1:プロローグ
「フォース様。もっと私を愛してください。」
「・・・・・」
ある王都の一室。一組の男女が愛し合っていた。
だが、女の方が気持ちが高ぶっているようだが、男の方は明らかに冷めている。
「フォース様・・・勇者様の子供をください。」
「チッ」
―この女も重くなってきたな。
勇者と呼ばれたフォースは、心の中でそう思い舌打ちをすると
「えっ、何?いやぁぁぁ」
突如、女性が悲鳴をあげて取り乱し、勇者を突き飛ばした。
「ここは、どこなの?スザクは?なんで私は勇者と・・・」
「あー、色々と記憶が混同しているみたいだね、ジュリア」
ジュリアと呼ばれたその女性に、勇者は下衆な笑みを浮かべて語り掛ける。
「まあ一年間そこそこは楽しませてもらったよ。でも子供も求めてきて重てぇわ・・・」
「スザグ、スザグ・・・」
ジュリアに勇者の言葉は入ってきてない。
助けを求めるように誰かの名を呟き続ける・・・。
「だからよ、「解いて』やるよ」
「ひっ・・?」
その瞬間、ジュリアは突然の悪寒に包まれた。
体の中から得体のしれない絶望があふれ出している、
そんな感覚だ。
「その様子だと思い出してきたみたいだな。俺と一緒にお前の元恋人に何をしたか」
「い、いやあ、ち、違うの」
ジュリアは思い出していた。
スザクからもらったすべてのアクセサリーを売って、そのお金で勇者に貢いだこと。
スザクの前で勇者とキスをしたこと。
スザクと勇者を比べて、スザクの尊厳を踏みにじる言葉を何度も浴びせたこと。
そして・・・スザクを捨てて、勇者と王都に行ったこと。
記憶はあるのに、身に覚えがない。
なぜ自分がこんなことをしたのかわからない。
ジュリアはただただ記憶から溢れてくる絶望に身を震わせるしかなかった。
「違う?まあ確かに違うな。お前は俺に洗脳されていたんだからな。」
「え・・・」
「お前が元恋人にした行動は、お前がやったことだがお前の意志じゃない」
―この男は何を言っているの?
ジュリアは恐る恐る顔あげて勇者を見る。
「ゾクゾクしたぜー。お前が元恋人を捨てる瞬間はよ!
何度も何度も見てきた光景だが、何度やっても飽きねぇな。」
「わ、わたしは・・・」
「けどもう飽きた。」
勇者は一呼吸おいてから吐き捨てた
「一年間、ありがとな。」
「いやあああああ」
絶望に耐えられなくなったジュリアは絶叫し気絶した。
初めて長編の小説を書こうと思います。
まずは完結させることを目標に頑張りたいと思います。
次回からは第1章です。
よろしくお願いします。