第五話 知り合えたのも何かの縁
「うん? どうしたの?」
「あ、いや! 何でもない!」
今のは聞かれずに済んだらしい。
向こうは小首をかしげている。
「ねえ、それより! 錬金術見せてよ!
この森だと風魔法しかまともに見ないもの。興味あるわ!」
言葉通り、興味津々の眼を向けてくる。ふわふわの耳やしっぽも
「ピクッピクッ」 「ブンブンッ」と反応を示している。
…かわいい。 自身の気持ちに忠実な性格なのだろう。
「いいけど、この陣は対象の構成要素を解析するためのもので
面白くも何ともないよ?」
「面白いかどうかは人それぞれよ!」
ふむ、そういうものか。
「解析」した結果、この木は酸味のある実を実らせていることが分かった。
あぁ、面白いかは分からないが、少し遊んでみよう。
「さて、いくつか実を取ってきた。一番熟したのはど~れだ?」
「う~ん、これ! …あっ!ダメだ、酸っっぱい!」
顔をくしゃくしゃにして酸味に耐える様子を見ると
思わず頬が緩んでしまう。
「残念。正解はこれ。
うん、ちょうどいい酸味でうまいな。」
腹もすいていたのでいくらでも食べられた。
「演技じゃ…ないみたいね。何で分かったの?」
「『解析』して栄養の伝達状況を把握してたからね。」
「やっぱり便利ね。初見でそこまで分かるなんて。
村の、もっと大人なら分かったかもしれないけど。」
「お褒めに預かり光栄だ。そういえば自己紹介がまだだったね。
俺はフライハイト。一人で旅をしている。人間だ。」
「ご丁寧にどうも。あたしは風の加護を受けた狼人。
名前は…凪。」
やはり狼人か。
名前を言うのに抵抗があったようだが
さっき、ちょっと意地悪し過ぎただろうか。
「そうだ。村の大人ならと言ってたけど、この近くなのか?
俺はもっと奥だろうなと思って、ここら辺の木に手を出したが
大きなコミュニティが一つという訳ではなく、
小さなコミュニティが分散して在る感じだったか。すまない。」
「あぁ、いや…君、フライハイトの見立てで合ってるわ。大丈夫。
あたしが、その…そう! 遠くまで散歩しにきてただけだから。」
「そうか。俺の父さんから聞いていた亜人の行動範囲と
少し印象が違ったんで焦ったよ。」
まぁ、フライハイトには母という前例があり、
そこまでおかしいとは思わなかったので父に聞いてみると
父は、「母さんみたいな物好きはそうは居ねえよ。」と。
それから、
……「そういう奴に出会ったら大事にしろ。」とも言われたっけな…。
「それはそうと…君、今夜はどこで過ごす気?
キャンプ? キャンプかしら!?」
「あっはは…なんか期待されてるとこ悪いんだけど
実は『ウチ』があるんだよね…。」
「?」
うん。流石に何を言っているか分からないよね。
「知り合えたのも何かの縁だし、ちょっと見ていく?」
「…?? うん。」
それを聞いてフライハイトはアタッシュケースを開き…
◇
「な、なな……なんじゃこりゃあぁぁ~~!!??」
という、凪のリアクションに満足そうに頷くのだった。
様子見を兼ねて…とか、そもそも手違いで…とかあるかもですが
1件、ブックマークがついてるのを見て、
「あ、少なくともサイトを開いて下さってる方がいる!」
と、感動した人がここにいます(笑)