10:最愛との再会
「おおスザクかご苦労だったな」
1年ぶりに見たスザクは、たくましくなっていた。
もっと細かったような気がするけど・・・。
それに綿のようなものをたくさん背負っている。
「スザク?スザクなの?」
思わず、私は声を上げてしまう。
「・・・もしかして、ジュリア?」
「そ、そうよ。スザク」
久しぶりに愛しい人から名前を呼んでもらえた。
嬉しさで我を見失って抱き着こうとした。
けど、その前に私は言わなきゃいけないことがある。
「スザク。ごめんなさい。私は・・・」
「ジュリア。神官さんから事情は聞いたよ。だから、もういいよ」
「スザク」
私は幸せ者だ。
あの男が壊したもの。
それをとりもどすことができた。
―エレンさん、マリアさん、シオンさん。私は取り戻せたよ。
護衛してくれた兵士さん、説明してくれた神官様、神父様にも感謝してもしきれない。
「・・・スザクあのね。もしよかったらこの後」
「ごめんね。ジュリア。僕まだ仕事中だからさ。
・・・それに今はおじさんたちと一緒にいてあげて」
もっとお話ししたいのに・・・。
でも自分よりお父さんとお母さんを優先してくれたのかな。
スザクは本当に優しい。
「うん、わかったわ。お仕事が終わったら。会いに行くね。」
「・・・わかった。」
とスザクは微笑むと、村長さんと一緒に村長さんの家に向かっていった。
なんかよそよそしい。
もしかして表向きは許してくれたけど・・・。
本当は心の中では・・・。
「スザクくん、本当はジュリアと話がしたいだろうに私たちに気を使ってくれたのね・・・」
「本当に彼は優しく、強い子だな。・・・ジュリアを最後の最後まで信じていたのは彼だしな」
「えっ、スザクが?」
お父さんの言葉に思わず私は反応する。
「お前が勇者に連れていかれた後も、彼だけは信じていた」
―『ジュリアは戻ってくる。小さいころ2人で約束したことだから・・・』
―『勇者のそばに行ったのは僕が弱いからなんだ。』
―『僕が弱いばかりに、ジュリアは・・・。おじさん、おばさん、ジュリアを繋ぎ止められなくて・・・』
―『ごめんなさい』
あれだけ酷いことをしたのに。
あなたとの思い出を売って勇者に貢いだのに。
それでもスザクは私を信じてくれていた。
「彼はお前を取り戻すために努力をした。勇者のよりも強くなってみせると己を鍛え続けた。」
確かに1年ぶりの彼の姿は逞しくなっていた。
「正直あれだけのショックを受けたら立ち直れなくてもおかしいことではない・・・
でも彼は前を向き努力した。同じ男として尊敬するよ」
「今ではこの村の南の森の奥に一人で行って素材を採取して戻ってくるまでになったのよ」
その素材というのはきっと背負っていた綿のことだろう。
南の森は、魔物が潜む森だって聞いたことがある。
そこに一人で行って帰ってくる。本当に凄いことだ。
「本当にジュリアは幸せ者ね。彼はあなたのために強くなったの。」
私のために、強くなってくれた。
勇者に汚された私を信じていてくれた。そのことに思わず笑みがこぼれる。
けれど私は表情を引き締める。
私はまだ、スザクときちんと話していない。
・・・本当に許してもらえているか確認していない。
きちんと話して、これからずっと彼と幸せに暮らすんだ。