表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

第10話 インターハイ予選


 5月26日、日曜日、今日からインターハイ予選が始まるため宝星バスケ部は、

会場の体育館へやって来た。


「デカい体育館だなー」


 会場となる体育館を見上げて攻が声を上げる。


 この会場は毎年、東京都インターハイ予選の会場の一つで、東京予選はAからD

ブロックまであり、各ブロックの優勝校で総当たり戦を行い、勝利数の多い高校が

インターハイへと進んでいく。


 宝星高校はBブロックに振り分けられている。


「早く会場に入ってアップを始めるぞ」


 宝星の試合は、一試合目からなので、キャプテンの弓弦が部員たちを会場へ誘導

する。




 試合が行われるコートに到着した宝星バスケ部は、早速アップに取り掛かる。

 

 宝星の選手たちは、白に青のラインが入ったユニフォームを着ていて、勇士は背

番号11番のユニフォームを着ている。


 いつも通りに淡々とアップをしていく部員たち。勇士も久しぶりの公式戦に緊張

感とワクワク感が入り混じった感情が渦巻いている。


 アップを終えた勇士が、ベンチで靴紐を結び直し準備をしていると、葵が話しか

けてきた。


「どう、緊張してる?」


「まぁまぁ」


「レギュラーなんだから頑張ってよ!」


 そう言って葵は勇士の背中をポンと叩く。


「わかってるよ!」


「ユーシなら大丈夫です!」


「ジェニファー……」


(二人とも俺の緊張を察して励ましてくれてるのかな……)


 二人の言葉に心が暖かくなった勇士は、自然と緊張が解けていった。


「集合!」


「はい!」


 キャプテンの合図で部員が監督の周りに集まる。


「一回戦の相手は、墨川すみかわ高校だ。いつも通りにやれば必ず勝てる相手だ。だが、油

断せず全力を出して勝て!」


「はい!」


 猪本監督の檄が飛び、部員全員に気合が入る。


 そして、試合開始のタイマーが鳴り響き、いよいよ宝星バスケ部のインターハイ

予選が始まる。


 礼に始まり、いつも通り泰山がジャンパーポジションに立ち、周りにその他の選

手が位置に着く。


 相手チームもCポジションのプレイヤーがジャンパーの位置に着き、審判がジャ

ンパーの間でボールを高く上げ試合開始ティップオフ


 ボールに触れたのは、高さで勝る泰山。弾かれたボールを勇士がキャッチすると

直ぐに司令塔の弓弦へパスを出す。


 パスを受け、最初に弓弦がボールを託したのは、エースの攻だ。

 最初の攻撃を任された攻は、ドリブルを突き始める。


 攻のマークマンは、集中して攻を守ろうとするが、特にフェイントもないトップ

スピードのドリブルで簡単に抜き去って行く。


 攻がそのままゴールリングにアタックして行くと、相手のCプレイヤーがヘルプ

に入り攻の前に立ちふさがる。


 構わずレイアップシュートを打とうとする攻に相手Cはブロックしようと飛ぶが

、攻が空中でシュートに行こうとした手を一回下げ、タイミングをずらす※ダブル

クラッチを放ち決める。


--------------------------------------------------------------------------


ダブルクラッチ……空中で一度、フェイントを入れて打つシュート。


--------------------------------------------------------------------------


「最高!」


 シュートを決めた攻が、いつもの口癖を叫び喜びを表現する。

 攻の見事なシュートに宝星サイドは、大いに盛り上がる。


 負けじと墨川も点を取りにいこうとするも、宝星の堅牢なディフェンスに中々シ

ュートを打つ隙がない。


 なんとか墨川のCプレイヤーがポストアップし、ボールを受けてからドリブルで

押し込もうとするが、泰山は全く動じない。


 ※ショットクロックが僅かとなり、無理にターンアラウンドシュートを放ってき

た相手Cに、泰山は容赦なくブロックでボールを弾き飛ばす。


-------------------------------------------------------------------------


ショットクロック……オフェンスは24秒以内にシュートしないといけない。


-------------------------------------------------------------------------


 弾き飛ばされたボールを弓弦が拾い、ドリブルで相手コートに速攻を仕掛ける。


 弓弦が相手コートのフリースローライン付近まで進んだ時に、ようやく相手SF

プレイヤーが弓弦の前へ入り、シュートを阻止しようとする。


 しかし、弓弦は、後ろから一緒に走りこんできた勇士にパスを投げる。

 3ポイントラインでボールを受け取った勇士は、完全フリーでシュートを放つ。


 勇士がフリーで打つシュートは、クラッチの時を除きほとんど外すことはなく、

綺麗な放物線を描きリングに吸い込まれる。


「ナイスシュートだ!」


「ナイスパスです!」


 いいプレーができた勇士と弓弦が軽く拳でグータッチをする。


 それから宝星は、最初の勢いのまま墨川を圧倒していく。

 第2クォーター終了時には、56-28のダブルスコアで宝星がリードしている。


「俺たち、やっぱつえーよな!」


「当然だろうよ!」


 ハーフタイム、ベンチで攻と泰山が肩を組んで、自分たちの実力に酔いしれてい

る。


「まだ、一回戦なんだから調子に乗るなよ」


「そんな堅いこと言うなよ、たけちゃ~ん」


 注意を促す武人に攻が手をヒラヒラさせ軽く流す。


「油断はするなよ、だが、点差があるから後半からは控え選手中心でいくぞ」


「はい!」


 前半で力の差がはっきりとしたので猪本監督は、後半から控えの選手を試してい

くようだ。


 ハーフタイムが終了し、第3クォーターの始めから宝星は、控え選手が登場した。

 宝星の控え選手のオフェンスは、亮のポストプレーと武人のドライブを中心でオ

フェンスを組み立てていった。


 控えでも墨川の選手とはレベルの差が大きくあるため、さらに点差を広げていく


 結局、終始宝星が墨川を圧倒し、103-59で宝星が楽々と一回戦を突破した


「よっしゃー! 楽勝!」


「この調子で勝ち進んで行こうぜ!」


 久しぶりの公式戦での勝利に攻と泰山が歓喜の声を上げる。


「先輩たち元気だなー」


「だねー」


 錬水と亮が、喜び回る二人の先輩を呆れた表情で見つめる。


「はしゃぎすぎて怪我すんなよ」


「次の試合がすぐ始まる、早くコートから離れるぞ」


 弓弦と武人も冷静に、はじゃぐ二人に声をかけてコートを去っていく。


「何だよ、ノリわりぃな」


「俺たちがバカみたいじゃないか」


 冷めた対応に二人も冷めてしまい素早くコートを去る。


 宝星バスケ部は、会場の外に集まり猪本監督の話に耳を傾けていた。


「お疲れ、今日の相手とは実力差もあり簡単に勝てることができた、来週の日曜も

恐らく、うちとは実力差がある高校と対戦することになるだろうが、それまでしっ

かりと練習に取り組んで準備をしておけ」


「はい!」


「それじゃ、今日は解散!」


「お疲れさまでした!」


 猪本監督の話が終わり、部員たちがぞれぞれ帰宅していく。


「お疲れ、勇士、今日は結構活躍できたね!」


「素晴らしいシュートでシタ!」


「うん、シュートタッチがいい感じだったな」


 みんなが帰る中、葵とジェニファーが勇士に今日の活躍ぶりを褒め称えてきて、

勇士も今日の活躍に満足気の表情を浮かべていた。


 今日の勇士は、控え選手中心の後半で、レギュラーながらまだ、1年生というこ

ともあり、他のレギュラーより多いプレータイムだった。その中で攻の25点、亮

の21点に次ぐ17得点を上げる活躍だった。


「お疲れ、本当に今日も綺麗にシュートが決まってたね!」


「奏もアシストを量産してたよな!」


 13ものアシストを記録した奏を称賛する勇士だったが、いくつか自分でシュー

トを打てる場面で打たなかったことに違和感を覚えていたことは触れずにいた。


「みんな早く帰ろうよー」


「リョーもすごいパワープレイでした!」


「ありがとー」


 チームで2番目の得点数を記録した亮がやってきて、ジェニファーが亮も褒め称

えた。


「そうだな、もう帰ろうか」


 一年生五人組は、今日の試合の話をしながら自分たちの家へ帰っていった。




 一回戦から一週間後の日曜日、今日は二回戦の試合が行われる。


 二回戦の相手の協和高校も、良くて三回戦止まりほどの実力の高校で、宝星との

実力差は歴然だ。


 そして、一回戦同様、92-60で宝星が圧倒して二回戦も楽々突破した。


「完全勝利!」


「完全勝利!」


「完全勝利デス!」


 一回戦の勝利に、はしゃいでいた二人にジェニファーが加わり、勝利後に三人で

同じガッツポーズで喜びを表現する。


「はいはい、それはいいから帰る準備しろよな」


 一回戦の時と同じく武人が、三人に冷めた対応をしてコートを去っていく。


「んだよ、せっかく仲間が増えたのに……」


「つまんない野郎たちだぜ……」


「つまんないデス……」


 相変わらず冷たい仲間たちにガックリと肩を落とし、三人もコートを後にする。


 一回戦と同じ流れで解散となり、宝星バスケ部員たちは自分たちの家に帰宅して

いく。


 来週の三回戦は、東京都で五本の指に入る強豪校、白鳥学園高校との試合が決定

した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ