第七話 今のは本音だね
~ 凪 side ~
「そっか…風魔法も…入ってるんだ…。」
言われてみれば、空間に干渉するのは風魔法の十八番。
それを使わない手は無い。いや、でも…。
「君は人間って言ったよね?じゃあ、君のお母さんも…」
「父さんは人間だけど、母さんは人間じゃないんだなぁ、これが。
信じられない話だろうけど、俺の母さんは実は…エルフなんだ。」
彼、フライハイトがドヤ顔をキメてくる。
彼の話ではその母親も旅をしていたという。
あたし達の森には居ないが、エルフは風の加護を受けた亜人として有名だ。
旅をする亜人など、聞いたことも無かった。
でも、あたしにはそれに対するリアクションを取る余裕は無かった。
そんなことは重要では無かった。
人間に出来るレベルの風魔法なら そう、思ったのに…。
「…やっぱり、そんなものよね。」
「うん? それはどういう…?」
ほんの、小さな呟きだったのに…聞こえてしまったらしい。
「なんでもないわ。お邪魔したわね。
今日はありがとう。楽しかったわ。」
お礼を言って、彼の横を通り過ぎようとする。と…
「待った。」
彼が少しずれて、険しい顔で道を遮った。
◇
「何?お土産ならいらないわよ?」
精一杯、明るい声で答える。
「その笑顔もやめてくれ。何が かまでは分からないが、
さっき、俺は君を傷つけたんだろ?」
「そんなことないわ。」
やめてほしいのはこっちだ。これ以上は装えない。
「今日会ったばかりの俺にすら分かる、簡単なことさ。」
その言い様が無性に癇に障った。
「……あんたなんかに! あんたなんかに何が分かるっていうのよ!!」
「そんなにしっぽが萎れてるのを見逃すほど、俺の眼は節穴じゃねんだよ!!」
しっぽ?しっぽがなんだというのだろうか?
あたしのしっぽは、萎れるどころか逆立っている。
「今のは本音だね。言葉と感情が一致してる。
君を傷つける意図は無かった。だから理由を聞いた上で、謝罪させて欲しい。」
と、彼は表情を和らげた。
◇ ◇
あたしは、それで毒気を抜かれてしまった。
でも、負けたままは釈然としないなぁ…。
そうだ。少しお返ししよう。
「分かったわ。初対面で『綺麗だぁ~』なんて
あたしに見とれてしまった君に教えてあげる。」
聞かれていたとは思っていなかったのだろう。
彼は耳を真っ赤にしていた。かわいいなあ。
「長くなるから覚悟してよね!」
さっきまでとは打って変わって、あたしの心は軽くなっていた。
大変見苦しいものを書いてしまったかもしれませんが
ある意味、作品タイトルよりもこういう「悩み」をテーマに
したくて書き始めたものでもあります。
※鬱成分はあっても、ストーリーとしての鬱展開は書くつもりはありません。
キャラ達が楽しくしてるところを想像したいのです。
評価・コメントして頂けると大変嬉しいです。