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第2話 振り分け戦


 6時間目終了のチャイムが鳴り響く。


「んーっ、ようやく授業終了か」


 本日の授業が全て終了し、大きく伸びをする勇士。

 5、6時間目はほぼ眠りそうになりながら授業を受けていたので、解放感がとて

つもなく大きい。


 授業が終わるとすぐに、担任の教師がやってきて帰りのSHRショートホームルームが始まる。

 担任の話よりも放課後のことで頭がいっぱいの勇士。今日から部活動が始まるの

だ。


 ほどなくして、SHRショートホームルームが終わり生徒たちはそれぞれ自分たちの目的地に向かう。

 勇士もすぐさま部活動の集合場所である体育館に向かおうとするが、茜に声をか

けられる。


「今日から部活だな! ちゃんと体育館まで行けよ!」


「お前こそ、男子バスケ部の体育館と間違うなよ!」


 茜も勇士と葵と同じ時期からバスケを始めて、強豪だった中学ではレギュラーで

キャプテンも務めていたほどの実力者だ。


 宝星高校には旧体育館と新体育館があり、男子バスケ部と女子バスケ部は別々の

体育館で活動をしている。


 二人は一言だけ言葉を交わし、お互いに部活動場所へと向かって行った。


 明るく振舞っていた勇士だが、その胸中は期待と不安の入り混じった感情が渦巻

いていた。

 新しく始まる部活動への期待感と、()()()()のことを思い出して。




 勇士が体育館に着くとすでに、入部希望の1年生が20数人ほど集まっていた。

 全国でも屈指の選手だった宮部亮も先に体育館に来ていて、全員、亮のことを知

っているのか、一番視線を集めていた。


 1年生の入部希望者が全員揃うと、監督らしき人物が三人現れて、1年生を整列さ

せた。


「こんにちは、私は2軍監督の有吉です、よろしくお願いします。では早速今日の

部活動について1軍監督の猪本監督からお話してもらいます」


 紹介を受けると二軍監督の隣に居た白髪混じりのおじいさんが前へ一歩踏み出し

た。


「こんにちは、1軍監督の猪本三郎だ、よろしく。今日は君たち1年生の実力を見

極め、それぞれ1軍から3軍までに振り分けていく」


 宝星高校のバスケ部は1年生から3年生まで、現在70名ほど所属している。

 その中から実力の程度で1軍から3軍までに学年関係なく振り分けられていく。

 

「まずは簡単な体力テストをして、その次にハンドリング、シューティングメニュ

ーをこなして最終テストをする。15分後に開始する、各々準備運動をしておけ」


 猪本監督の説明が終わると、1年生たちは各々準備運動に取り掛かる。

 勇士も入念に準備運動を行い、テストに備える。





 そして、15分後、振り分けテストが始まる。


 最初の体力テストは、反復横跳びや垂直跳び、腹筋、持久走などが行われた。

 どの項目も得意な勇士は簡単にそれらのメニューをこなしていく。


 そして、最後の項目の持久走が終了し10分の休憩に入る。

 体力テストの結果、勇士は総合で3位だった。

 因みに1位は、立花と言う人物で2位は亮だった。


 この結果に勇士はまずまずといった表情をしていた。




 次はハンドリングテスト、様々な種類のドリブルを行い、その上手さを見極めて

いるのだろう。

 勇士はガードなのでハンドリングも得意だ。




 次は休憩を挟まずシューティングテスト。

 様々な距離、角度からパスを受け、淡々とシュートしていくシンプルなテスト。

 シューターの勇士は、当然この項目が一番得意で、次々とシュートを決めていく

 その美しいシュートフォームとアーチは、見ている1年生たちが感嘆の声を上げ

るほどだ。


 そのシュート力から1年生たちが勇士の正体に気づき始めた。


「もしかしてアイツって古里中学の笠原じゃねーか」


「あぁー、あの……だから見覚えがあったのか」


 実は勇士は、そこそこ知名度のある選手で、全国大会には出場したことはないの

だが、()()大きな弱点さえなければ同世代ナンバーワンシューターではないかと、

言われるほどだった。


 全てのメニューをこなし、自分でも満足のいく内容でシューティング終え、満足

気の表情を浮かべる勇士。


 そして、猪本監督から最終テストの内容が発表される。


「最終テストは、5対5の実践形式で行う、前半10分、後半10分のゲームだ」 


 最終テストもシンプルな内容で、通常の試合の半分の時間でゲームを行う。

 チームは監督によって振り分けられる。

 勇士はAチームに振り分けられ、Bチームと対戦することとなった。

 Bチームには、あの宮部亮が振り分けられていた。

 ポジションは違えど全国区の選手と戦えることに勇士は、ワクワクしていた。


 同じAチームのメンバーが集まり、自己紹介を始めた。


「※PGポイントガードの田中です、よろしくお願いします」


「※SFスモールフォワードの下野、よろしく!」


「※PFパワーフォワードの佐藤だ、よろしく!」


「※センターの山根、よろしくーw」


 Aチームのメンバーがそれぞれ挨拶をする。


「※SGシューティングガードの笠原です!よろしくお願いいたします。」


 -----------------------------------------------------------------------


 PG……チームをまとめる司令塔的ポジション、小柄な選手が多いポジション。


 SG……スコアラーや、3ポイントが得意な選手が多いく、PGの補助的な役割

も持っているポジション。


 SF……どんなプレーも得意なオールラウンドな選手が多いく、得点力も期待さ

れるポジション。


 PF……ゴール下で体を張る、大柄な選手が多いポジション。


 C……ゴール下で体を張る、大柄な選手が多いポジション。

-------------------------------------------------------------------------


 勇士も挨拶を返す。


「それにしても向こう、宮部いるぜ」


「宮部君はすごい選手ですよね」


「俺がマッチアップとか絶望すぎ、\(^o^)/オワタwww」


 やはりチームメイトも、Bチームの亮を注目せざる負えない。それほどまでに亮

は強力な選手だ。


「まぁ、こっちにも笠原君がいるし、なんとかなるだろ!」


「いやぁ、さすがに宮部君と比べられるとちょっと……」


 佐藤が亮の比較対象に勇士の名前を挙げるが、流石に全国選手と比べられるのは

荷が重く、困惑する勇士。


 Aチームの監督は1軍監督の猪本監督が務め、Bチームは2軍監督の有吉監督が

務める。

 猪本監督がAチームのメンバーを集め話を始める。


「これは君たちの実力を見極めるためのものなので、私から指示はそんなに与える

つもりはない、自分たちで考え動いてくれ」


「はい!」


 猪本監督の言葉に元気よく返事をして、Aチームのメンバーは、ゲームプランを

話し合う。


 Aチームのゲームプランは、オフェンスは勇士の3ポイントを中心として、ディ

フェンスは、亮がローポストでボールを持ったらダブルチームで止めることも視野

に入れていくことに決めた。


 両チームアップが終わり、いよいよ試合が始まる。


 お互い整列して、きちんと礼をしてからジャンプボールのポジションにつく。


 Aチームは山根、Bチームは亮がジャンパーの位置に着く。その他の選手は二人

の周りにポジションをとり、試合開始ティップオフの瞬間を待つ。


 ジャンパーの間から審判がボールを構え、空中にボールを軽く投げ試合開始ティップオフ


 Aチーム

 PG 田中洋二

 SG 笠原勇士

 SF 下野正晴

 PF 佐藤元蔵

 C  山根明由


 Bチーム

 PG 早坂奏

 SG 木村利男

 SF 上田信樹

 PF 飯島千

 C  宮部亮


 ジャンプボールに先に触れたのは亮。


 そして、はじかれたボールはBチームの木村がキャッチする。


 木村はキャッチしたボールをすぐにPGの早坂奏はやさかそうにパスを出す。


 早坂奏、無名の選手だが、先ほどまでのテストではかなりのスキルの高さを見せ

ていた選手だ。


 そんな奏がボールコントロールして最初に使ってくる選手は……やはり亮だ。


 亮は、※ローポストに※ポストアップして早坂のパスを受け取った。背を向けた

ままドリブルで、ガンガンと山根を押し込んで行く。


 何とか山根も耐えようとするが、フィジカルの強い亮に徐々に押し込まれていく


 それを見た下野が※ダブルチームに向かおうとするが、先に宮部が※ターンアラ

ウンドシュートを放ち、簡単に初得点を上げる。


----------------------------------------------------------------------------


 ローポスト……ゴールに近いエリア。


 ポストアップ……ゴールに背を向けてボールを受け取ろうとすること。


 ダブルチーム……一人の選手に二人ディフェンスすること。


 ターンアラウンド……背を向いた状態から、振り返ってシュートを打つこと。


-----------------------------------------------------------------------------


「あんなの止められるわけないしw」


 力の差に山根は思わず愚痴をこぼす。


 PGの田中がボールを運び、ドリブルでボールコントロールをする。


 どう攻めるか考えていた田中にマークマンの奏が、急にプレッシャーをかけるデ

ィフェンスをして、いきなりプレッシャーかけられた田中は、一歩後退りしてしま

い、怯んだ隙に奏がボールを※スティールする。


 そのままボールをドリブルで運んでいく奏を何とか追いかける田中だが、ゴール

手前で走りこんできた同じチームの木村に見事なパスを出し、木村はそのまま※レ

イアップシュートを決める。


--------------------------------------------------------------------------


 スティール……相手のパスやドリブルを奪うこと。


 レイアップシュート……走りながらリングの近くで、下手で打つシュート。


---------------------------------------------------------------------------


「ナイラン!」


「ナイパス!」


 奏と木村は、お互いを称えあい軽くタッチをしてディフェンスに戻る。


 田中は悔しそうな表情を浮かべるが、気を取り直しボールを運ぶ。


 今度は警戒しながらボールキープする田中は、右※ウィングに居る下野にパスを

出す。


 左側ローポストに居た佐藤が、同じく左側フリースローライン付近にいる勇士の

マークマンに※スクリーンをかける。


 その瞬間、下野はトップにいる田中にボール戻し、田中もスリーポイントライン

でフリーになった勇士に素早くパスを出し、パスを受けとった勇士が得意の3ポイ

ントシュートを放つ。


 勇士のシュートは、美しいアーチを描き、リングに触れることなく吸い込まれて

いった。


-------------------------------------------------------------------------------


 ウィング……3ポイントラインの、両斜め45℃付近のエリア。


 スクリーン……オフェンスで、味方のマークマン付近で壁となって立ち、

ディフェンスを妨害すること


--------------------------------------------------------------------------------


「よしっ!」


 最初のシュートが綺麗に決まった勇士は、自然と拳を強く握りしめ喜びを噛みし

めた。


 奏からさっきと同じシチュエーションで亮にボールが渡る。


 だが、今度は宮部がボールを持った時点で下野がダブルチームに向かう。


 しかし、下野がダブルチームに来たのを見るや否や、下野の本来のマークマンだ

った上田に亮がパスを出す。


 上田はフリーで3ポイントシュートを放つも、シュートは外れリバウンドを佐藤

がキャッチする。


 亮にダブルチームをして止めるのはいいが、そうすると一人、フリーの選手を作

ってしまうため、パスを捌くのは不得意ではない亮に対処されてしまう。


 シュートを外してくれたので、素早くオフェンスに向かうAチーム。


 下野が右ウィングでボールを持ち1対1を仕掛け、右から大きく左へと※クロス

オーバーをして、マークマンの上田を抜き去って行きレイアップシュートを放つ。


 だが、それに反応した宮部が大きくジャンプし、強烈な※ブロックショットをお

見舞いした。


--------------------------------------------------------------------------


クロスオーバー……ボールを左右に切り替えるドリブル。


ブロックショット……ディフェンスで相手のシュートを、手で弾き返すこと。


---------------------------------------------------------------------------


 こぼれたボールを奏が拾いゴールに向かってドリブルで走り出す。


 奏を先回りした田中が立ちふさがり、一旦冷静にボールコントロールをする。


 1対1の状況なので、無理にでもシュートに行ってもよかったのだが、奏はオフ

ェンスを組み立てることを選択した。


 奏がボールコントロールしていると、両チームの選手がBチームのコートにポジ

ションをとる。


 すると、奏が早いドリブルで自分のマークマンを揺さぶり抜き去っていく。

 奏の前に山根が立ちふさがるが、奏がボールを山根の頭上を高く越えて放る。


 そのボールに反応し、亮が空中でボールをキャッチすると、そのままゴールリン

グに強烈な※ボースハンドダンクを叩き込んだ。


「うぉおおおおおおおお!!!」


 ド派手な※アリウープに周りも思わず歓声を上げ、アリウープを決めらたAチー

ムも、呆然と眺めてしまう。


--------------------------------------------------------------------------


ボースハンドダンク……両手のダンクシュート


アリウープ……空中でパスを受け取り、そのまま空中でシュートを決めること。


---------------------------------------------------------------------------


「オフェンスだ! 早くボールを出せ!」


 呆然と立ち尽くしていたAチームに、猪本監督が大きな声で指示を出す。


 指示は出さないと言ったが、Aチームが相手のシュートに見とれてしまっている

姿を見て、思わず怒号のような声で指示してしまった。


 それを聞いた佐藤が素早くエンドラインから田中にボールを出す。


 それからのBチームは、※ペイントエリアを亮が完全に支配し、ダブルチームで

守りに行っても、フリーになった選手にパスを出すといったパターンが多かったが

、亮以外のシュート率はあまり高くなく、Bチームの方が押しているにも拘らず点

差を開けることはできなかった。


 一方、Aチームは、亮の強烈なブロックが脳裏に焼き付いて、なかなかドライブ

で切り込んでいったり、両のようにポストプレイなど、インサイドで得点すること

が難しかった。


 だが、Bチームと違いアウトサイドシュートの得意な勇士が居るため、勇士の3

ポイントシュートと※ミドルレンジのシュートでなんとか食らいついていった。


-------------------------------------------------------------------------


ペイントエリア……ゴール下からフリースローライン付近までのエリア。


ミドルレンジ……ペイントエリアから3ポイントラインの間のエリア。


--------------------------------------------------------------------------


 前半残り19秒、Aチームのオフェンス。

 ※トップで田中がボールコントロールしている。すると、勇士が手を上げ、ボー

ルを要求する。


 田中はすぐに勇士にパスを出し、パスを受けた勇士はマークマンの木村と向かい

合う。※ジャブステップで木村を右へ左へ揺さぶり、そこから急にシュートモーシ

ョンに入る。


 それに反応した木村は低く落とした腰を一瞬上げるが、それは勇士のシュートフ

ェイクで、勇士はそこから右へとドライブで木村を置き去りにして、ゴールにアタ

ックしていく。


 当然、ペイントエリア内に侵入すると亮が待ち構えるが、構わず亮の手前で勇士

は、再びシュートモーションに入る。


 亮も反応し、シュートブロックするため大きくジャンプするが、またもやシュー

トフェイクだった。


 ジャンプしてしまった亮の動きは止まらず、勇士はフェイクの後再びシュートに

向かい亮にぶつかりながらシュートを放つ。


 ファウルの笛が鳴り、勇士の放ったシュートはバックボードにぶつかりそのまま

ゴールネットを潜り抜けた。


「おぉ、※3ポイントプレーだ!」


「んーーーー」


 見事な技ありプレーに周りの者たちは歓声を上げ、そのプレーを許してしまった

亮は、不満げな表情を浮かべる。


--------------------------------------------------------------------------


 トップ……3ポイントラインの外の真ん中付近。


 ジャブステップ……ボールを持っているときに、小さくステップして相手を揺さ

ぶるステップ。


 3ポイントプレー……シュートモーションにファウルを貰うと、フリースローを

打つことができ、ファウル中に打ったシュートが外れれば、2本のフリースロー、

入れば、得点プラス、フリースロー1本を貰える。3ポイントプレーは、2点プラ

スフリースロー1本のこと。


---------------------------------------------------------------------------


「気にしないで、今のは仕方ないよ」


 奏がすかさず亮のフォローをする。


「やったな、笠原!」


「上手すぎるぜ!」


「上手くいってよかったよ!」


 興奮気味のチームメイトに勇士も笑顔で返す。


 そして、フリースロー1本をもらった勇士は難なくフリースローを沈めた。


 残り8秒、Aチームはこれで21点目だ。


 フリースロー後、急いでボールを運び、飯島がミドルジャンパーを外し前半終了

となった。


 前半終了時、23-21の2点差でBチームが僅かにリードしている。


 両チームの選手はベンチで前半の反省をしながら後半のゲームプランについて話

し合う。すると、Aチームの猪本監督が口を開いた。


「3ポイントで何とか接戦にできているが、相手の方が簡単に点数を取れていて、

相手の方が有利な状況だ。だが、このまま点差を離されず、※クラッチタイムで笠

原の3ポイントなどで逆転できれば逃げきれるかもしれん」

 

 猪本監督の言葉を聞いた勇士が俯きながら小さく呟く。


-------------------------------------------------------------------------


 クラッチタイム……残り時間、大体5分を切って、点差がほとんどないような時

間帯。


-------------------------------------------------------------------------


「クラッチタイムか……」


 そう呟いたと同時に休憩終了時間のブザーが鳴る。


 後半戦へと向かうため、両選手がコート上に戻り、猪本監督は何か意味ありげな

表情で、コートに向かう勇士の後姿を見つめる。


 そして、いよいよ後半戦のスタートだ。




 10数分後、後半終了のブザーが鳴る。


 結果、31対45でBチームの勝利だ。


 前半接戦だったにも関わらずここまで点差が開いた一番の原因は、勇士のシュー

トが全く入らなくなったことが大きい。


 後半、勇士の3ポイントシュートは6本中最初の1本のみだった。


 勇士頼みのだったAチームは、勇士以外では中々点が取れず、勇士の調子が悪い

とかなり厳しい状況だった。


 さらに、Bチームは亮と奏の見事なコンビネーション止めることができずディフ

ェンスでも苦戦していて、亮はこの試合、一人で23点の得点を決めていた。


「ごめんなさい。笠原君」


「俺らが点数取れないばっかりに……」


 チームメイトが勇士の状態を察して声をかけてくる。


「いや、俺のシュートが全然入らなかったから……」


 そう言って、勇士は無理やり笑顔を作ろうとするが、明らかに引きつった笑顔しか

作れなかった。

 それを見たチームメイトは、かける言葉も見つからなかった。




 他のチームの試合も終わり、いよいよ結果が発表される。結果はそれぞれの監督

によって発表される。

 一番最初に1軍に入るメンバーを猪本監督が発表する。


「では、1軍入りするメンバーを発表する」


 体育館は静寂に包まれ、一年生の間に緊張が走る。


「まずは宮部!」


「はーい」


 当然のように亮の名前が呼ばれ、この緊張感の中気の抜けるような返事をする。


「続いて早坂!」


「はい!」


 続いて呼ばれたのは、BチームのPG奏だ。

 無名校出身ながら見事なゲームメイクと、華麗なアシストでチームの勝利を演出

した早坂が呼ばれるのも当然だろう。


「そして、最後」


 最後という言葉にさらに空気が張り詰める。

 勇士の心臓の鼓動も少し早くなる。


「最後の一人は……笠原!」


「は、はい!」


 自分の名前が呼ばれたことに一瞬びっくりした勇士の返事が少し遅れる。


 最終テストまでの結果には満足していたが、最終テスト後半の出来があまりにも

悪かったので、1軍は無理なのではないのかと内心思っていた勇士だが、見事1軍

入り出来て肩の荷がふっと降りた。


「では、次に有吉監督から2軍メンバーを発表してもらう。」


 それから、2軍、3軍の順番でメンバーが発表されていった。


 そして、全員の振り分けが終わり最後に猪本監督の話が始まる。


「お疲れ様、現時点で2軍、3軍に振り分けられた者も、努力次第で1軍に上がることは

当然可能だ、全力で努力してくれ。だが逆に1軍、2軍から下に下がることも、もちろん

あるので、1軍に選ばれた者も努力を怠るな。」


「はい!」


 猪本監督の激励に気合の入った返事をする一年生たち。


 最初から1軍に選ばれたからといって、必ず活躍できるわけではない。1軍に選

ばれたからこそ、さらに努力をしないといけないと思う勇士だった。


「それでは今日は解散、明日からはそれぞれの場所で頑張れ!」


「お疲れさまでした!」


 監督の話が終わり、1年生たちはそれぞれ帰宅していく。

 勇士も明日からの練習に備えすぐさま帰宅していった。




「ふーん、面白いプレイヤーがいますねー」


 遠くの陰から密かに見ていたシャーリーが、意味深な表情で一人呟く。

 登場人物


 宮部亮

 学年1年生 ポジションC 身長195㎝ 体重96㎏

 性格は、マイペースで、バスケと食べること以外あまり興味がない。

 中学時代は全国大会にも出場したことのある選手で、ゴール下での力強いプレー

 が持ち味。

 好きな食べ物は米。


 早坂奏

 学年1年生 ポジションPG 身長175㎝ 体重65㎏

 性格は、誰にでも優しく、正義感が強い。

 無名の選手ながら、高いパスセンスとゲームメイク力を持っている。

 爽やかな容姿と性格から、女子にモテることが多いが、女の子は苦手。

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