第八話 案外顔に出るよね
体調崩してまして…。
~ フライハイト side ~
思わぬ仕返しをされた…。穴があったら入りたい…。
しかし、凪は少し元気になったようだ。
良かった、ということにしようか…。
ふと時計を見ると…八時半。
「しまった…いつの間にこんな時間に…!?
話を聞くとは言ったが、凪を村に帰さなければ…!
しかし、『こんな時間まで何をしていたのか』と
聞かれた時のためにうまい話を考えないと凪に迷惑が…!」
あぁ、考えがまとまらない!
「ストップ、スト~ップ!
ふふ。あたし的には、慌てる君も見ていたいけど
まぁ、落ち着いて?」
と、凪に宥められる。
「あたしね、普段から一人で居ることが多いの。
村の人達も、あたしが居なくてもきっと気にしないよ。
そもそも…あたしが話す気満々なの、見て分かりなさい?
それを、帰そうとするんじゃないわよ。まったく。」
口調は不機嫌だが、しっぽを見る限りでは大丈夫そうだ。
「…そんなに分かりやすいのかしら。
なにか不愉快だからしっぽで判断するのはやめて欲しいんだけど。」
「持ち帰って検討しよう。」
「腹が立つわね…」
「…でもまあ、下手に愛想よくされるよりよっぽど楽ね。」
凪はそれで諦めてくれたようだ。
その辺にあったクッションをみつけてきて座る。
「あたしね、君と同じで父も母も居ないの。」
前置きもなく始まって驚いた。
いや…自分だってどう話せばいいかなんて分からないが。
「母はあたしを産んだ後すぐに亡くなってしまったらしいわ。
父と並んで撮った、あたし達位の歳の写真でしか見たことがない。
『綺麗な人だな。』とは思ったけど、それだけよ。母親としては
見れなかったわ。」
自分と同年代の時の写真ではそれも仕方ないだろう。
「お父さんは?」
「父は私が六歳の頃に魔物を狩りに行って。珍しくもないでしょ。
あたしの村では本当の親子じゃない家庭もちらほらあるわ。
そもそも村の決まり事として成人までは保障されてるし。」
当然、亜人も魔物にやられることがある。
コミュニティを維持するために必要な措置だ。
「じゃあ、凪にも家が?」
「今年の春には成人しちゃってね。
それから数か月は一人暮らし。」
「成人したら追い出されるシステムか…」
俺の父や祖母のような方針を採用している
亜人のコミュニティがあったとは…。
実は標準だったのだろうか…恐ろしい世界だ。
「あたしの場合は…厄介払い、かな。たぶん。
普通はその家にそのままのパターンが多いんだけどね。」
…!! 厄介払いとはどういうことだろうか。
これまでの話で凪が「厄介」になるようなものは
見当たらないのだが…。どう聞けば
傷つけずに話を聞けるだろうか。慎重に行かねば…。
「…君も,案外顔に出るよね。
心配してくれるんだ?やっさしい♪」
顔から火が出そうだった。
「~~!! やめろお!俺をおちょくるのが楽しいか!?」
聴く態勢を中断して凪に詰め寄る。
「ごえん!ごえんってあ!
あやあるから、ほっえつえるのやえてぇ~!
あたしあ追いあされたのはおとんどかえあおーあつあえなうて…」
うん? 今なんて?
「ごめん。続けて?」
「あたしが! 追い出されたのは! ほとんど風魔法が使えなくてなの!」
冒頭に既視感。
両親像の対比をしてみたくて。
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