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98:計算外

日本シリーズはあっさり終わってしまいました。


この物語はルギウスと魔王が遂にぶつかります。

日本シリーズのように、ルギウスが魔王を圧倒するという展開であっさりと終わってしまうのでしょうか?


この話と次の話は第三者視点で物語を進めます。

 ルギウスは気配察知を頼りに魔王がいるという王座の間に向かっていた。

 そして今、その扉の前にいる。


「ここか。」


 扉を見て彼は静かに言った。


「今度こそ・・・勝つ。」


 決意を込めて彼はそう言うと扉を開ける。


 不意を突かれるという魔王の間での同じ過ちは繰り返さない。

 魔王が不意打ちをしてくることも考えて、最大限の警戒をした。


「ルギウス・・・お前が来たか。」


 その必要はなかった。

 魔王は扉から離れた王座に座っていたからだ。

 この距離なら警戒をしてなくても、何なら寝ていても攻撃を交わすことができる。


 ルギウスはそう思った。



「お前のことだ。我の駒たちを全て一人で倒してから来ると思ったけどな。」

「・・・以前の俺だったらそうしていたかもな。」

「ここまで全く消耗せずにきたわけか。」


 ルギウスは違和感を覚えた。

 心なしか嬉しそうに魔王が言葉を発したからだ。

 普通は倒すべき敵は、少しでも消耗していてほしいと思うはずだが・・・。


「消耗したお前を勇者の力を取り込んだ我が圧倒して、それ以外のお仲間の戦意を喪失させる・・・という計画は破綻か。」


 計画が破綻した、と言う割に笑みを崩さず魔王は言った。


「頼れる仲間がいるのでね。」

「ほう。」


 魔王は感心していた。

 孤高の四天王。クレア以外にまともに心を開かなかったルギウスが、誰かと協力する。最早感心ではなく、感動と言っても良いのかもしれない。

 そんなことを魔王は思っていた。



「魔王を確実に倒すために、その役割を遂行するために、俺はここまで力を温存した。」

「・・・高ぶるぞ。」


 魔王はこれまでルギウスという存在を言い訳に、自分が弱いことを肯定していた。

 そう肯定することで、自分に保険でもかけていたのだろうか?


 自らの野望を叶えるための最大の壁。

 それがほぼ万全の状態で目の前にいる。


 ・・・普通なら少しでも消耗しておいてほしいと願うだろう。


 けれどその最大の壁は、最高の状態で自分に挑んで来ようとしている。

 自分で発した言葉の通り、魔王は気持ちが高ぶっていた。


「ファントムのおかげで、勇者の力を上手く取り込めたようだな。」

「・・・ほう。」


 魔王は驚いた。


 ルギウスは自分と比べると知力は下だ。

 だから『一度目』・・・あの時の王の座をかけた戦いだって勝てた。

 正しくは土俵に上がらせなかっただけだが・・・。


「ファントムを通じて、勇者に力を与えたな。」

「・・・そうだ。」


 きっとあの仲間の誰かがそう推察したのだろう。

 勇者と魔王が同じ『洗脳』の能力を使えることに違和感を覚えた人間が考えたのだろうか、と魔王は思った。


「まあ色々と聞きたいことはあるが・・・。」


 一瞬でこの場を殺気が支配した。


「そろそろ始めるか・・・。」

「勇者の力を取り込んだ我は強くなったぞ。」

「わかっている。久々に楽しめそうだ。」



 ルギウスの言葉に嘘はなかった。


 今の魔王は明らかに戦闘力が上がっている。

 ファントムで自分の力を与える、いや、取り憑いていたことで力もすぐ馴染んだのだろう。



 勇者に力を与えなければ、自分の妻は洗脳されなかったこと。

 そしてジュリアやシオンといった被害者も出なかったこと。


 色々思うことはあった。





 でもそれ以上に『強敵』と戦えることに、ルギウスは純粋に楽しめると感じていた。


「『三度目』は俺が勝つぞ。エリオット。」

「久々にその名で呼ばれたな。」


 魔王という王の座についてから、その名を捨てて王として生きてきた。


「来い。ルギウス。」






 瞬間、ルギウスの姿が消えた。






 そして・・・。








「俺の攻撃を防いだか。」


 ルギウスは初撃から全力で行った。

 一気にカタを付けて、色々聞き出してやろうという思いがあった。


 今までなら魔王に先制で大きなダメージを与えることができていただろう。

 だが魔王も強くなっている。勇者の力を取り込んだことでさらに強さを得た。


「我はお前を超える。そのためだけに力を付けたのだからな。」


 種族を魔族に統一するのが、魔王の目的だ。

 そしてその頂点には、王である自分が立つべきだ。


「統一した種族の頂点に立つのは、お前ではなく我だ。」







 **********









「ぬううルギウス・・・」


 魔王は『計算外』だと思っていた。


 勇者の力を取り込んだはずの自分。

 現にあのルギウスを追い詰めている。

 しかし、自分も追い詰められている。


 状況によっては取り込んだ勇者を『捨てる』ことも考えないといけない。と考えていた。



「やるな。エリオット・・・」


 ルギウスも同じく『計算外』だと思っていた。

 まさか魔王がそこまで力をつけているとは思わなかった。

 なんだかんだ純粋な戦いなら、自分が勝つと思っていた。











「なっ、クレア!」


 突然、ルギウスは自分の妻の名前を呼んだ。




 彼は慌てていた。


 クレアが『クイーンモード』を発動していたから。

 これでは『一度目』の時と同じことに・・・。


 彼は気配察知を使える。

 精度高く、質も高い。だがそれが自身の首を絞めた。


 クレアの『クイーンモード』を感知してしまった。それに気を取られてしまった。






 ・・・つまり隙ができた。






「甘いぞルギウス!!」


 一瞬の隙すら、見せてはいけなかった。

 以前の魔王だったら、この隙を見せても対処できただろう。





 ・・・だがそれは『以前の』魔王だった時の話だ。






「・・・っ!」


 魔王の強烈な一撃を受けて、吹き飛ばされる。

 床に身体が叩きつけられ、激しくバウンドした後、壁に身体を激突させた。

 そして力なく地面に倒れる。


「クレアがクイーンモードでも発動したのか。」


 そう言いながら吹き飛ばされたルギウスに魔王は近づく。


 魔王も感付いていた。

 ルギウスが自身の妻の名前を突然焦ったように呼んだからだ。


「今回も敗因は『一度目』と同じか。」


 そう言って魔王はルギウスの首を掴んで、体を空中に浮かす。


「エリオット・・・」

「いや・・・『一度目』とは違うか。」


 魔王は訂正した。


「今回は同じ土俵に上がっているから違うな。」

本当はルギウス視点でもよかったのですが、第三者視点の方が緊張感が出ると思い、このような形をとりました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱくずだ、こいつ、ある意味安心したわ(ある意味こんなくずのために何でみんな死ななきゃあならんのだだが)。こりゃあ、その前読むのがまたきついな。 [一言] はなから女性陣とか駒で、今まで…
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