第九話 さっさと寝ろ
「…? それは、どういう意味だ?」
神の加護無くして亜人になることなどない。
加護が無いのであれば人間になるが、凪はどう見たって亜人だ。
あと、考えられるとすれば与えられた加護が風以外であるか、か?
「…風魔法と言われたらどの距離での使用を想定する?」
「中~遠距離だ。」
「そう。そして、あたしはその使用が出来ないの。」
含みのある言い方だ。
「それなら、近距離は…」
「基礎中の基礎、『空気』も使えないの。ダメな奴よね…あたし。」
なにやら自分の世界に入ってしまっている。
言葉にすることでネガティブな記憶まで思い出しただろうか。
こちらの言葉が右から左にすり抜けて行っている様だ。
ちなみに、「空気」は周囲に働きかけて酸素を確保する魔法だ。
酸素が薄い高山では重宝するし、色々応用もきく。
凪が言う様に、俺にもできる基礎中の基礎ではある。
「そんなだから集団連携に必要な『遠吠え』も出来なくて。
チームでの狩りにも参加出来ないのよ。
まさしく<一匹狼>って奴ね。 ふふふ…。」
なるほど。それで「厄介者」か。
「遠吠え」か。ニュアンスから
狼人特有の意思伝達を行う魔法なのだろう。
肉親も無く、コミュニケーションの術にも欠けるとなれば
周りから白い目で見られていたであろうことは想像に難くない。
…どうでもいいが、さっきから凪の目の焦点が合っていない。
というか、なんか黒いオーラが…。シンプルに怖い。
なんとか戻ってきてもらわねば。
「あ~、その、なんだ…今日はここまでにしよう。な?
疲れただろ?泊まってけよ。」
………。
しばらく沈黙の時が流れる。
「…お泊り? やったぁ~!久方ぶりのふかふかベッド!
あ~でも…やり直しを要求します!」
「何を?」
ようやく俺の言葉が飲み込めて調子が戻ったと思ったら
勢いよく手を挙げて抗議された。
「そこはもっと『俺が慰めてやるよ。今夜は寝かさないぜ。』
みたいな感じで!」
「…よし、分かった。」
「え?」
俺は凪との距離を詰める。
「笑えない下ネタトークをするほど疲れている様だ。
ベッドはお前が使っていいから…さっさと寝ろ。いいな?
俺は床で寝る。」
「えぇ…。期待したのに。
まあ、いいわ!それはまた今度にして…。
ねえ。どう見ても一人で使うサイズじゃないわよ?
同じベッドで寝るくらい…」
「…少しは警戒してくれ。」
それを聞いて凪がキョトンとしたあと
ニヤニヤし始める。
「…その顔はなんだ。」
「え~? べっつにぃ~?なんでもないよぉ~?
ただ…君があたしに『男として見て欲しい』と思ってるんだなぁ~って♪
そうだよねぇ、魅了されちゃうよねぇ♪」
「俺がしているのは道徳的配慮だ。他意は無い!」
「うん、うん、分かったよ~。」
全く分かっている気がしないが言うだけ無駄なようだ。
「…俺はもう寝る。お休み。」
「うん、お休み~。
…明日、朝ご飯獲るとき、私の魔法見せてあげるね。」
…え?
とっさに顔を上げるが、当の凪は眠ってしまっていた。
キャラ達が駄弁ってるのを想像することが楽しくて
全然話を進められない…w
もうちょっとテンポよくした方が良いですかね~
でも、こういう雰囲気でやりたいんです。
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