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104:ただいま

11話とサブタイトルが被っているのはわざとです。ミスではありません。

「帰ってこれた・・・。」


 久しぶりに戻ってきた私の故郷。

 あの時は絶望を心に潜ませながら戻ってきた。


 けれど今は、スザクと仲間達と共に、魔王を倒してここにいる。

 まさかこんな大きなことをして戻ってくるなんて思わなかった。


「ここがスザクたちの故郷か。」

「やっぱり穏やかでいいところね。」


 ラフェールさんは初めて、シオンはポイズンバタフライと戦った時以来のモック村だ。

 故郷をいいところと褒めてくれるのは嬉しい。





「ジュリア!」



 聞き間違えることのない大切な家族の声だ。



「お母さん。ただいま!」

「ジュリア、ジュリア。無事でよかったわ。」

「ジュリア、村長さんから聞いたよ。よく頑張ったね。」


 そっと頭に手を置いてくれたのはお父さんだった。





 無事に戻ってこれて良かった。

 魔界に行って、女神の塔に行って、魔王城と化した王都の城に攻め込んだ。


 冷静に考えると、今こうやってここにいることは、奇跡なのかもしれない。






「ジュリア、スザクよ。大変だったのぅ・・・。」


 声をかけてきたのは村長さんだ。


「村長さん!」

「まさかこの村から英雄が誕生するとはのう・・・。」


 村長さんは嬉しそうに言った。


「・・・あの村長さんがドレークさんの言う例の魔術師さんなんですか?」



 スザクが村長さんに尋ねた。

 ・・・私も凄く気になっていた。


 私に確かに魔法を教えてくれたけど・・・。



「なんじゃドレーク。何も言ってないのか?」

「えっ。」


 村長さんがギルドマスターであるドレークさんを呼び捨てにしている。そのことに私は驚いて声を出してしまった。


「すいません。」

「えっ。」


 ギルドマスターであるはずのドレークさんが村長さんに頭が上がらない様子である。そのことに私は驚いて声を出してしまった。


「詳しく説明してやりたいが。疲れているじゃろう。」


 確かに・・・。

 激しい戦いをして今はゆっくり休みたい。


「年寄りは話が長いからのう。今はゆっくり休むのじゃ。」








 **********







「ジュリアちゃんおかえり」

「大変だったねぇ」

「俺はジュリアちゃんが帰ってくるって信じてたぜ」


 戦いの傷を癒すために、私の家に帰る途中、村の人たちから声をかけてくる。


「スザクもよくやったぞ。」

「お疲れ。ゆっくり休んでくれ。」


 本当に優しい人達だ。


「ねえ、ジュリア。なんか広くなってない?」


 シオンが私に聞いた。


「た、確かに・・・」


 シオンの言う通り、私の知る村と比べて広くなっている気がする。


「ねえお父さん。何かあったの。」

「ああ。」



 お父さんの話によると・・・。



 村長さんは王都にいる昔の知り合いからの依頼で、もしもの場合、王都から避難してくる人達を受け入れてほしいと言われたそうだ。

 昔の知り合いというのはドレークさんのことだ。



 ドレークさんからは、避難用のテント等を提供されたらしい。



 モック村は田舎の村なので、そこを村の土地として使用していなかっただけで、余っている土地はかなりあった。


 そこにテントを立てて『避難所』として場を用意し、ドレークさんからの依頼の準備をしていた。また南の森からスザクが採取していた素材の綿を活かして、寝具を作って受け入れる準備をしていた。

 その寝具が好評でテントで避難生活のはずなのに、質の高い寝具があるのでむしろ快適だという声もあった。


「避難してきた人、特に冒険者は凄いね。」


 避難所に来た人たちの食料をどうする等、色々懸念があったそうだが、避難してきた冒険者が南の森に行って、素材や食料を取ってきてくれたそうだ。

 さらに魔物が入ってきてもしっかり退治してくれた。そして避難所のことは避難所の人たちが自分たちでやってくれたので、モック村としても負担は土地だけだったらしい。


 またこの村の雰囲気を気に入ってくれた人もいて、村の発展に貢献したいという人もいるそうだ。

 だから王都から避難した人を受け入れたことは、むしろ村にとってプラスとなったとか。




 お父さんの話を聞いているうちに、私の家とスザクの家が見えてきた。




「男性はスザクくんの家で、女性は私たちの家で、ゆっくり傷を癒してください。」

1章でジュリアがモック村に帰ってきたときと、今回のモック村への帰還。




背景、想い、人としての成長度・・・

色々と違うことがあります。





ですが、どんな背景があっても故郷に帰るときの「ただいま」はいつまでも同じのはずです。

変わらないものがあるという思いで、1章の11話と同じサブタイトルにしました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 搾取? 綿「ああ、それを持っていかれると来年の作付がぁぁぁ」 スザク「ええい、黙れ黙れ。この面は俺の村で使わせてもらうぞ!」 綿「ああ、もうおしまいだ……(こうなったら一揆でもするし…
[良い点]  不安と悲しみに押しつぶされそうだったひとりぼっちの「ただいま」ではなく、疲れてはいても希望と喜びがにじみ出る仲間と一緒の「ただいま」。  いいですね。少し泣けてきます。ここまで読み続けて…
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