな板 [一言] まn(凍結
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