第六話 キャンプじゃなくてごめんね?
凪をウチに案内した。
「キャンプじゃなくてごめんね?」
「もっととんでもないものを見せられてるんですけど…?」
凪はこちらに答えるものの、眼は周囲に向けられている。
見るもの全てが信じられないという感じだ。口が半開きになっている。
招待した甲斐があるというものだ。
「ここは入り口も入り口。リビングなんだけど?
これくらいで驚くなよ。」
「鞄を開けた先にリビングがあって驚かない訳ないでしょ…。」
既に若干疲れた顔をされたが、お楽しみはこれからだ。
「あ~あ、これは錬金術の秘訣を見せるのは
また今度ってことかなぁ~。残念だなあ~。」
すかさず凪のしっぽが ピンッ と立つ。
「行く!」
◇
「ねえ、一つ言っていい?」
「どうぞ。」
「ここを作った人は頭おかしいよ。」
「うん。母さんに謝れ。」
まったく、なんてことを言うんだ。
…気持ちは分かるが。
「お母さん…そっか。そういえばお父さんもどうのって…。
でも、今一人旅してるってことは…そういうことよね。」
なにやら独り言を言っているがよく聞こえない。
「本は嫌いか?」
「え!?…あぁ、いや、まぁ確かに。
机にかじりついて教科書読むのは苦痛。外で体動かす方が私は好きね。」
「安心しろ。ここに机はない。のびのび出来るよ。」
「アッハハ!お行儀悪いわね。」
「元々、母さんが『旅はしたいけど、本は置いて行きたくないです。
それに、道中見つけた本も集めたい、ダラダラしたい!』って作ったらしい。」
「あっはは…行儀悪いわね…。」
凪は書斎をぐるっと見渡す。
「でも、こんなことが出来るなんて、錬金術ってすごいわね!」
「錬金術だけじゃないけどね。母さんお得意の風魔法も入ってる。」
それを聞いた凪の顔が一瞬にして曇った。
「そっか…風魔法も…入ってるんだ…。」
悲し気な声が響く…。
主に、凪の心臓がドキドキする回でした。
終わり方がちょっと暗いですが、この回、割と好きです。
読んでる方にはどういうのが刺さるか分かりませんが、
評価・コメントして頂けると大変嬉しいです。